故安倍晋三元総理の安倍昭恵夫人の7月17日からの台湾訪問を前に、7月15日、山口県と台南市が「観光、物産、経済交流協定」を締結しました。
調印式には山口県の村岡嗣政(むらおか・つぐまさ)知事と台南市の黄偉哲市長が臨み、台南市議会の汪啓瑞秘書長や日本台湾交流協会高雄事務所の奥正史所長などが立ち会いました。
山口県には2013年10月4日に「日台友好促進山口県議会議員連盟」が県議47名のうち共産党(2名)を除く45名が参加する超党派の議連として設立され、台湾との交流をはじめていて、山口県を地盤とする岸信夫・衆議院議員が2020年1月13日に台南市を訪れて黄偉哲市長などと交流しましたが、このときに同行したのが日台友好促進山口県議会議員連盟のメンバーでした。
このとき議会提携の話が出て、その後も双方による協議が続けられ、翌2021年5月20日に山口県議会と台南市議会が「友好交流に関する覚書」を締結します。
オンラインで行われたこの覚書締結式には、村岡嗣政知事や台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が山口県庁にて立ち会い、一方、台南市側も黄偉哲市長などが立ち会っていました。
議会提携を機に昨年は台南市で山口県の伝統工芸品展が開かれるなど、双方の交流は深まり、今般の「観光、物産、経済交流協定」に至ったそうです。
ちなみに、今年は台湾との都市間提携が多く、7月6日に福井県おおい町と新北市淡水区の「友好交流都市覚書」に次ぐ、今回の山口県と台南市の「観光、物産、経済交流協定」ですでに11件となっています。
日台の都市間提携において年間に10件を超えたケースは、21件だった2017年と10件だった2018年の2回だけで、2018年は7月段階で8件でしたので、今年はそれを上回るペースで進んでいます。
これで、日台間の都市間提携は1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」締結以来、125件(本会調査)となります。
日台間の交流を振り返ってみますと、1972年9月の日華断交後の交流をになってきたのは民間でした。日本語世代と言われる台湾の人々が恩師を台湾に招いたり、同窓会を開くなど、いわゆる草の根交流でした。台湾少年工との交流などもその一つです。
しかし、日本語世代が高齢化を迎えた2011年に突如起こった東日本大震災をきっかけに、日台の学校交流、分けても高校生の修学旅行先では台湾が米国やオーストラリアを抜いてトップとなっています。高校から、直接、台湾の大学へ進学するケースも急増しています。
また、自治体同士による都市間提携も急増し、この10年で様変わりしています。
その象徴的なできごとが、2021年12月に全国の市町村長たちが台湾との交流の深化を求めて「日台共栄首長連盟」を設立したことではないかと思います。台湾との交流に限定したこのような自治体連盟の設立は戦後初のことで、現在、138自治体の首長が加盟しています。
設立2年目にして、岸田文雄総理に総理官邸で日台間の法的整備などを求め「要請書」を手交しています。
今後、日台の自治体による交流はさらに拡大していくと予想され、どのような裾野を広げてゆくのか、自治体による都市間提携や「日台共栄首長連盟」の動きからは目を離せないようです。
また、高校生たちの修学旅行による台湾体験や台湾の大学に進学した学生たちの台湾体験がどのように日台交流に結びついてゆくのかにも注目です。
◆台南市市政新聞:台南與日本前首相安倍晉三故郷山口縣締盟 開啓城市外交新篇章[7月15日]
台南市、山口県と覚書 観光、物産、経済などで交流促進へ
【中央通信社:2023年7月16日】
南部・台南市は15日、山口県と観光、物産、経済などでの交流、協力に関する覚書を締結した。山口県の村岡嗣政知事が台南市を訪問し、黄偉哲(こういてつ)市長と署名を交わした。
台南市と山口県の間では、2021年、台南市議会が山口県議会と友好交流に関する覚書を締結。昨年には台南市で山口県の伝統工芸品が展示されていた。村岡知事はこれらに言及した上で、台南と山口の協力深化に期待を示した。
黄市長は、山口県は台南市と盛んな産業が似ており、観光資源も豊富だとし、両自治体間で協力できる分野は多くあるはずだと語った。
山口県は昨年死去した安倍晋三元首相の故郷。黄市長は覚書締結には安倍氏の弟、岸信夫氏の尽力があったとして感謝した。
台南市では同日、安倍氏の姿を撮影した写真展が市内の美術館で始まり、黄市長や村岡知事らが開幕式典に出席した。