お二人で熱唱する蔡焜燦先生と蔡李明霞夫人(河崎真澄氏提供)

8月6日(火)午前、故蔡焜燦先生(台湾歌壇代表、元李登輝民主協会会長)令夫人の蔡李明霞さんが逝去されました。享年98。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

蔡焜燦先生ご存命のとき、私どもは国賓大飯店などでよくご馳走になりました。蔡先生はそのようなときに明霞夫人を伴い、「ふるさと」などの童謡から「紀元二千六百年」のような戦時歌謡のような歌まで歌っていただきました。明霞夫人は、記憶力では誰も寄せつけない感のあった蔡先生をしのぐ記憶力で、一番からの歌詞を間違えずに、しかもきれいなソプラノで歌っていただきました。

蔡先生が歌い出し、明霞夫人が邪魔をしないような感じで静かに唱和し、蔡先生が歌詞をうろ覚えの箇所を夫人がつなぎ、蔡先生が思い出して歌うという感じでした。美味しい料理もさることながら今も思い出深い、まさに夫唱婦随という光景でした。

明霞夫人は1926年(大正15年)に台南に生まれ、台南師範学校(現、国立台南大学)を卒業後は台南市内の安平公学校や永福国民小学、彰化市民生国民小学などで先生をされていましたので、歌はお手のものだったようです。

それにしても、2017年7月17日に蔡焜燦先生が亡くなられ、2020年7月4日には蔡先生のご子息で編集子の飲み友達でもあった清水旭さんが亡くなりました。昨年(2023年)9月5日には、二二八事件で政治犯の濡れ衣を着せられて緑島に10年も投獄された実弟の蔡焜霖先生が亡くなられ、いままた明霞夫人がお亡くなりになりました。

蔡焜燦先生や蔡焜霖先生とのご縁が遠くなってゆくようで寂しい限りですが、台湾に根を張って生きてきた台湾の人々の本当の思いを伝えていただいたことは、あの歌声とともに忘れません。