日本台湾交流協会は1月18日、台湾歌壇の協力の下、「台湾短歌大賞」をはじめ「日本台湾交流協会台北事務所代表賞」「台湾歌壇賞」「日台交流賞」など8つの賞を設けて短歌作品の募集を発表し、3月3日に応募作品278首から8首を選んで発表しました。
晴れの第1回「台湾短歌大賞」には、台湾歌壇同人の林聿修(りん・いちしゅう)さんの「花燈を下げ手つなぎて娘(こ)とゆきし元宵の宮いま杖とゆく」が選ばれました。また、本会理事で「蔡焜燦先生を慕ふ 和歌の会」(坂口隆裕代表)同人でもある石川公弘(いしかわ・きみひろ)氏の「少年ら片瀬の浜で円になり故郷偲んで『椰子の実』歌う」が「日台交流賞」に選ばれました。
石川氏は神奈川県大和市の市議会議員をながらくつとめ、2回目の議長だったときに市長を表敬訪問した台湾少年工出身者と初めて会い、その後、高座日台交流の会会長として、去る2月21日に亡くなられた李雪峰氏が会長をつとめる「台湾高座会」と約40年に及ぶ交流を続けてきました。
受賞歌は、台湾少年工らが休日に遊びに行った片瀬海岸の浜辺で「椰子の実」を歌って故郷の台湾を偲んだというエピソードを詠んでいます。
2018年10月に大和市で開いた台湾高座会留日75周年記念大会の折には、台湾少年工たちが戦闘機「雷電」を作っていた高座海軍工廠の地下工場があった座間市内の芹沢公園内に建立した「台湾少年工顕彰碑」の除幕式も行われ、石川氏の「八千の台湾少年雷電を造りし歴史永遠に留めん」という和歌が、台湾少年工出身で台湾歌壇同人だった故洪坤山氏や元伊勢原高女勤労挺身隊の佐野た香さんの和歌とともに刻まれています。 受賞歌もまた台湾少年工を歌ったもので、まさに「日台交流賞」にふさわしい歌です。
石川氏は3月15日に行われた李雪峰会長の葬儀に参列するために訪台、その折、日本台湾交流協会台北事務所に立ち寄り、歌人で台湾歌壇同人でもある服部崇・同所副代表から賞状と副賞を授与されました。
この授賞式には、日本から高座日台交流の会事務局長で本会理事の橋本理吉氏や前座間市長の遠藤三紀夫氏、高座日台交流の会の後継団体で会長をつとめる橋本吉宣・日台高座友の会会長などが出席し、台湾側からも三宅教子・台湾歌壇事務局長や矢板明夫・産経新聞台北支局長などが出席しました。
心からお祝い申し上げ、下記に、日本台湾交流協会台北事務所主催により3月3日に行われた「台湾短歌大賞」の講演と表彰式の模様を日本台湾交流協会のホームページから紹介します。後日、行われた石川氏の授賞式の写真も掲載しています。
【日本台湾交流協会:2024年3月15日】
3月3日、当協会台北事務所主催で短歌についての講演を行いました。講演に合わせて「台湾短歌大賞」と題し、台湾についての短歌作品を募集したところ、278首の作品の応募がありました。歌人の三原由起子さん、台湾大学日本文学科の朱秋而教授、台湾歌壇事務局長の三宅教子さんらにも選考に加わっていただき、厳正なる選考の結果、応募作品の中から優れた作品8首が選出され、当日出席できた4人の方に賞状と副賞をお渡ししました。当日は、今回の事業にご後援をいただいた台湾日本人会・日台交流部会の村田温会長にもご出席いただきました。
講演には、三原由起子さんをお招きし、歌人でもある当所服部崇副代表と対談形式で短歌の魅力についてお話しいただきました。対談の中で三原さんからは、「短歌は、(自身にとって)感情を表現するのに適した詩形で、紙とペンがあれば誰でも作ることができるのも魅力」とお話がありました。服部副代表からも、普段どのように短歌を作っているか、言葉の選び方などについて紹介がありました。来場された皆さんの創作のヒントになっていたら幸いです。
最後に、当日ご来場くださった皆さんの応募作品への講評やアドバイスを行いました。参加者同士は知り合いではありませんでしたが、短歌を通じて交流が生まれ、会場があたたかい雰囲気に包まれました。
改めて、今回の事業へご協力いただきました方々及び素敵な作品をご応募いただきました方々へ感謝申し上げます。また、受賞者の皆さま、おめでとうございます。
***** 受賞作品 *****
台湾短歌大賞
花燈を下げ手つなぎて娘(こ)とゆきし元宵の宮いま杖とゆく
(台中・林聿修さん)
日本台湾交流協会台北事務所代表賞
淡水に柔らかく降る春雨を集めてきみと作る阿給
(日本・遠藤雄介さん)
日本台湾交流協会台北事務所副代表賞
阿里山鷲、雲海の果てに、手を伸ばし、昨日の約束、花の朝露
(新北・曹立徳さん)
日本台湾交流協会台北事務所副代表賞
台南の空気は甘い箸持って空中に振って綿飴ゲット
(台南・杜宜庭さん)
日本台湾交流協会台北事務所広報文化部長賞
あたたかい台湾だから人もまた豆花みたいなやさしさがある
(日本・冨田真純さん)
台湾日本人会賞
ルーローファン異国の地より戻り来て故郷の味と舌鼓打つ
(台北・藤本紀子さん)
台湾歌壇賞
しゅぽしゅぽと畑を走る五分車は糖都虎尾のど甘い記憶
(雲林・李玉璽さん)
日台交流賞
少年ら片瀬の浜で円になり故郷偲んで「椰子の実」歌う
(日本・石川公弘さん)