東京都教育委員会は「日本人としての自覚を高めるため、高校生に日本史を継続して学ばせることが重要であるという考え方に基づき」、平成24年度から都立高校生に日本史を必修科目とし、『江戸から東京へ』という教科書を作成、昨年4月から全都立高校生へ配布し使用している。
昨秋、東京都議会の文教委員に就任した野田数(のだ・かずさ)都議はこの『江戸から東京へ』(平成23年度版)を読んでいて、GHQの施策などに触れた「日本の非軍事化と民主化」の箇所に「日本の敗戦によって、台湾は中国に返還」という記述を見つけた。
そこで、編纂している東京都教育委員会に「日本が敗戦で台湾を中国(中華民国)に返還していたら、なぜその後に締結したサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄できたのか。日本は台湾を中国に返還していない。日本政府の見解とも違う。間違いだ」として訂正を求めていたところ、東京都教育委員会その誤記を認め、該当箇所を削除した。
東京都教育委員会は昨日(1月26日)付けで、「東京都独自の日本史科目『江戸から東京へ』教科書の改訂について」と題し、他の記述も含め「これらの意見を踏まえて、教科書内容について精査・点検して改訂を行ない、平成24年度に都立高等学校等に入学する全ての生徒に配布することとしました」と発表している。
野田都議が訂正を求めた箇所は、改訂版では「日本は敗戦によって台湾・朝鮮半島などの支配を放棄」と訂正され、「台湾は中国に返還」という記述は完全に削除されていた。
ただ、野田議員はこの訂正に不満で、来年度は単に「日本は敗戦によって台湾を放棄」とするよう改めて訂正を求めたいと感想を述べている。
しかし、これは快挙だ。公立高校で使用する教科書が「台湾返還」記述を誤記と認めて訂正したのは初めてのケースだ。野田都議の労を多として心から感謝申し上げたい。訂正箇所の詳細はこちら。
本会メールマガジンでも伝えてきたように、これまで例えば昨年4月、インターネット紙「日刊サイゾー」が東日本大震災に関する記事において、日台交流センターの職員が「戦後、日本の敗戦にともない台湾が中華民国(中国国民党政府)に返還されました」と答えたことを紹介していたことについて、本会から日台交流センターに問い合わせたところ、外務省出身の亀井啓二・センター長は言下に「こういう事実はあり得ない」と断言、『日刊サイゾー』に訂正を要求したい」と返答し、「日刊サイゾー」は返還記述を完全に削除、「日本の敗戦に伴い、1949年以降、蒋介石氏が率いる国民党政権が台湾にやってきました」と訂正した。
また昨年11月、漫画家の小林よしのり氏が金美齢氏や石平氏などとの対談集『新日本人に訊け!』(飛鳥新社、2011年5月刊)の「日本統治時代」の脚注で「日本政府は……第二次世界大戦の敗北により、蒋介石率いる中華民国(国民党政府)に返還」と記述。そこで、本会から小林氏に訂正を求めたところ、あっさりと誤記を認め、飛鳥新社の担当編集者を通じて「日本政府は……近代化に努めたが、第二次大戦で敗北。蒋介石率いる中華民国(国民党政府)が支配し、日本はサンフランシスコ講和条約で台湾を放棄させられた」と重版で訂正する旨の連絡があった。
これらの事例は民間だったが、野田都議が訂正させたのは東京都教育委員会という公の機関であり、それも全国の教育行政の中でも中枢機関である東京都教育委員会だ。この訂正の意義は大きい。どれほど賞賛しても賞賛しすぎることはない。大きな一歩だ。
本会は今後、戸籍問題とともに、これまでの地図帳問題を「台湾返還」記述の訂正に的を絞って取り組んでゆく。特に文部科学省が合格のお墨付きを与えている中学校や高校の教科書に「台湾返還」記述がまかり通っていることから、国会で審議されるよう取り組んでゆく予定だ。今後とも志の高い識見豊かな国会議員の方々をはじめ皆様のご協力を仰ぎたい。
野田数(のだ・かずさ)
昭和48(1973年)生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、東京書籍に入社するが、歴史教科書のありかたに疑問を持ち、政治の道へ。2000年、兵庫7区で衆議院選挙に出馬し、土井 たかこ社民党党首と戦うも次点落選。小池百合子衆議院議員秘書、東村山市議会議員2期を経て、2009年東京都議会議員。都議会では文教委員会に所属し、教科書改善運動や、外国人学校運営費補助の見直し、日本武道普及に取り組む。現在、東京都防衛協会青年部長。