20110805日本は台湾に対する歪な関係改善を、戸籍問題についても解決を望む

8月5日、台北市内の国賓飯店で台湾日本人会および台北市工商会が主催する李登輝元総統の講演会が行われた。テーマは「台湾が直面する危機」とし、台湾が持つ民主自由の価値の尊重や、独自性の確保などを強く訴えた。20分ほどの講演の後、出席者からの質疑に答えた。その一部をご紹介する。

Q.日本の若者にメッセージを

A.もっと台湾のことを知って欲しい。先日、東大の学生が私のところへ来たが、その中の一人が「(李登輝元総統の)お兄さんが靖国神社へ祀られている、というお話がありましたが、なぜでしょうか」という質問をした。私は「日清戦争のことを知っていますか、台湾は日本の領土だったと知っていますか」と尋ねたけど、その学生は「よく憶えていません」と答えるばかり。

私は4年前に東京へ行って兄のいる靖国神社を参拝した。その後、外国特派員協会で講演したが、ある新聞記者がこう聞いてきた。「なぜ外国人のあなたが靖国神社を参拝するのか」と。だから「では、あなたが私の立場だったらどうしますか」と聞いたら、相手は答えられなかった。新聞記者ともあろう人間がこんな質問をしてくる。まず人間になって考えなければだめだ。右翼も左翼もないんだよ。そして国民のことを考えなさい、国家のことを考えなさい。そうしなければ、これから日本は大変なことになるぞ。こういったことを話してきた。

日本の戦後の間違いは過去の歴史をすべて否定したことだ。過去の歴史を変えることは出来ない。そしてこれから進むべき道も分からない。歴史は我々が作るものだと考えなくてはいけない。日本李登輝友の会というところが毎年、李登輝学校というものを開催して大勢の日本人が参加している。「台湾とは何か」を学び、日本と台湾との心と心の絆をもっと強くすることがこれからの日台関係に必要なことだ。

もうすぐ66回目の8月15日。今年も九段の社頭は慰霊に訪れる人々に溢れることだろう。4年前の2007年6月7日、李登輝元総統が初めて靖国神社を訪れ、兄の李登欽さんと再会した光景はまるで昨日のことのようだ。今回の講演で言及されたとおり、当時も台湾から同行してきた記者に「なぜ靖国へ行くのか」を問われ「60年以上会っていない兄が靖国神社にいて、弟が東京まで来ている。あなたが私の立場だったらどうする?その気持ちを記事に書けばいい」と言っていたのを覚えている。まさに政治家である前に一人の人間としての言葉だった。