本書は、許世楷・前台北駐日経済文化代表処代表が夫人の盧千恵さんと2005年に出版した『台湾は台湾人の国』が絶版になっていたことで、その後の台湾の状況を踏まえて新たに第8章「台湾国への道のり」を立て、第7章までもかなりの加筆や修正を加えて上梓している。
許世楷大使は、尖閣諸島付近で台湾の遊漁船が日本の巡視船に衝突して沈没するという問題が勃発したとき、その発言が日本寄りだとして立法院の国民党議員から「台奸」(台湾人の裏切り者)と罵られたことに対し、「志ある者、殺されても、辱めは受けない」として、外交部に即刻辞表を叩きつけて辞任したことはいまだ記憶に新しい。まさに「サムライ」の出処進退だと賞賛された。
許大使が大使辞任後も、対日関係をよりいっそう豊かにするためさまざまな活動を展開しており、第8章にはその活動ぶりとともに、新しい台湾をいかにしたらつくれるかを述べた許大使オリジナルの「台湾新生国家理論」にも触れている。
齋藤正樹・交流協会台北事務所代表が事実上の更迭の原因となった「台湾地位未定論」発言にも言及、大変興味深い見方を提示しているので、台湾問題に携わる者には必読の一書と言える。(Y)
許世楷・盧千恵『台湾という新しい国』
四六判・256ページ・並製
定価:1,500円+税
ISBN978-4-944235-50-6 C0095
発売日:2010年4月1日