20091031岩手県が台湾と縁が深いことは意外に知られていない。日本時代、台湾の人類学、特に高砂族の文化・風俗の研究に尽力した伊能嘉矩。彼の著作は、台湾が日本統治下から離れ、60年以上経過した今でも、原住民研究のバイブル的存在となっている。

そして、児玉源太郎総督のもとで民政長官として活躍した後藤新平。医師として「生物学的見地」から台湾統治を捉え、阿片の暫減政策による阿片撲滅の成功がその功績を如実に表している。

また、民政部殖産局長として台湾に赴任した新渡戸稲造は、糖業の発展に貢献しただけでなく、『武士道』の著者として台湾でも広く知られている。また、本書では触れられていないが、同県出身の「平民宰相」原敬も、台湾議会設置請願運動で知られる林献堂や蔡培火を後押しした時期がある。

2007年、「奥の細道」散策のため訪日された李登輝元総統は第6日目の6月4日、岩手県を訪問。盛岡市の「盛岡市先人記念館」を見学されている。ご自身の愛読書『武士道』を著した新渡戸稲造の展示室では熱心に見学。新渡戸稲造愛用の机で署名もされた。

台湾研究者に限らず、台湾に関心を持つ方には興味深い一冊となっている。

『嘉矩・稲造・新平と台湾近代化 岩手三賢人の功績』
著者:國久よしお
ISBN: 4046216778
出版社:角川学芸出版
定価:1575円