李登輝元総統の側近と言われる彭榮次氏が亜東関係協会会長に就任することになった。サプライズ人事だ。彭榮次氏は日本の政財界に幅広い人脈を持ち、李元総統の2001年(平成13年)4月に実現した(総統退任後の)初訪日や2004年(平成16年)12月の訪日にも調整役として活躍したことでも知られる。この人事2月5日に発令の予定だ。

20090115

2004年末、名古屋を訪問された李登輝元総統と彭榮次氏(右)

亜東関係協会の日本側カウンターパートは(財)交流協会。その東京事務所が台北駐日経済文化代表処で、駐日代表は大使に相当し、(財)交流協会の台北事務所が日本交流協会台北事務所であり駐台代表はやはり大使に相当する。

彭氏は74歳で台湾籍の客家人。国立台湾大学経済学部卒。日立製作所、台湾証券取引所研究員、日本勧業銀行(みずほ銀行)の台湾分行設立支援などを経て台湾輸送機械の董事長を務めている。また、李登輝元総統が設立したシンクタンク群策会の設立にも深く寄与している。

亜東関係協会の歴代会長は駐日代表がつとめるのが慣例となっていて、これまで馬樹礼、林金莖、荘銘耀、許水徳、羅福全と続き、陳鴻基現会長は駐日副代表だったが陳水扁総統によって異例の抜擢となった。

また、報道によれば、彭氏は石原慎太郎・東京都知事や谷野作太郎・元中国大使とは旧知の仲で、政財界に太いパイプを持つ人脈を生かし、陳水扁前政権の“知恵袋”として対日関係で重要な役割を果たしており、特に2001年4月に実現した李登輝元総統の初訪日では、日本側との調整役として奔走し、李氏の「個人アドバイザー」として李氏の活動を背後から支えてきた。また、リチャード・アーミテージ前米国務副長官ら知日派米国人とも深い間柄にあるという。

今回の彭榮次氏の起用も駐日代表経験者ではなく、それも李登輝元総統に近い知日派の実業家であることから、異例中の異例といってよい。日本を「特別パートナー」と位置付ける馬英九総統の対日関係重視の布石と見てよいだろう。この人事によって、翳りが見え始めた日台関係が修復され、許世楷代表時代のような「最良の日台関係」となることを願いたいものだ。