7月28日付の台湾大手紙『中国時報』は、馬英九総統が許世楷・前駐日代表の後任に国家安全会議諮問委員の楊永明氏を指名したと報じた。現在、日本側の同意を待っている状態という。

楊永明氏については、本会メールマガジン『日台共栄』第765号(5月13日刊)でも国家安全会議秘書長に馬氏腹心の蘇起・元大陸委員会主任委員の起用が決まったとき、「対日関係を担当する同会議の諮問委員には、馬氏のブレーンで日本語が堪能な楊永明・台湾大教授(43)を充てる」との読売新聞記事を紹介している。

楊永明氏は1964年7月13日生まれの44歳で国立台湾大学政治学部教授。国際法や国際安全保障、日本研究を専門としている。日本語に堪能で、夫人は日本人。台湾大学政治学部で修士まで学んだ後、米国ヴァージニア大学で博士号を取得している。また、2002年からは外交部の諮問委員、2006年からは大陸委員会の諮問委員にも任命されている。

6月27日に第4回中曽根康弘賞(奨励賞)を受賞したばかりで、台湾の安全保障問題に関する研究についてホームページ「Taiwan Security Research(TSR)」を1996年に開設して、中国・台湾・米国関係の状況などについて情報を発信してきたことや、東アジア安全学術研究、台湾と日本の研究フォーラムなどを推進してきたことが評価されての受賞だった。台湾人としては初の受賞だ。

また、楊氏には日本語の著書もあり、台湾大学政治学部副教授だった2006年、東アジア共同体構想の背景と課題を中心に分析した『東アジア共同体への道』(中央大学政策文化総合研究所研究叢書3)では、第4章「東アジアにおけるリージョナリズム-コラボレーションから法制化へ」を執筆している。

昨年9月には、交流協会の日台研究支援事業招聘研究者として来日し、「中国の台頭と日台関係」をテーマとして12月中旬まで研究活動をしていた。また、以前にも、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、中央大学で客員教授・客員研究員を歴任している。

楊氏は尖閣問題が起こった後に開かれた中曽根康弘賞授賞式の折に「馬英九政権は日本との関係を大変重視している」と述べたという。馬英九政権からは対中関係や対米関係を重視する姿勢は見えても、対日関係を重視する姿勢は未だ見えてこない。楊氏の手腕に期待したい。