平成16年10月30日(土)~11月3日(水・祝) 参加者数64名
第1回の「李登輝学校台湾研修団(団長:久保田信之・本会理事、学習院女子大学教授)」は平成16年10月30日(土)から11月3日(祝・水)までの4泊5日で挙行されました。
講師陣には豪華な顔ぶれが揃い、校長の李登輝前総統の特別講義はもちろんのこと、総統府国策顧問からは日本でもおなじみの黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席(昭和女子大学名誉教授)をはじめ、台湾史がご専門の鄭欽仁・台湾大学名誉教授、李永熾・台湾大学歴史学部教授の3人、東大で博士号を取得されている張炎憲・国史館館長、日本には何度も来日されている胡慶山・淡江大学日本研究所助教授、そして台湾文壇で活躍し『鄭清文短編小説選集』を刊行されている小説家の鄭清文先生などです。
また、初日、研修の内容について説明されるのは台湾政府の元新聞組組長で総統府国策顧問をつとめる群策会の黄昆輝秘書長です。研修にふさわしく、李登輝先生は1時間40分にわたって講義され、それぞれの講義はほぼ日本の大学並ですが、黄昭堂先生にいたっては日台の安全保障問題について2時間30分も講義するなど、たいへん充実した内容となりました。
最終日の11月3日の午前中が修了式となり、淡水の綜合研究院の中にある群策会本部で李登輝前総統と懇談後、李前総統自ら修業証書を手渡されました。
もちろん、講義ばかりではなく、11月2日には新しくできた十三行博物館や二二八紀念館、政府の新聞局などを視察訪問いたしました。
【主なスケジュール】
*1日目 10月30日(土)
台湾桃園・中正国際空港着 12:10(CI107便)
渇望学習センター着、チェックイン、宿泊手続き
研修オリエンテーション
特別講義:李登輝先生
*2日目 10月31日(日)
講義:張炎憲先生(国史館館長)
李登輝先生と台湾の民主化について
講義:鄭欽仁先生(総統府国策顧問・国立台湾大学名誉教授)
台湾の歴史
講義:鄭清文先生(小説家)
台湾の文化と文学
講義:黄昭堂先生(総統府国策顧問)
台湾と日本の安全保障
*3日目 11月1日(月)
講義:胡慶山先生(淡江大学日本研究所助教授)
台湾の憲法制定運動について
意見交換会
講義:李永熾先生(総統府国策顧問・台湾大学歴史学部教授)
台湾主体性の追求について
蔡焜燦先生主催晩餐会
*4日目 11月2日(火)
台湾の歴史を知るための視察(十三行博物館、二二八紀念館、新聞局など)
*5日目 11月3日(祝・水)
群策会にて李登輝先生と懇談、修業式。李登輝先生とともに修業記念昼食会
台湾桃園・中正国際空港発 16:30(CI106便)
李登輝学校台湾研修団:講師一覧
◆李登輝先生 前総統、群策会理事長
1923年(大正12年)1月15日、父・李金龍、母・江錦の次男として台湾・台北県三芝郷の源興居生まれ。兄は李登欽(靖国神社ご祭神)。妻は曽文恵。台北高等学校を経て1943年(昭和18年)に日本・京都帝国大学農学部農業経済学科に入学。学徒出陣で陸軍に入隊。日本の敗戦により台湾に帰郷し台湾大学を卒業、農学部助手に就任。米・アイオワ大学大学院、コーネル大学大学院修了。農学博士。台北市長や副総統を歴任後、1988年(同63年)総統に就任。1996年(平成8年)、総統直接選挙で総統に当選。2000年(同12年)、国民党主席を辞任。2001年4月、来日。日本語の主な著書に『台湾の主張』『台湾大地震救済日記』『「武士道」解題』など多数。
◆黄昆輝先生 李登輝学校教務長、総統府資政
1936年(昭和11年)11月8日、台湾・雲林県生まれ。台湾省立師範学院教育学士、国立台湾師範大学教育学修士、米国・北コロラド大学教育行政学博士。国立台湾師範大学教授、同大学教育学科長、同大学大学院教育学学科長。台北市政府教育局局長、台湾「省」政府教育庁庁長、行政院政務委員、行政院大陸委員会主任委員、総統府秘書長などを経て、現在、李連文教基金会会長、群策会副会長兼秘書長。
◆張炎憲先生 台湾国史舘館長
1947年(昭和22年)、台湾・嘉義生まれ。日本・東京大学歴史学博士。中央研究院人文社会科学研究所研究員、呉三連台湾史料基金会会長、台湾歴史学会会長などを歴任。主な論文に「228事件口述歴史」1997年、「風中的哭泣-50年代白色恐怖政治案件」2001年、「台湾共和国-台独運動的先声」など多数。主な著書に『竹塹古文書』1998年、『鹿窟事件調査研究』1998年、『寒村的哭泣-鹿窟事件』2000年など。共著に『二二八事件研究論文集』1998年、『台湾近百年史論文集』『邁向21世紀的台湾民族與国家論文集』2001年など。
◆鄭欽仁先生 台湾大学歴史学科名誉教授
1936年(昭和11年)9月20日生まれ。日本・東京大学文学博士。台湾大学歴史学教授、台湾歴史学会会長を経て、現在、台湾心会理事長、台湾総統府国策顧問。共著に『現代論壇時論集』1991年など。主な論文に「白色恐怖與赤色恐怖」(呉三連基金会 228専題探討)、「實事求是、面對中国」2002年、「台湾30年來的正名運動―体制内改革的瓶頚」2002年など多数。
◆鄭清文先生 小説家
1932年(昭和7年)9月16日、台湾・桃園生まれ。1958年、台湾大学法学部商学学科卒業、処女作を発表。1960年、華南銀行に就職。代表作に、長編小説では1965年『簸箕谷』、1970年『峡地』、1986年『大火』など。短編小説には1968年『故事』、1970年『校園裏的椰子樹』、1984年『最後的紳士』ほか多数。1992年、評論集『台湾文学の基點』、1993年、日本語訳『阿里山の神木』(『台湾の創作童話集』岡崎郁子訳、研文出版)、1968年、短編小説「門」で第4回「台湾文学奨」受賞。1987年、第10回「呉三連文芸奨」「小説奨」受賞。1993年、第16回時報文学奨「短編小説推薦奨」受賞。1999年、短編小説集『三本足の馬』(アメリカコロンビア大学出版社、英訳版。1984年、研文出版より日本語訳)。同年、台湾の中で文芸分野の最高名誉の「金鼎奨」受賞。1998年、華南銀行を定年退職し、台湾師範大学で「現代小説創作與賞析」を講義。
*鄭先生の作品は政治批判や環境問題の揶揄が隠されているものが多い。国民党時代の学校教育では「中国」しか教えなかった。しかし、鄭先生は、台湾の子供達は自分たちの住む台湾をもっと知るべき、愛すべきと考え、台湾の歴史、人物 、風土などを織り込んだ物語を作り出した。
◆黄昭堂先生 総統府国策顧問、台湾独立建国聯盟主席
1929年(昭和4年)6月6日、台湾・台南生まれ。日本・東京大学国際学修士、社会学(国際関係)博士。東京大学講師、昭和大学教授を経て、現在、昭和大学名誉教授、台湾安保協会理事長、財団法人現代文化基金会会長。主な論文「台湾こそ東アジアのかなめ」2002年、「台湾と世界との関係」2002年、「国のアイデンティティと安全保障」、「台湾新生国家理論-継承国家、分裂国家から新生国家へ」2003年など多数。主な著書に『台湾那想那利斯文』前衛出版、『黄昭堂独立文集』前衛出版など。金美齢氏との日本語共著に『大中華主義はアジアを幸福にしない』1997年(草思社)など。
◆胡慶山先生 淡江大学国際研究学院日本研究所助教授
1963年(昭和38年)生まれ。日本・国立北海道大学法学博士。台湾国際法学会理事、台湾応用日本語学会理事などを経て現職。主な論文「従国際法観点看「中華民国」的名称」2004年、「日美安保同盟新防衛合作指針與台海関係」1999年など多数。
◆李永熾先生 総統府国策顧問
1939年(昭和14年)11月28日、台湾・台中県生まれ。国立台湾大学歴史学科修士、日本・東京大学文学博士。国立台湾大学歴史学科助教授、教授を経て、現在、国家人権記念館準備処主任。主な著書に『日本的近代文化與知識分子』1970年、『台湾歴史年表・終戦篇』1990年、『歴史・文学與台湾』1992年など。主な論文に「我看台湾史」1983年、「『切腹』與『心中』-日本精神史的一個側面」1991年など多数。
◆荘孟學先生 財団法人群策会活動処処長
1961年(昭和36年)8月7日、台湾・嘉義生まれ。国立台湾芸術大学美術学科、淡江大学中国大陸研究所修士。芸術貴族雑誌社編集長、同社社長、立法院無党籍聯盟事務所主任、「自立夕刊」新聞社副編集長など歴任。
「李登輝学校台湾研修団、大収穫を得て帰国 李登輝前総統が”台湾に新憲法を制定することが最後の仕事”と明言」
11月3日、李登輝学校台湾研修団(久保田信之団長、参加者64名)は、10月30日からの全ての日程を終え、無事、台湾より帰国いたしました。
今回の研修には、初めて訪台した方から数十回の方まで様々で、平均年齢こそ48歳でしたが19歳から83歳までと幅広く、また職業も、学生、サラリーマン、学校教師、会社経営者、ジャーナリストなど多種多彩な方々が参加されました。
すでに参加者からはこもごも「李登輝前総統の迫力に圧倒されました」「念願だった李登輝前総統や黄昭堂主席にお会いし、直にお話を伺うことができ大変充実した時間を持つことができました」「今回、見聞きしたことを自分なりに咀嚼し、日本人としていかに生きていくか、改めて考えたいと思います」「生涯忘れえぬ想い出となりました」といった感想が寄せられています。
後日、参加者の感想は『感想文集』としてまとめ、講義の内容は『講義録』として頒布する予定です。発行しましたらご案内いたします。
今回の研修では、やはり李登輝前総統をはじめ台湾を代表される講師陣による日本語の講義により、台湾の現状などを深く知りえたのが最大の収穫でしたが、各講師の講義内容を日本語で作成したテキストを準備し、ティーブレイクにはコーヒーや紅茶どころか飲茶やショートケーキまで用意していただくなど、李登輝学
校側の多大なご配慮により、嘘偽りなく充実した内容の研修となりました。
李登輝学校校長の李登輝先生、教頭の黄昆輝先生、そして荘孟學活動処処長をはじめとする大勢のスタッフの方々に心から御礼申し上げます。
研修は10月30日の初日、総統府秘書長(官房長官に相当)をつとめられた総統府資政で群策会副会長を兼ねる李登輝学校教頭の黄昆輝先生より、群策会や李登輝学校の概要説明を受けて始まり、その後、李登輝前総統が挨拶、研修で学んで欲しいことや台湾の現状について説明されました。
やはり圧巻は、引き続き行われた李登輝前総統による「台日関係と台湾制憲運動について」と題する1時間にわたる特別講義でした。質疑応答も含めて2時間、パワーあふれる迫力満点の講義は、聴くものを圧倒しました。
「戦後の日本は台湾を忘れてしまい、台湾人の苦難を理解しなくなった」「世界から信用される国は、道徳体系を持っている日本だけだ」「台湾は中華民国という神話から抜け出すために新しい憲法が必要だ。これが私の最後の仕事になる」など、その一言一言が肺腑をえぐり、参加者に深い感銘をもたらしました。
李登輝前総統は最終日の終業式にも臨んで64人の参加者一人ひとりに修了証書を手渡されたことも、参加者には多大な感銘を与えたようです。【メールマガジン『日台共栄』95号より転載】
機関誌『日台共栄』第4号(平成16年12月発刊)に掲載された参加者レポート
~日本人としていかに生きていくか改めて考えたい~
11月3日、李登輝学校台湾研修団は無事帰国しましたが、その後、参加者から続々と感想が寄せられています。今回の『感想文集』を作成するため、正式な感想文は11月末締め切りでご案内しましたが、事務局には帰国翌日から感想を添えた御礼のFAXやメールがたくさん届いています。有難いことです。
皆様にもその充実した研修の一端をお伝えいたしたく、ここに、いただいたご感想の一部をご紹介いたします。
・今回の研修では大変お世話になり本当にありがとうございました。また、色々とわがままを申しまして失礼しました。今回、見聞きしたことを自分なりに咀嚼し日本人としていかに生きていくか改めて考えたいと思います。取り急ぎ御礼まで……。あ~ふぃ~べあ~、あ~ふぃ~べあ~♪ (S・Y)
・お礼申し上げるのが大変遅くなりましたが、台湾研修中は大変御世話になり、有難うございました。微力では御座いますが、今後も日台の友好の為に様々な活動を行って行きたいと考えておりますので、お声掛けていただければ幸いです。本当に有難う御座いました。 (T・A)
・台湾研修では大変お世話になり有り難う御座いました。渇望煙草村でふふふ(^^ゞ)。受け取ったものの余りの大きさ重さにあらためて身の引き締まる想いを致して居ります。修了のreportはもう少しお時間を下さい。(H・N)
・今回の研修会では大変にお世話になり、誠にありがとうございました。念願でした李登輝前総統や黄昭堂主席にお会いし、直にお話を伺うことができ、大変充実した時間を持つことが出来ました。これも事務局の皆様のおかげと重ねて御礼申し上げます。また、台湾側スタッフの皆様方の過分のご配慮にも重ねて感謝申し上げます。また参加させていただく機会のありますことを楽しみにしております。(Y・H)
第1回「台湾李登輝学校研修団」『感想文集』について
李登輝前総統が校長をつとめられる台湾の李登輝学校に学ぶ「台湾李登輝学校研修団」の第1回は平成16年10月30日~11月3日に行われ、団長の久保田信之・学習院女子大学教授をはじめとする参加者の感想をまとめた『感想文集』が刊行されました。
もちろん、李登輝前総統の特別講義「台日関係と台湾制憲運動について」の内容も掲載し、李登輝前総統との質疑応答の内容もすべて掲載しました。
蒋経国や孫文についての赤裸々な評価や、台湾の建国記念日をいつにしたらよいかなどについて具体的に答え、また身長が高いということについての自己評価や日本の情報をどのように入手しているかなど、他所では聞けないお話が満載です。
それぞれの感想も、さすがに一期生に応募した「ツワモノ」とうなづかされる示唆的な内容が少なくなく、これ1冊丸ごと、台湾の現状を理解するためのガイドブックとなっている感があります。
ご希望の方には実費でお頒ちいたしますので、本会事務局までお申し込みください。代金は後払いです。
■第1回台湾李登輝学校研修団『感想文集』(B5判、並製、88ページ)
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