ここまで詳しく「中国の野望」を分析し、台湾の政治、経済、外交、歴史、民族問題等についても言及しつつ、中国の野望をくじくために日本が採るべき具体策まで提言しているものは稀であろう。
本書で特に注目しているのは、中国共産党創設百周年の2021年と中華人民共和国成立百周年の2049年。中国は、2020年までに第二列島線内の制海能力を持つ海軍を整備し、2040年から50年の間に米海軍と肩を並べる海軍力を建設することで「中華民族の偉大な復興」を実現しようとしている。
この野望を抱く中国にとって、まずは太平洋へ進出しなければならないが、その「かんぬき」つまり「列島線バリケードの支柱」となるとなるのが台湾だと指摘する。それゆえ日米は、台湾の政治的価値と戦略的価値に関する認識を改めて共有し、運命共同体意識を高める必要があると剔抉する。
ところが、米国は台湾関係法を制定して台湾と実質的な軍事同盟を結んでいるものの、日本は台湾との法的関係は一切ない。そこで、日本の喫緊の課題は米国の台湾政策と整合性を有する台湾政策を推進できるようにする日本版「台湾関係法」の制定だと提言。
また、日台間の軍事・技術提携のためには「軍事情報保護協定」が必要で、そのため現職自衛官を交流協会台北事務所に派遣できるようにすることも喫緊の課題だと提言する、読み応えのある一冊だ。
第1章 台湾の概況と現状 - 日本の真の友である台湾の歴史、政治経済、外交
第2章 国際情勢と中国の行方 - 台湾周辺地域の地政学的分析と中国の実力
第3章 中国と台湾との関係(両岸関係)の現状と将来 - 中国の国防・軍事戦略と中台の軍事バランス
第4章 米国と台湾との安全保障関係の現状と将来 - 台湾の死命を制する米国の台湾政策
第5章 戦後の日台関係と遠い安全保障協力 - 弱体化した日台防衛協力と試される日本
第6章 台湾とその他の国および国際機関との関係 - 台湾周辺諸国との経済・外交・安全保障政策
第7章 日本の安全保障政策と台湾 - 運命共同体の関係にある日本と台湾
『中国の野望をくじく 日本と台湾』 一般社団法人 日本戦略研究フォーラム
内外出版
ISBN: 4905285380
定価: 本体1,200円+税