3月23日に逝去したシンガポールのリー・クアンユー元首相の国葬が29日に行われる。昨日、シンガポール大使館に赴いて追悼記帳した安倍晋三総理は、みずからこの国葬に参列する方向で調整に入ったと伝えられる。

一方、台湾の馬英九総統は昨日行われた家族追悼会に参列して弔意を表した。国葬には、27日開催のアジア・フォーラム2015年度年次総会に出席する蕭万長・前副総統が参列するという。

リー・クアンユー元首相は頻繁に台湾を訪問し、李登輝元総統とも昵懇だった。

20150325-01だし、政治思想もその姿勢もまったく異なった。李元総統は国民が直接選挙で総統を選ぶなど台湾の民主化を実現し、同族を登用しない姿勢を貫いた。一方のリー・クアンユー氏は国民の政治参加を著しく制限する「開発独裁」と言われるもので、長男のリー・シェンロン氏を後継首相としたことに現れているように同族支配体制をとった。

李元総統は昨日、リー・クアンユー氏をして「アジア的価値」を主張した政治家だったと評したと中央通信社が伝え、産経新聞の同様に報じている。

これは、李元総統が国家の統治体系を表すときによく用いる表現で、「アジア的価値」とは中国や朝鮮半島の歴代王朝に見られる皇帝型専制制度による中央集権政治を指す。その最たるものが、周辺国の支配者が天子たる皇帝に冊封する中華思想だと言われる。

李元総統は、毛沢東時代からの中国や陳水扁時代の台湾も「アジア的価値」に根ざしていたと評している。


李登輝氏「リー・クアンユーとは思想異なる」自身との違い強調

李登輝元総統は24日、23日に亡くなったシンガポールの「建国の父」、リー・クアンユー元首相について、「親友だった」と述べる一方、自身は民主主義社会を目指したが、リー元首相は「アジア的価値」を主張したとして、思想は異なると語った。

李氏はリー元首相が主張したアジア的価値とは「中国5000年の歴史であり、皇帝制度である」と指摘。さらに、「彼は中国に頼ったが、私はそうしなかった」とする持論を展開した。

また、李氏は米国の国際政治学者サミュエル・ハンチントン氏の「李登輝が亡くなっても台湾の民主主義は残るが、リー・クアンユーが亡くなればその制度は失われる」という言葉を引用し、双方の違いを強調した。(中央通信 2015年3月25日)