本会メールマガジン『日台共栄』の本年5月16日号(第2395号)でもご紹介したように、昨年(2014年)9月11日、大阪府松原市(澤井宏文市長)と台北市文山区(蔡培林区長)は友好都市協定を結んでいます。
松原市が海外との友好都市協定締結は初めてであり、大阪府では台湾の自治体との都市協定締結も松原市が初めてのことでした。そのキーワードは「セーフコミュニティ国際認証」。
松原市がセーフコミュニティ国際認証を取得したのは2013年11月16日。一方、台北市文山区はその3年前の2010年11月10日に取得しています。
当時、松原市は台北市文山区と友好都市協定を締結に至った経緯を次のように説明していました。
<9月11日に、澤井市長が台湾台北市文山区を訪問し、初めて海外との友好都市協定を締結しました。台湾の地域と友好都市協定締結は大阪で初めてとなります。
台北市文山区は、本市の3年前にセーフコミュニティ国際認証を取得しており、その取り組みへの積極性と熱心さなどから繋がりがうまれました。本市のセーフコミュニティ認証式典では、代表団が訪問され、セーフコミュニティ友好協定を締結しました。その友好関係をより発展させるため、今回に至りました。昨日の友好都市協定も、終始和やかな雰囲気で、無事協定を締結しました。>(2014年9月12日)
この「セーフコミュニティ国際認証」を介した日台の姉妹都市提携に着目したのが、産経新聞です。下記にご紹介します。
なお、日台の姉妹都市については本会HPの「日台姉妹交流」欄をご参照ください。
【姉妹都市 60年の岐路(2)】地方創生の道開くか!
大阪・松原市と台北市文山区の経済・文化の枠超えた新たな挑戦
兵庫・淡路市の「冠」のメリットとは?
セーフコミュニティ。日本ではなじみがないキーワードが二つの市を結んだ。
今年2月に開かれた大阪府松原市の市制施行60周年記念式典の会場に、台湾・台北市文山区の中学生約40人の姿があった。前年の9月に友好都市提携したばかり。来日した生徒が吹奏楽の演奏で祝った。
セーフコミュニティは、WHO(世界保健機関)セーフコミュニティ協働センターが推進する「安心・安全なまちづくりの国際認証制度」の一環。事故や傷害を予防するために、「体系だった方法で安全の向上に取り組む」自治体や地域を指している。
松原市の青山洋子・市民協働課参事は「“先輩都市”を視察したが、文山区が最も積極的かつ丁寧に対応してくれた。うちの取得後も区長が松原を訪れるなど自然な形で友好提携に至った」と経緯を説明する。
文山区から学ぶことは多いという。「薄暗くなった学校の帰り道で子供たちを犯罪から守るため、壁に絵を描いたり花を植えたりするなどの取り組みは参考になる」(同課)
経済や文化などの“定番”を離れ「安全」を中心に据えた結びつきは、新たな交流として注目される。
国際化ブームに
姉妹都市の提携をめぐっては、1980年代後半から90年代の「国際化」ブームに乗り遅れまいとする首長の意向が強く反映。さらに補助金も交付されてきた。
そうした過程で住民に対する説明が不足し“役所主導”で提携が行われた点は否めない。だからこそ、自治体の財政難などの問題が浮上した際、関係を解消するケースも相次いだ。
60年にわたり米ミネソタ州セントポール市と姉妹都市を続けている長崎市の柴原慎一国際課長は「市民レベルの交流を大切にしてきたことが、双方の市民によい影響を与えている」と交流の秘訣を説明する。
両市の場合、市民の呼びかけで双方に市民主体の姉妹都市委員会が立ち上げられ、姉妹校や姉妹交響楽団といった分野ごとに提携をおこなってきた。各団体が交換留学生や演奏会などを通じて交流を深め、委員会が活動を支援する。
時代や社会状況でテーマは変わっても、市民が主体となって交流を深めることが、友好関係を長く続ける秘訣であることを、両市の例は示している。
「冠」のメリット
では「姉妹都市」の枠組みのメリットはどこにあるのか。平成17年4月に5町の合併で発足した兵庫県淡路市の門(かど)康彦市長は、「地域社会が国際交流をするため姉妹都市の“冠”は形式上必要だと思う」と話す。
同市は昨年、中国・浙江省義烏市と友好都市提携した。だが、実は合併前の北淡町が米オハイオ州セントメリース市、津名町がブラジル・パラナグア市とそれぞれ提携していた。
「平成の大合併」をきっかけに解消された友好都市も少なくないが、同市は合併後も引き続き二市と関係を継続している。
市民の交流を見すえたうえで、まず行政が相手との信頼関係を構築する。「行政が冠をかぶせるだけで相手を納得させ、経済や文化など市民レベルの交流がやりやすくなる」という門氏の発言は重い。
時代先取り必要
自治体の姉妹都市交流に詳しい岩手県立大の佐藤智子教授は、「交流を先細りさせないためには、常に時代の流れに対応した方法を考えることが重要」と説明。そのうえで「行政、ボランティアなどは前任者を踏襲するだけではなく、それぞれの立場で『プロフェッショナル』を育てることが必要」と指摘する。
行政と市民がともに時代を見すえ、人材を育て、新たな価値観に挑戦する。市町村が今後の地方創生の時代を切り開く道を姉妹都市は示唆している。
◇平成の大合併 自治体を広域化して行財政効率を上げようと、平成11年度から政府主導で行われた市町村合併。17年前後に合併が集中した。全国3232あった市町村数は、合併特例法が期限切れとなった22年3月末には1727にまで減少した。