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選挙戦も大詰めとなり、蔡英文候補(中央)は防弾チョッキの着用を始めた

いよいよ投開票日まで残り2日を切った。投票日前日の選挙活動は午後10時までと決められているため、各陣営は未だ態度を決めかねている浮動票を獲得するため「黄金の48時間」に全力を尽くす。

一方、台湾国家安全局は、治安維持体制を最高レベルに引き上げて警戒にあたる。民進党の蔡英文候補は13日夜に出席した台中での選挙集会から、当局のアドバイスに従って防弾チョッキの着用を始めた。また、会場後方から候補者が参加者の間を縫って握手しながら登壇する方式も、同様に当局の勧めにより取りやめた。今日、明日の集会では、防弾ガラスを設置した演台の使用も予定されている。

また、当局も大規模集会会場においては爆発物探知犬を出動させて警戒にあたる。民進党関係者によれば、党内には2010年に行われた5大都市選挙の際、台北で候補者の応援に登壇していた連勝文氏(当時、国民党中央委員)が狙撃された結果、優位に進んでいた台中市長選挙を3万票差でひっくり返されたという認識があり、選挙活動も最終段階に入ったことで、選挙情勢に影響を及ぼすいかなる事態の発生も防ぎたいかまえだ。

13日付の台湾紙・自由時報は、当局の治安維持体制について、許恵祐・元国家安全局局長への単独インタビューを報じた。許氏の発言要旨は下記の通り。

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許恵祐・元国安局長(自由時報の報道より)

投票前の3日間が候補者の安全にとって最も危険であり、台湾当局は候補者に対して危機管理意識を高めるよう進言するべきだ。ただ、現在のところそうした雰囲気が見られないのは残念だ。党や候補者の危機管理意識欠如は、支持者の心情を容易に激情化させ、突発的な事件発生に繋がる。こうした事件は、台湾の民主主義、憲政主義、社会の安定や経済発展を阻害するものとなる。

目下の選挙情勢を見ると、勝敗が逆転する可能性は少ないが、選挙が中止になる要因は存在する。法律では「総統候補者が立候補を届け出てから投票日までの間に死亡した場合、中央選挙管理会はすみやかに選挙を中止し、日程を改めて行うものとする」と規定されているからだ。しかし、選挙は必ず中止になるとは書かれていても、どの程度の期間、中止にするかについては明記されていない。

万が一こうした事態が起きた場合、必ずや憲政問題に発展するだろうし、時間の経過は選挙結果にも影響を及ぼすだろう。加えて、総統選挙でこうした事態が起きたとしても、立法委員選挙が必ず中止になるとは限らない。そうなると問題はさらに複雑化する。そのため、当局は投票までの最後の数日間、警戒レベルを最大限強化して候補者の安全確保に務めるべきだ。

国家安全局は三組の候補者たちの安全確保のため、形式的に人員を配置するのではなく、安全処置を着実に行ってもらいたい。また、退避が難しい閉鎖的な場所や、何も遮断するものがなく容易に狙撃できるような場所ではよりいっそう警備を強化するべきだ。特に、ローンウルフ型(単独型)のテロ行為は、結果的に大規模な被害が発生する恐れがあるため、特に注意してもらいたい。

台湾ではこれまで選挙に関連して二度、治安を揺るがす事件が起きている。2004年の陳水扁総統と呂秀蓮副総統が狙撃された事件、2010年に国民党の連勝文氏が狙撃された事件だ。この二つの事件は結果的に、政治や経済の情勢に重大な影響を与えることになってしまった。留学していたドイツでよく言われていたのは「信用するのは良い。確認するのはもっと良い。しかし信用しないのが一番良い」ということ。

投開票が終わるまで、いかなる不測の事態も発生しないよう治安を維持し、安全を確保することが目下の台湾当局の重要な役割だ。【1月13日付・自由時報】

【台湾での報道を本会台北事務所で翻訳、加筆してまとめたものです。また、選挙集会を見学・視察される方は、突発事故に巻き込まれないよう十分ご注意下さい】