小林さんを助けた丁一凡さん(右、聯合報の報道より)

「お母さん、会いたかった!」。小林さんは幼いころに別れた台湾人の母親を探すため、数日前に単身で来台。しかし、慣れない土地に戸惑い、気持ちは焦るばかり。不幸中の幸いか、日本語学科出身の婦警さんの助けもあり、運良く90代の母親を探し出し対面することが出来た。二人は対面した途端お互いに抱き合って号泣、そばに立つ婦警さんの目にも涙があふれた。

小林修二さん(66歳)が話したところによれば、幼いころに両親が離婚、台湾人だった母は再婚のため台湾に戻った。その後、一度も会うことは叶わなかったが、瞼の母は常に心の中にあったという。

最近になり、母親が基隆市の楽一市場のそばに住んでいることを知った小林さんは矢も盾もたまらず単身で来台。しかし、正確な住所を把握していなかったため、ついには派出所に縋る事態となった。

派出所に駆け込んだ当初、小林さんは少しかじっただけの中国語と身振り手振りで警察官に窮乏を訴えたが要領を得ず、母をたずねた旅の空が徒労に終わることを恐れて気持ちは焦るばかりであったという。

そこへパトロールを終えて派出所に戻ってきたのが婦警の丁一凡さんだった。日本語堪能な丁一凡さんは、小林さんが単身で遠路はるばる母親を探しに来たことを知る。

丁一凡さんが戸籍を調べると、小林さんのお母さんは別の管区に居住しているらしい。さらに資料を調べると、その息子さんが管轄区域内に居住していることが判明した。

丁一凡さんはすぐにその息子と連絡を取って状況を説明、お母さんの正確な住所が確認できたため、署員たちは小林さんを母親のところまで送り届けたという。

小林さんは母親を見るなり駆け寄り、抱き合いながら大声で「お母さん、しばらくでした。会いたかった!」と子供のように叫び続けたという。

母子の情は海よりも深し、その情が警察の心までも動かしたといえる。小林さんは母のもとにしばし滞在、協力してくれた警察官に何度も感謝しながら帰路に就いたという。

丁一凡さんは日本語学科の名門、東呉大学日文系卒業。警察官試験に合格し、警察学校を経て今年1月にこの派出所に配置されたばかりだった。

初めて自分の日本語力を発揮して人の助けになったことがとてもうれしいだけでなく、心に残る出来事になった、と話している。

【8月29日付・聯合報の記事を本会台北事務所で翻訳したものです】