本会の渡辺利夫会長は9月5日付けで、金田勝年(かねだ・かつとし)法務大臣に「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」と第12期の署名を送達しました。下記に要望書の全文をご紹介しま
す。

渡辺会長が要望書で指摘しているように、すでに法務省入国管理局は、4年前の2012年(平成24年)7月9日に、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際しては「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と明記しています。これは、外務省も同意しての措置でした。

また、同時に実施された総務省管轄の外国人住民基本台帳でも、台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記するようになっています。

現在、民進党の代表選挙に出馬表明している蓮舫・代表代行に「二重国籍」問題が浮上し、蓮舫議員が中華民国籍を放棄したのかどうかが話題となっています。

法務省の民事局が管掌しているのが戸籍です。ですから、メディアは金田法務大臣に蓮舫議員の「二重国籍」問題について質問し、金田大臣は「個人のプライバシーに関わることであり、コメントを差し控える」(産経新聞)と答えたと伝えられています。

蓮舫議員が中華民国籍を離脱しているかどうかはまだ判明していないそうですが、それはともかく、蓮舫議員は帰化することで日本国籍を取得したのですから、戸籍における出生地がどのように表記されるのかといいますと「中国台湾省」です。「台湾」ではありません。

蓮舫議員もメディアも「台湾籍」や「台湾の『国籍法』」(産経新聞)などと表現し、果ては「中国法に基づけば」(朝日新聞)という説明をしていて、台湾があたかも中国であるかのような表現がなされ、読者をミスリードしています。

その原因はメディアの認識不足にもよりますが、最大の原因は、戸籍を管掌する法務省民事局がいまだに台湾出身者を「中国人」扱いしていることにあります。

ですから、渡辺会長が要望書で指摘しているように「法務大臣は台湾出身者の尊厳と人権を守り、在留カードや外国人住民基本台帳にならい、また入国管理局と民事局の整合性や法務省統計との整合性を図るためにも」、早急に民事局長通達を出し直すなどの措置を取り、台湾出身者は「台湾」、中華人民共和国出身者は「中国」と表記し、明確にわかるようにしてもらいたいものです。


台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書

私ども日本李登輝友の会は、文化交流を主とした日本と台湾の新しい関係を構築することを目的として活動している民間団体です。

法務省はこれまで、台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記してきました。中国とは中華人民共和国のことであり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指します。即ち、台湾出身者を中国人としているのが現在の戸籍制度です。

戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」としたのは、昭和39年(1964年)6月19日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」という通達でした。このことは政府も、大江康弘・参議院議員の「質問主意書」に対する平成23年8月19日の「答弁書」で明確に認めています。

昭和39年といえば今から50年以上も前、東京オリンピックが開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代です。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国の関係は大きく変わってきています。

日本政府は、平成17年9月には台湾観光客に対するビザ免除を恒久化し、平成19年9月には台湾と自動車運転免許証の相互承認を行い、中国と異なる対応をしています。東京都も平成20年5月、住民基本台帳の表記について、台湾からの転入・台湾への転出の際には「台湾」の表記を認めるという通知を出しています。

さらに平成24年7月9日、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際しては「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と明記しています。同時に実施された外国人住民基本台帳でも、台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記するようになりました。もちろん、台湾が官民挙げて歓迎していることは周知の通りです。

ましてや台湾は、これまで一度たりとも中華人民共和国の統治を受けたことはなく、台湾を中国領土とするのは、台湾侵略を正当化するための中国の政治宣伝以外のなにものでもありません。事実、この戸籍表記は日本政府の見解にも合致しておらず、これを放置しておくことは中国の覇権主義的主張を受け入れているとみなされかねません。

ついては、法務大臣は台湾出身者の尊厳と人権を守り、在留カードや外国人住民基本台帳にならい、また入国管理局と民事局の整合性や法務省統計との整合性を図るためにも、戸籍の国籍欄および出生地欄を「国籍・地域」と改め、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と表記すべく、早急に民事局長通達を出し直すよう要望します。

併せて、ここに私どもの要望に賛同する署名(第12期)1006人分を呈します。

なお、賛同署名は平成23年11月の第1期以来、本年1月末の第11期まで3万6531人分の署名を要望書とともに送付していることを申し添えます。

 平成28年9月5日

                            日本李登輝友の会会長 渡辺 利夫

法務大臣 金 田 勝 年 殿