先の大戦末期に台湾南部の台南市で戦死し、現地で神として祭られている杉浦茂峰海軍兵曹長の神像が、杉浦氏の出身地、水戸市に“里帰り”することになり21日、台湾を出発した。
戦死により少尉に特進した杉浦氏を祭る「鎮安堂飛虎将軍廟(びょう)」の縁起などによると、杉浦氏は20歳だった1944(昭和19)年10月、来襲した米軍機を零戦で迎撃中に被弾。集落への墜落を避けようと機体を郊外に誘導したため脱出が遅れ、落下傘で降下中に機銃掃射を受け戦死した。
戦後、地元の人々が集落を守るために命を落とした杉浦氏を悼み、落下地点に71年に廟を建設。「飛虎将軍」と呼び、朝夕に「君が代」と「海ゆかば」の演奏を流し弔っている。
“里帰り”の計画は今年春、廟を訪れた日本人作家の夢枕で、杉浦氏が「水戸に帰りたい」と話したことから始まった。廟が所属する寺院「海尾朝皇宮」の管理委員会が占いで主神の「意志」を確認したところ、その通りだとの結果が出たという。
杉浦氏の神像は、軍刀を持って座った姿の高さ30センチ程度の木像。21日朝、祭壇からケースに移され、関係者約30人とともに南部・高雄空港から成田空港に向かった。主神が廟の外に出るのは初めてで、中華航空は神像のために座席の手配に応じた。同日中に水戸市に到着、22日に護国神社で慰霊祭が行われる。神像は再び台湾に戻るが、分祀(ぶんし)の計画もあるという。
管理委員会の呉進池主任委員(60)は21日朝、「いつも厳粛な表情の飛虎将軍が、今日はほほ笑んでいるようだ」と話した。