去る7月18日、本会の渡辺利夫会長は川上陽子法務大臣に「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」と第15期と第16期分の賛同署名を送達しました。下記に要望書の全文をご紹介します。

要望書に記しているように、法務省の民事局はいまから50年以上も前の1964年6月以来、台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記してきました。

これは当時「中国」といえば台湾の中華民国を指していた時代の古い話で、中華人民共和国がだんだん台頭してくるようになって取った過渡的な措置という意味合いが強かったのです。

しかし、中華民国が国連から脱退し、日本が国交を断絶したことで、「中国」とはだんだん中華人民共和国と認識されはじめ、今では外務省も「中国とは中華人民共和国のこと」と断言するようになっています。

一方、台湾は李登輝総統時代の1990年代から民主化がはじまったことにより、台湾人意識も高まり、2000年以降は台湾正名運動もさかんに行われるなど、時代の様相は一変しました。

そこで、法務省の入国管理局は2012年(平成24年)7月9日、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際しては「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と明記するようになりました。同時に総務省も外国人住民基本台帳で、台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記するようになっています。

安倍晋三総理も「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーである台湾との間において実務関係が着実に発展していくことを期待している」と答弁いているにもかかわらず、未だに法務省の一部局の長にすぎない民事局長が53年前に出した局長通達、すなわち「実務」をかたくなに守っているのが、いまの日本の実情なのです。

蓮舫議員の二重国籍問題で明らかになったように、法務省が民事局長通達を変更しない限り、台湾人は日本の戸籍で中国人扱いされることが続きます。

事は台湾人の人権に関わる重大問題です。台湾に関心の深い皆さま方のご理解を得て、この問題の解決に微力ながら力を尽くしたいと思います。


台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書

私ども日本李登輝友の会は、文化交流を主とした日本と台湾の新しい関係を構築することを目的として活動している民間団体です。

法務省はこれまで、台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記してきました。中国とは中華人民共和国のことであり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指します。即ち、台湾出身者を中国人としているのが現在の戸籍制度です。

戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」としたのは、昭和39年(1964年)6月19日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」という通達でした。このことは政府も、平成23年8月19日に出されている菅直人総理大臣の「答弁書」で明確に認めています。

昭和39年といえば今から50年以上も前、東京オリンピックが開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代です。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国の関係は大きく変わってきています。

日本政府は、平成17年9月には台湾観光客に対するビザ免除を恒久化し、平成19年9月には台湾と自動車運転免許証の相互承認を行い、中国と異なる対応をしています。東京都も平成20年5月、住民基本台帳の表記について、台湾からの転入・台湾への転出の際には台湾の表記を認めるという通知を出しています。

さらに平成24年7月9日、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際しては「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と明記しています。同時に実施された外国人住民基本台帳でも、台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記するようになりました。もちろん、台湾が官民挙げて歓迎していることは周知の通りです。

ましてや台湾は、これまで中華人民共和国の統治下に入ったことはなく、台湾を自国領と主張するのは中国の政治宣伝以外のなにものでもありません。事実、これまで日本は中国のこの主張を承認したことは一度たりともありません。これを放置しておくことは、日本は中国の主張する「一つの中国」原則を承認しているとみなされかねません。

ついては、法務大臣は台湾出身者の人権を守るため、在留カードや外国人住民基本台帳にならい、また入国管理局と民事局の整合性や法務省統計との整合性を図るためにも、戸籍の国籍欄および出生地欄を「国籍・地域」と改め、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と表記すべく、早急に民事局長通達を出し直すよう要望します。

併せて、ここに私どもの要望に賛同する署名(第15期・16期)146人分を呈します。この賛同署名は、平成23年11月の第1期以来、本年7月の第16期まで3万7,831人分の署名を要望書とともにお届けしていることを申し添えます。

 平成30年7月18日

                           日本李登輝友の会 会長 渡辺 利夫

法務大臣 上 川 陽 子 殿