森法務大臣に送達した要望書と署名

台湾出身の方が日本人と結婚したり、日本に帰化した場合、戸籍の国籍や出生地は「中国」「中国台湾省」などと記されます。「中華人民共和国(PRC)」と記される場合もあります。つまり、台湾出身者を中国人としているのが日本の現在の戸籍制度です。

このような事態になったのはいつからかというのははっきりしています。1964年(昭和39年)からです。アジアで初のオリンピックが東京で開催された年です。この年の6月19日、戸籍と管轄する法務省民事局の局長が「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」という通達を出したことが原因でした。本会の調査で判明し、政府も認めています。

それ以来、台湾出身者の身分関係の変動(婚姻・帰化・養子縁組など)に関わる戸籍の国籍は「中国」とされてきました。

本会などが在日台湾人の外国人登録証明書の国籍を「中国」から「台湾」に改めようと解決をめざしてきた外登証問題は、2009年の「出入国管理及び難民認定法」の法改正をもって解決し、2012年7月から交付された在留カードには「国籍・地域」欄が新たに設けられ、台湾出身者は「中国」
ではなく「台湾」と明記するようになりました。

このようなことから、本会には何人もの方から「私は中国人と結婚したのではない」「なんとかして欲しい」という悲痛なお便りをいただくようになりました。

そこで本会は2010年11月以来、この戸籍問題の解決に努め、法務大臣に、民事局長通達を出し直し、台湾出身者は「台湾」と表記するよう強く要望してまいりました。

蓮舫議員の二重国籍問題で明らかになったように、法務省が民事局長通達を変更しない限り、台湾出身の人々が日本の戸籍では中国人扱いされることが続きます。

1月28日、本会の渡辺利夫会長は森まさこ法務大臣に17度目の要望となる「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」を賛同署名とともに送達しました。下記に要望書をご紹介します。

◆本会ホームページ:台湾出身者が「中国」とされている戸籍問題の解決を!
 


                                令和2年(2020年)1月吉日

法務大臣 森まさこ殿

                             日本李登輝友の会会長 渡辺 利夫

台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書

私ども日本李登輝友の会は、文化交流を主とした日本と台湾の新しい関係を構築することを目的として活動している民間団体です。

法務省はこれまで、台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記してきました。中国とは中華人民共和国のことであり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指します。すなわち、台湾出身者を中国人としているのが現在の戸籍制度です。

戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」としたのは、昭和39年(1964年)6月19日付で出した法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」という通達でした。このことは政府も、平成23年(2011年)8月19日付で出した菅直人総理の「答弁書」で明確に認めています。

昭和39年といえば、いまから56年も前、アジア初のオリンピックが東京において開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代のことです。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国の関係は大きく変わってきています。

日本政府は、平成17年(2005年)9月に台湾観光客に対するビザ免除を恒久化し、2年後の平成19年(2007年)9月には台湾と自動車運転免許証の相互承認を行い、台湾と中国を区別した対応をしています。

また、平成24年(2012年)7月9日には、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際して「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者を「中国」から「台湾」に変更して明記するようになりました。同時に実施された外国人住民基本台帳でも「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者を「台湾」と表記するようになり、台湾が官民挙げてこの措置を歓迎していることは周知の通りです。

ましてや台湾は、これまで中華人民共和国が統治したことはなく、台湾を自国領と主張するのは中国の政治宣伝以外のなにものでもありません。事実、これまで日本は中国のこの主張を承認したことは一度もありません。これを放置しておくことは、日本は中国が主張する「一つの中国」を承認しているとみなされかねません。

ついては、法務大臣は台湾出身者の人権を守るため、在留カードや外国人住民基本台帳にならい、また入国管理局と民事局の整合性や法務省統計との整合性を図るためにも、早急に民事局長通達を出し直し、台湾出身者を「中国」ではなく「台湾」と表記する措置を講ずるよう要望します。

併せて、ここに私どもの要望に賛同する署名(第18期)137人分を呈します。この賛同署名は、平成23年11月の第1期以来、昨年12月の第18期まで3万8,026人分の署名を要望書とともにお届けしていることを申し添えます。