今年は武漢肺炎こと新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、日台間の姉妹都市や友好都市などの都市間提携はゼロかと思っていたところ、去る11月23日に宮城県栗原市(千葉健司・市長)と台湾の南投県南投市(宋懐琳・市長)が「姉妹都市」を締結しました。昨年11月24日に盛岡市と花蓮市が「友好都市協定」を結んで以来、1年ぶりの提携となります。
ホッとしていたら、今度は12月5日に富山県氷見(ひみ)市(林正之・市長)と高雄市鼓山区(林福成・区長)がオンライン方式で「友好交流都市協定」を締結したという嬉しいニュースが飛び込んできました。
提携のきっかけは、氷見市出身の浅野セメント創業者で高雄港の礎を築いた浅野総一郎だったそうです。
地元紙の北國新聞も、この提携を報じる記事で「氷見市と高雄市は2018年から交流しており、林市長が昨年訪問した際、友好都市締結を提案した。氷見市に見合った区を締結先として探し、人口約14万人で浅野とゆかりがある鼓山区が選ばれた。同区には浅野が開発に関わった市街地の蛤[王馬]星地区や高雄港、セメント工場跡、採石場跡などがある」と伝えています。
年の瀬に入り、来年に希望をつなぐ本当に嬉しいニュースです。心からお祝い申し上げ、下記に、提携を伝える北國新聞と中央通信社の記事、ならびに本誌でも紹介した古川勝三(ふるかわ・かつみ)氏の論考「高雄港の開発に尽力した浅野総一郎」を紹介します。
ちなみに富山県は、射水(いみず)市が台北市士林区と2019年7月9日に「友好交流協定覚書」を締結したのが嚆矢で、氷見市は2件目。一方の高雄市鼓山区は、石川県加賀市と2014年7月8日に「友好交流都市協定」を締結したのが日本の自治体との初めての都市間提携で、氷見市が2件目となります。
この氷見市と高雄市鼓山区の「友好交流都市協定」提携で今年は2件目となり、本会の調査によれば、1979年10月10日の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」提携から96件目の提携となります。
◆台湾・高雄市鼓山区と友好協定 氷見市、コロナ後の誘客期待[北國新聞:12月5日]
◆古川勝三「高雄港の開発に尽力した浅野総一郎」[nippon.com:2020年5月17日]
高雄市鼓山区と富山県氷見市が友好協定 明治時代からの縁を未来へ
【中央通信社:2020年12月5日】
明治・大正時代を代表する実業家、浅野総一郎(1848~1930年)が100年以上前につないだ縁により、南部・高雄市鼓山区と富山県氷見市が5日、オンライン方式で友好交流都市協定を締結した。陳其邁(ちんきまい)高雄市長は、今後100年の友好深化に向けた出発点だと述べ、コロナ収束後の交流促進に期待を示した。
高雄市立歴史博物館などによると、氷見市出身の浅野は日本統治時代、打狗港(現高雄港)や鉄道の建設、セメント会社の設立に尽力し、高雄の近代化を語る上で非常に重要な役割を果たした人物。高雄初となる埋め立て地計画も提案し、同計画に沿って近代的に整備された市街地には水道水や電気、電話などが引かれ、「哈[王馬]星」(ハマシン)と呼ばれる市内有数の繁華街となった。
同館は2018年、浅野総一郎翁資料展示館「帰望郷館」などを高雄港築港・高雄駅建設110周年記念の国際シンポジウムに招待。これを機に交流が始まり、昨年10月には、林正之氷見市長が高雄市政府を訪問。今年2月には同館と氷見市立博物館が友好協定を結ぶなどして親交を深めてきた。
調印式では、陳氏や日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会高雄事務所の加藤英次所長、「全国浅野総一郎友の会」の山崎健代表世話人らの立ち合いの下、林福成(りんふくせい)鼓山区長と林市長が署名した。
陳氏は、高雄が小さな漁村からこんにちの港湾都市になったのも、浅野氏が高雄を中心に南台湾を発展させるよう、台湾総督府の後藤新平民政長官を説得したからだと述べ、台日は時空を超えた深い絆で結ばれていると強調した。