5月20日、山口県議会と台南市議会が「友好交流に関する覚書」を締結しました。コロナ禍の中ですから、締結式はオンラインで行われ、山口県議会の柳居俊学(やない・しゅんがく)議長と台南市議会の郭信良議長が覚書に署名しました。地元紙の宇部日報は、覚書は「教育や観光、経済などでの交流を通して、親睦を深める狙い」と報じています。

日本側の会場となった山口県庁には、村岡嗣政(むらおか・つぐまさ)山口県知事やこれまで台南市と交流を深めてきた「日台友好促進山口県議会議員連盟」の島田教明(しまた・のりあき)会長が立会い、また東京から台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表や同代表処政務部の向明徳部長が駆けつけ、台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処の陳忠正処長も立ち会いました。

一方、台南市議会側には、台南市の黄偉哲(こういてつ)市長や由林炳利・副議長をはじめ民進党、無黨團結聯盟、中国国民党などの議員、また台南市台日文化友好交流基金会の李退之董事長や日本台湾交流協会高雄事務所の加藤英次所長が立ち会いました。

中央通信社は「台南市議会によれば、交流深化の契機が芽生えたのは2020年1月。当時、岸信夫衆議院議員と山口県議会議員らが同市議会を訪問し、談話の中で覚書締結の提案が出たのを機に、双方による協議が続けられていたという」と伝えています。

山口県といえば総理大臣を全国最多の8人も輩出し、なかでも安倍晋三・前総理は台湾との交流に熱心だったことで知られており、台南市議会ニュースによると、今般の山口県議会と台南市議会の「友好交流に関する覚書」締結に祝辞を送ったそうです。

ちなみに、日本初の日台議会間提携は2006年(平成18年)12月19日のことで、石川県議会と台南県議会が「友好交流協定」を結んだことに始まります。このときはまだ台南市と台南県が合併して行政院の直轄市になる前のことで、2010年12月の合併後の2011年10月5日、石川県議会は台南市議会と「友好交流協定」を結び直しています。

本会の調査によりますと、これまでの日台の議会間提携は下記のとおりです。

・2006年12月19日、石川県議会と台南県議会が「友好交流協定」を締結。
・2008年04月16日、神奈川県議会と台北県議会が「友好交流協定」を締結。
・2011年10月05日、石川県議会と台南市議会が「友好交流協定」を締結。
・2017年01月08日、金沢市議会と台南市議会が「友好協定」締結。
・2018年06月08日、和歌山市議会と高雄市議会が「友好交流覚書」を締結
・2018年06月13日、京都市会と台南市議会が「友好交流協定」を締結。
・2018年07月06日、山梨県議会と高雄市議会が「友好交流促進覚書」を締結。
・2021年05月20日、山口県議会と台南市議会が「友好交流に関する覚書」を締結。

石川県議会の結び直しを除くとまだ7件。日台の都市間提携は2020年12月5日に富山県氷見市と高雄市鼓山区が「友好交流都市協定」を結んだことで100件(本会調査)の大台に乗っています。

都市間提携は知事や市長など首長の考え方が大きく左右しますので、日台交流に熱心な首長ですと任期中に複数結ぶこともできますが、議会提携は議長の裁量幅はあまりなく、政党間の考え方の違いもある上に、相手方の議会人、それも有力議員との交流がなければ実現はなかなか難しいようです。

当時の石川県には、現加賀市長の宮元陸氏が石川県議の折に県議会内に「日台友好促進石川県議会議員連盟」を設立して台南県や台南県議会との交流を進めました。ちなみに宮元氏は加賀市長に就任後、台南市や桃園市など4つの自治体と都市間提携を結んでいます。

今般の山口県も、覚書締結式には「日台友好促進山口県議会議員連盟」から島田教明会長、副会長の友広巌(ともひろ・いわお)議員と先城憲尚(せんじょう・のりなお)議員、幹事長の平岡望(ひらおか・のぞむ)議員の5名が立ち会っていることからも分かりますように、議会内の「日台友好促進山口県議会議員連盟」が交流の推進役を担ってきたようです。

ちなみに、日台友好促進山口県議会議員連盟は2013年10月4日に、県議47名のうち共産党(2名)を除く45名が参加する超党派の議連として設立され、議連の初代会長には当時も議長だった柳居俊学議員が就任しています。また、岸信夫・衆議院議員は2020年1月13日に台南市を訪れて黄偉哲・台南市長などと交流しましたが、このときに同行したのが島田教明議員を会長とする日台友好促進山口県議会議員連盟のメンバーでした。

やはり、台湾の重要性と日台交流の意義を知る、推進力のある議員と議連がないと議会間提携はなかなか難しいようです。

その点からも、山口県議会が台南市議会と今回の締結に至ったことは素晴らしいことで、このコロナ禍の中でよくぞ漕ぎつけたものとに心から祝意を表します。

駐日台湾大使に相当する台北駐日経済文化代表処代表が協定締結に立ち会うことは異例のことで、謝長廷代表がわざわざ山口まで駆けつけたことがそれを証しているように思います。

下記に、台南市議会とテレビ山口のニュース、および宇部日報の記事をご紹介します。

◆台南市議会:首度視訊締盟 臺南市議會與日本山口縣議會結為友好議會[5月20日]


県議会が台湾の台南市議会と友好交流に関する覚書

【宇部日報:2021年5月21日】

◆教育や観光、経済などで

県議会は20日、台湾の台南市議会と友好交流に関する覚書を締結した。教育や観光、経済などでの交流を通して、親睦を深める狙い。

締結式は台南市議会議長や、同市長とオンラインで行われ、県議会議員や県の関係者は県庁で式に臨んだ。台湾の大使館に相当する台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(東京)が訪れ「友好関係が新しい段階を迎えた。各分野で協力を深め、共に発展することを祈念する」とあいさつ。5年前に現地を訪れたことがある柳居俊学議長は「文化の都市で、農産物も素晴らしかった。コロナ収束後に改めて訪問し、親善を尽くしたい」と語った。

締結の記念に、山口市の伝統工芸である大内塗の花入れと、台南市のコイの形をした漆器を交換した。

台湾との交流促進のため、2013年に設立された「日台友好促進県議会議員連盟」(会長・島田教明議会運営委員長)の活動の一環。

終了後は、台湾産パイナップル140個の寄贈もあった。県内の特別支援学校の給食などで提供される予定。