2003年5月11日、台湾でも「母の日」であるこの日、中華民国の名を改め、「台湾」に名を正そうという「正名運動」が台湾の首都・台北市で行われるはずでした。

しかし、折からのSARS大流行により中止を余儀なくされ、9月6日に延期されることになってしまいました。日本からも正名運動参加のため、準備を進めておりましたが、中止の報に接し、急遽東京で「511正名運動」を開催すべく準備いたしました。

日本では、台湾人が所持する外国人登録証の国籍欄に「中国」との表記がなされ、台湾人の尊厳を傷付けています。この国籍表記を「中国」から「台湾」に正名することを求めるとともに、SARSに苦しむ台湾を応援するべく「511台湾正名運動」は300名余りの参加者を集めて新宿で開催されました。

また、翌日には代表者が法務大臣を訪ね、一刻も早く国籍表記を改めるよう、要望書を提出しています。


外国人登録証明書における台湾人の国籍表記改正を求める要望書

日本に暮らす台湾人の場合、常時携帯を義務づけられている外国人登録証明証書(外登証)の国籍欄は、「台湾」ではなく「中国」となっている。これは、中華人民共和国の国民と同じ表記である。このため、台湾人は中華人民共和国の国民と誤解されることで不快感や屈辱感を味わい、日常生活に不必要な障害がもたらされることが極めて多い。

そこで、法務省や同省がその交付を委託する市区町村に対し、多くの在日台湾人が国籍表記を「台湾」等と改めるよう求めているが、今のところ改正の兆しは見えない。

この問題について、法務省は、中国の表記は中華人民共和国という国名を意味するものではなく、政府が国家承認するところの中国であり、そこには台湾も含まれる、という見解である。ただし、その所持者が中華人民共和国出身者の場合は中華人民共和国も同時に意味する、と説明している。

しかし、この見解については、以下、5つの問題がある。

第一に、中国という表記は中華人民共和国という国名を意味していないというが、それは当を射ていない。なぜなら、台湾の台北市出身者の場合、外登証国籍欄に併記される住所や出生地の欄は「台湾省台北市」となっている。しかし、台北市は台湾の政府直轄市ゆえに台湾省に含まれないため「台湾省台北市」という行政単位は存在せず、中華人民共和国が規定する行政単位と一致している。即ち中国の表記は、台湾を自国領と主張する中華人民共和国の国名以外に解釈できないからである。

第二に、政府が、台湾をも含む中国という国家を承認したという根拠は、歴史的事実としてはなはだ曖昧である。中国を国家承認したというなら、その根拠を明らかにして、日中共同声明との整合性を説明すべきであろう。

第三に、日本政府は、台湾がその領土の不可分の一部と主張する中華人民共和国の主張を承認していないことは日中共同声明にも明らかなことで、諸外国と同様、外登証において台湾と中華人民共和国の出身者を明確に区別することは、主権国家として当然の合理的な措置といわざるをえない。

第四に、外登証における台湾人の国籍表記が中華人民共和国のそれと区別がつかない以上、このような日本の措置は不合理と言わざるをえない。少なくとも米国、英国、フランス、ドイツなど先進主要国の外登証では、台湾人の国籍表記は台湾となっている。日本もこれらに習って実際に即した表記に改めるべきことは、国際社会の一員として自明のことである。

第五に、現行表記が著しく台湾人の人権を損なっている事実に鑑みれば、早急に改正することで台湾人の人権を守るべきは法治国家として当然の対応である。

以上のことから、台湾出身者の外登証の国籍欄表記を「中国」から「台湾」へ改正し、中華人民共和国出身者と台湾出身者を区別するよう強く要望する。もし速やかに適切な処置が執られないならば、われわれはこの件の実現を、法的手段も視野に入れてあくまでも追及するものである。

平成15年(2003年)5月11日

511台湾正名運動日本デモ実行委員会
委員長 陳 明裕

法務大臣  森山 眞弓 殿

当日配布されたチラシはこちら