「台湾独立行動に反対」

新華社電によると、中国訪問中のパウエル米国務長官は25日、北京の人民大会堂で胡錦濤国家主席、温家宝首相らと会談し、「台湾独立に向かういかなる行動にも反対する」と表明した。

パウエル長官は「台湾独立」に関して「不支持(not support)」よりも強い「反対(oppose)」を示し、対中関係重視の姿勢を鮮明にした。

ただ、同日記者会見した長官によると、米側による台湾への武器売却について、中国側は反対したが、長官は「米国は台湾関係法で台湾の自衛能力整備を可能にした責任もある。中台双方への責任のバランスを注意深く取る政策を説明した」と述べた。論議は事実上平行線をたどったとみられる。【一連の報道を本会事務局でまとめました】

台湾は「主権独立国家」 陳総統、米国務長官に反発

台湾の陳水扁総統は26日、台北市内の総統府で韓国の金泳三元大統領と会談した際、「台湾が中国に隷属していない主権独立国家だということはまぎれもない事実だ」と強調した。パウエル米国務長官が前日、香港のテレビとのインタビューで「(台湾は)国家としての主権を享受していない」と表明したことに反発した発言とみられる。

また、台湾の陳唐山外交部長(外相)は、国務長官が25日のCNNテレビとのインタビューで中国と台湾の目指すべき方向として「再統一」との表現を使ったことなどに関して「(台湾に対する)米国のこれまでで最も厳しい言葉だ」と述べた。26日の立法院(国会)での発言として中央通信が伝えた。

同通信によると、外交部の高英茂政務次長は同日、国務長官発言について外交部が米側に遺憾の意を伝えたことを明らかにした。(2004/10/27 共同通信)

TaipeiTimesは27日付の社説でパウエル国務長官の発言を取り上げた。社説は、「お粗末な言葉に乗っかって政策変更するの?」と題され、次のように述べている。

「百歩譲って、パウエル長官の言うように“台湾は国家としての主権を有していない”としよう。しかし、その発言は必ずしも、台湾がかの国(中国)の主権下にあることを意味しない。あたかも、1952年に締結されたサンフランシスコ平和条約の中で、台湾の帰属が明記されていないのと同じように、今回のパウエル長官の発言も、“台湾は中国に帰属する”とは捉えられないのだ」と主張した。

また、「パウエル長官の言う“中国”というのは、中華民国なのか中華人民共和国なのかよく分からんが、もし北京政府のことだとしたら、台湾はいつ何時どこで北京政府もしくは米国政府との条約に署名したのか教えてほしい。米国政府の言っていることはメチャメチャだ!」と米国を非難した。

大陸委員会はパウエル国務長官の発言を楽観視

大陸委員会の呉主任委員(大臣に相当)はTaipeiTimesの取材に応じ、パウエル長官の発言後、政府内閣僚級で討議するなど、対応に追われたが、今後も台湾政府として政策変更する意図はないとし、長官の発言に対して楽観視していることを示唆した。

また、協議の中で、陳総統は、「2300万台湾人民の同意がある限り、5月20日の就任式で表明した政治的関係(中国とは別の存在)を変更する意図はない」と明言したと言う。

陳唐山・外交部長は立法院で国民党の章孝嚴・立法委員の質疑に立ち、「今まで、米国は台湾に対して、(米国を)驚かせるようなことはしてくれるな、と再三言って来た。それに応えて、台湾も米国との信頼関係を保ってきたのに、今回の発言はお互いの信頼を根底からぶち壊す出来事だ」と憤りをにじませた発言をした。

また、他の立法委員の質疑に答え、「通常、米国高官が外遊の際に台湾に関連した発言をする際は、必ず台北駐米代表處(駐米大使館に相当)の情報収集によって把握しているのが通常だ。しかし、今回そのような情報は全く得られなかった。だから“驚き”なのだ」とも述べた。パウエル国務長官が、「中国と台湾の“統一”」と発言したのは、「“解決”」の誤りだと米国政府に質す予定としている。(Taipei Times報道)

パウエル国務長官の発言により、総統府内も混乱したが、陳水扁総統は予定通り、3度の国賓接遇をこなした。国賓の中には、韓国前大統領の金泳三氏も含まれている。陳総統は、各国賓との会談の中でも、「台湾は絶対に一つの主権国家である。今後も、台湾は主権国家の立場で、国家としての主権・尊厳・安全保障を前提に両岸対話を進めていく」と述べた。

陳唐山外交部長(外相に相当)は、立法院での質疑に立ち、陳総統と同様に、「台湾は明らかに独立した主権国家」と述べ、パウエル国務長官の発言の真意を質すため、外交筋を通して米国政府に照会中と発言した。また、「もしパウエル長官の発言が、文言通りのものであれば、台湾政府は絶対に受け入れられない」と述べた。(自由時報報道より)

米国国務省から出された一連のプレスリリースは下記の通り

香港フェニックスTVによるパウエル国務長官のインタビュー(抄訳)

CNNによるパウエル国務長官のインタビュー(抄訳)

北京訪問を終えてのパウエル国務長官のプレスリリース(抄訳)

パウエル発言後の米国務省・エレリ報道官定例会見10/25(抄訳)

パウエル発言後の米国務省・エレリ報道官定例会見10/26(抄訳)

中国訪問中のコリン・パウエル米国務長官が、「台湾と中国との統一」や、「台湾は主権を持つ国家ではない」などの発言をしたことに対し、台湾国内はもちろん、国際社会に激震を走らせている。

米国務省も、噴出している「米国が政策変更か?」との憶測に、「政策の変更ではない」とエレリ報道官が会見を開くなど、事態の沈静化に躍起となっている。

ただ、米国メディアの反応は鈍く、パウエル長官が提示した台湾との対話再開を中国が拒絶した旨に主眼を置いた報道がほとんどであり、「パウエル長官が、台湾独立に反対と発言」との見出しを掲げたのは、確認出来たメディアでは、人民日報英文版のみだった。(2004/10/27)

「パウエル発言、広がる波紋」 「一つの国家で一貫」中国評価/台湾反発「主権独立国家だ」

訪中したパウエル米国務長官が、香港のテレビ局とのインタビューで台湾の「国家主権」を否定した発言が、その後も波紋を広げている。武器売却問題で米政府の対台湾政策に懸念を強めていた中国政府は27日、発言を歓迎。これに対して、台湾の陳水扁総統は発言に激しく反発した。

パウエル米国務長官が25日、香港・フェニックステレビに対して「台湾は独立国家でなく、国家主権を備えていない」と述べたことで、中国国務院(内閣)台湾事務弁公室の張銘清報道官は、27日の記者会見で、「米国は“一つの中国”を原則とする政策で一貫している」と高く評価した。

パウエル長官は胡錦濤国家主席ら中国要人との会談後、中国側に中断している中台対話の再開を強く促す一方、「一つの中国」など既存の対中政策に変更がないことを強調していた。

一方、台湾の陳水扁総統は26日夜、台北で金泳三・元韓国大統領と会談したなかで、「台湾が主権独立国家ということは紛れもないない事実だ」と、パウエル長官発言に強く反発した。27日付の台湾各紙が一斉に伝えた。

パウエル長官のインタビュー発言をめぐっては、このほか中台双方が目指すべき方向として「平和“統一”」との表現を使ったことも、台湾側で反発を招いていた。この部分に関して、米国の台湾代表部に当たる米国在台協会台北事務所のダグラス・パール所長は27日、台湾の陳唐山外交部長(外相に相当)と会談した中で、「国務省は既に(発言内容を)『平和“解決”』と修正した」と伝えた。会談後に陳部長が明らかにした。(2004/10/27 産経新聞)

◆パウエル国務長官の爆弾発言に対し、台湾各紙は一斉に発言と、それに対する各界の反応を報道。

27日の米国国務省定例会見では、リチャード・バウチャー報道官が会見に立ち、発言の真意を尋ねる質問などに答えた。(2004/10/28)

◆中華人民共和国・国務院台湾事務弁公室の張銘清報道官は会見を開き、米国国務省がパウエル長官の発言を、事実上修正したことに対し、「聞いてない」と煙に巻いた。中国政府は当初、パウエル長官の発言を大歓迎していた。(2004/10/28 人民日報)

◆パウエル米国務長官は、訪米中の中国人民解放軍・梁大佐と会談した際、台湾問題が議題に上り、「米国は”一つの中国”政策を変更する意図はなく、今後も3つのコミュニケと台湾関係法に基づいて政策遂行すると」改めて強調した。国務省定例会見で、リチャード・バウチャー報道官が記者の質問に答えた。(2004/10/29 AFP)

◆渦中のパウエル長官は、27日に米国でCNBCのインタビューを受け、「台中の平和的”統一”」の発言は、「台中問題の平和的”解決”」の意味だったと話し、事実上、発言を撤回・修正した。(2004/10/29)

◆在台米国協会(駐台米国大使館に相当)前では、パウエル国務長官の発言に抗議するデモ隊が取り囲み、パウエル長官の写真を踏みにじるなど、一時混乱が続いた。パウエル長官の写真には「LP(台湾語で卑猥な言葉)」と大きく朱書きされていた。