帝国書院は「台湾は中華人民共和国の領土だ」と明言 去る2005年4月5日、中学校教科書の検定結果が発表されて以来、特に新しい歴史教科書をつくる会(八木秀次会長)の理事たちが執筆する『改訂版 新しい歴史教科書』と『新訂版 新しい公民教科書』の記述内容をめぐっていろいろ取りざたされています。

では、話題になることがほとんどない中学生が使っている「地図帳」では、いったい台湾をどう扱っているのか、本会の永山理事が調査したところ、驚くべき事実が発覚しました。なんと、台湾は中国の領土の一部にされているのです。

今後、本会に「教科書問題委員会」を設置し、地図帳ばかりでなく、歴史や地理の教科書で台湾がどのように記述されているのかを徹底追究していく予定です。その成果は、本会メールマガジン『日台共栄』や機関誌『日台共栄』で発表してまいります。ご期待ください。

また、台湾に関することで、教科書のこの記述がおかしいとお気づきの場合は、編集部までお寄せいただきますようお願いします。もちろん、教科書以外の単行本などの記述でも結構です。


台湾に関する社会科地図の誤り

日本李登輝友の会理事 永山 英樹

中華人民共和国の大連日本人学校の社会科副教材で、中国と台湾を異なる色で表記した地理教材が大連税関に没収された。「1つの中国」の原則に反して台湾を別の国として扱ったことが問題になったのだ。

しかし、台湾が中国に帰属しないことは厳然たる事実であり、これを「身勝手」と感じた日本人は多かろう。だが実は国内では、こうした身勝手な主張を反映したような教科用図書が検定を通過し、堂々と使用されているのだ。

例えば、中学校の社会科地図には東京書籍(以下「東書」と略)の『新しい社会科地図』と帝国書院(以下「帝国」と略)の『新編中学校社会科地図』の2点があるが、ともに台湾と中国との間に国境線が引かれておらず、「中華人民共和国」の国名表記の下に台湾が置かれている。

また、東書版は省や自治区などを色分けした「中国の行政区分」という地図に、帝国版は「中国の資料図」の項目での中国地図に、それぞれ台湾を包含させている。東書版の方の出典は中国発行の地図帳だ。帝国版について同編集部に問い合わせたところ、「台湾は中華人民共和国の領土だ」との説明を受けた。

2社の編集部からは、台湾・中国間に国境線を表示しないのは、日本政府の「一つの中国」の主張に沿ったものだと説明された。「1つだから、台湾は中国だ」だという訳だろう。

だが台湾は現実的にも法的にも、中国に帰属しない。日本は昭和27年(1952年)4月28日発効の「サンフランシスコ平和条約」によって台湾に関する主権を放棄したが、かといって台湾の新たな帰属先が決められた訳ではなかった。

日本はまた、同47年(1972年)9月29日の「日中共同声明」において、台湾は中国の領土だとする中国の「立場」を「十分理解し、尊重」すると表明したが、中国領だとは承認しなかった。なぜなら日本はすでに台湾の主権を放棄しており、その帰属先は「中国だ」と、今さら承認できる立場になかったからだ。

たしかに日本政府は「1つの中国」政策をとっているが、それは中共、国府のうちいずれか1つの政府しか承認しないという政府承認の問題であり、台湾という領土に関する問題ではないのである。その点、「1つの中国」を台湾領有の原則ととらえる中国の主張とは異なるが、2社の地図は結果的に、中国の見解に従っていることになりそうだ。

誤った知識を与えられる生徒たちの損害はもちろん重大である。広く国民の関心を求めたい。