台湾に、台湾に関する書籍など約3万冊、日本語の文献も豊富にそろえている図書館がある。それが台北市にある通称「台湾史料センター」と呼ばれている呉三連台湾史料基金会の図書館だ。
ここには「三田文庫」と呼ばれる一角があり、東京・小平市在住の台湾史研究家・三田裕次氏が1993年以降に日本で出版された台湾関係書籍(単行本)のほぼ全分野を蒐集したコーナーだ。
因みに、呉三連台湾史料基金図書館の「呉三連」とは人名で、本文にもあるように、日本の領台直後の明治32年に生まれ、日本に留学して一橋大学を卒業、1951年に台北市初代市長に選出された人物。
台北に行ったら一度は訪ねてみたい知的スポットであり、日本からの留学生などにとっても大助かりの知的宝庫である。ここに台湾の情報誌「な~るほど・ザ・台湾」(2004年9月号)に掲載された記事をそのまま紹介する。
日本語の台湾本を読むならやはり台湾で
台湾についてもっと知りたいと思っても、中国語の本を読むのは骨が折れておっくうだという方、南京東路沿いにある呉三連基金会の図書館をご存知ですか?
ここは一名「台湾史料センター」と呼ばれ、台湾に関する書籍や地図、ビデオ 、CDなどを所蔵し、一般に開放している図書館である。所蔵書籍は3万冊ほどで、小規模ともいえるが、台湾史に特化しているので、中身は濃い図書館である。もちろん台湾で発行された中国語の書籍が大半を占めており、中国で発行された書籍も目立っているが、日本語による書籍も相当数含まれている。
閲覧者が自由に見られる開架式の書棚で、日本語の書籍のコーナーを見ると、台湾をテーマとした一般書から専門書までが内容ごとに並べてあり、およそ1,500冊ほどあると見た。世界の図書館では、これほど台湾に閲する書籍を1ヵ所に集めたところはないと思われる。日本で発行された台湾についての書籍を全部そろえる気で、今も蒐集が続けられているという。ざっと棚を眺めたところ、筆者の知っている台湾関係の本のいくつかが見当たらなかったが、それらもやがて書棚に並ぶのだろう。
これ以外にも、雑誌類がいくらかあり、参考図書のコーナーを見ると、日本統治時代に発行された辞書など、日本語によるものが思ったより多く、興味深い。
さらに、「三田文庫」と呼ばれるひと棚がある。これは著名な巷間の台湾史研究者である三田裕次氏が寄贈したもので、台湾に関する記述を含んだ一般書籍が並んでいる。小説やエッセイなど肩の凝らない本も多数含まれており、台湾に関する記述の部分に付箋が付してあるのが興味深い。先の台湾意識に関する日本語書籍も、三田裕次氏が蒐集を続けているものという。
日本語による書籍は、台湾史研究には日本の影響や日本からの視点の検討が一面には欠かせないため、三田氏が研究者に読んでもらいたいと蒐集しているものだが、台湾に関する認識が進むなら、一般人の利用も、当館の目的に沿ったものといえる。
呉三連基金会は、新聞記者、社会運動家、戦後初の民選台北市長、実業家などとして台湾の人々のために活躍した呉三連氏(1899~1988)の遺志を継ごうと、御子息や文化人の協力のもとに設立されたものである。
■所在地 台北市南京東路3段215号10楼
■交通 捷運木柵線「南京東路」下車徒歩5分
■開館 月~金曜 9:00~16:30
■電話 02-2712-2836/02-2514-0640
■FAX 02-2717-4593