~許大使が日台関係について縦横に開陳し、台湾の自由民主への自信を披瀝~
秋晴れの10月21日午後、本会神奈川県支部(石川公弘支部長)と高座日台交流の会(佐野た香会長)の共催により、台北駐日経済文化代表処の許世楷代表(駐日台湾大使に相当)を 講師に「日台関係の現状と展望」と題した時局講演会が開かれた。
窓から横浜港が見渡せる、中華街にほど近い神奈川県民ホールには、県内会員をはじめ山梨県や千葉県などから約200名の人々が参加した。産経新聞や東京新聞、大紀元時報などのマスコミも取材に駆けつけた。本部からは柚原正敬事務局長と冨澤賢公・『日台共栄』 編集委員が出席した。
石川公弘支部長の開会の挨拶後、許世楷大使が会場から沸き起こった盛大な拍手とともに登壇、日台関係について縦横に語り、講演後に質疑応答をおこなった。
まず、李登輝前総統と陳水扁総統が「日台関係は断行以来、最良の状態にある」と述べていることを紹介し、また、長年、台湾人の外国に関する世論調査をおこなっているある台湾の雑誌の最近の世論調査を紹介し、台湾のトップばかりではなく、国民感情レベルでも日台関係が良好であることを証した。
この雑誌では「あなたがもっとも敬服している国はどこですか?」「あなたがもっとも旅行に行きたい国はどこですか?」「移民したいとすれば、あなたがもっとも行きたい国はどこですか?」という三項目の質問をし、これまでいつも第一位は米国だったが、しかし今年は日本が第一位となり、米国が二位となって逆転したという。
許世楷大使はこの原因を、去年、日本が台湾の観光客にノービザの措置をとったことや日米安全保障協議会2プラス2の共同声明で、日本は中国が武力で台湾を併合することに反対を表明したことなどを挙げた。
さらに、台湾が日本と親しいのは、基礎として両国に特別な歴史的、地理的関係があるからだとして、日本留学時代にパスポートを取り上げられて帰国できなくなった際に、台湾からもっとも近い与那国島へ渡って故国を偲んだ体験を披露した。
このとき、夜、宿舎で休んでいると、どこからか台湾語が聞こえてくるので行ってみると、何と飲み屋で台湾の漁師たちが話していたという。昼は境界外で操業し、監視船がいなくなった夜になって与那国島に上陸して飲んでいたのだという。翌日になって雑貨屋をのぞいてみると台湾製品がたくさん置いてあり、台湾の人々も与那国の人々も、パスポートなしで自由に行き来しているのを実見したそうである。
許世楷大使は横浜の華僑と言われる人々も会場に来ていることに気づき、台湾が90年代に民主化してからは自由、民主という価値観および制度を基とするようになり、日本と同じ自由民主の国だからお互いに安心していられることを説明し、このような自由民主の台湾を一党独裁の中国に併合させるわけにはいかないと強調した。
そこで、67%の人が「再び生まれるとしたら中国人に生まれたくない」と答えている中国人のインターネットによる世論調査を紹介、「幸福な人生が送れない」あるいは「人間としての尊厳がない」という理由も併せて紹介したのだった。
さらに、台湾で行われている陳水扁総統罷免座り込み運動について触れ、この運動をやっている人々が「天安門の民主化運動と我々がやっている罷免運動は同じだ」と天安門事件の民主化運動になぞらえて台湾人の歓心を買おうとしていることに対し、民主化運動の主役の一人であった王丹が最近「その時自分たちは自由民主のない一党独裁政治に対して民主化を主張したのであり、今、台湾で座り込みの人たちは自由民主政治の下で、制度から外れた手段によって民主政治を破壊しようとしている」と批判していることを紹介した。
それゆえ、この罷免運動は総統を罷免できないと分かってやっている、12月の市長選挙や来年の立法委員選挙、2008年の総統選挙をにらんでやっている選挙運動だと喝破した。
最後に、「私は台湾の自由民主政治に自信を持っている」とし、タイのクーデター事件と比較して、陳水扁総統が座り込み中に南太平洋諸国を歴訪して無事に帰ってきていることや、座り込みで一人の死傷者も出ていないことを挙げ、「自由民主は世界史の流れの主流であり、台湾の民主化はタイよりもはるかに落ち着いている。台湾は着実に民主自由の道を歩みつつある」と講演を締めくくった。
質疑応答では、陳水扁総統が台湾版新幹線の開通式典に小泉前首相を招待したことについて、開通式が定まっていないので、再度、招請状を出す予定であることを明らかにし、また、馬英九氏が総統になった場合は、アメリカ重視となり、日本との関係がぶれてくるだろうと懸念を表明した。
なお、講演会後に中華街の「富筵」(ふえん)で開いた懇親会には児玉神社の山本白鳥宮司など約30名が参加、横浜の夜はおおいに盛り上がった。ちなみに、この「富筵」の経営者も講演会に参加していた。
本会メールマガジン『日台共栄』第391号より転載