立法院(国会)選挙を1月12日に控える台湾で、民進党政権のスポークスマン、謝志偉・新聞局長(閣僚級)が自作のラップを武器に選挙応援に大活躍している。連日のように選挙集会に呼ばれ、陳水扁総統と並んで最も拍手が多い弁士であり、盛り上げ役だ。選挙戦を優位に進めるライバル国民党にも思わぬ「脅威」の登場となっている。
台北での選挙集会。党や政権の幹部の演説を眠そうに聞いていた聴衆が「次は謝志偉です!」の司会の紹介で目を覚ました。ビートのきいた音楽が流れ、会場隅で遊んでいた子供も演台に駆けよる。ダンサーと一緒に登場した謝局長自作のラップで会場は最高潮に。
「台湾は宝島~みんなの助けで立法委員は全員当選~総統も党中央もある~故郷は台湾」
ラップの題名は「国民党は金返せ」。同党が独裁時代に獲得した金を取り戻そうというもの。踊るスポークスマンを苦戦気味の民進党の候補が放っておくはずがない。「どうしても」と直訴する候補も多く、先週は4箇所、今週は9箇所の応援に入るというハードな日程だ。
国民党陣営では思わぬ伏兵の登場に「新聞局長が選挙応援とはいかがなものか」と非難するが、謝局長は「勤務時間外の個人的な活動」。
52歳の謝局長は元は大学教授でドイツ文学博士。陳水扁政権でドイツ代表(大使に相当)に起用され、今年5月に新聞局長に抜擢された。
謝局長は人気の秘密を「ラップの作詞は文学や詩に通じる。選挙応援と大学の授業は似ている。どちらも聴衆の雰囲気をつかみ一緒にハイになるのが大事」と話す。
(2007年12月26日付・朝日新聞)