金沢市出身の八田與一技師が、日本統治時代に台湾南部で建設した烏山頭(うざんとう)ダム工事の作業風景を収めた映像が見つかり、八日までに同市の金沢ふるさと偉人館が確認した。工事の様子を収めた映像が見つかったのは初めてで、同館は二十一日の「八田與一百二十二年生誕祭」(北國新聞社後援)で映像を公開し、功績をたたえる。
映像は「幸福の農民」というタイトルで、約二十分間。撮影は「台湾教育会」となっている。烏山頭ダムの基礎部分の工事などが収録され、汽車が煙を上げて走り、ダム工事に使うために運び込まれた土砂が荷台から勢いよく落ちる場面など、当時の様子が生き生きと伝わってくる。
収録日時は不明だが、同館は、八田技師が手掛けた烏山頭ダムと水路網で構成されるかんがい施設「嘉南大(かなんたい)しゅう」が一九三〇(昭和五)年に完成していることから、大正末期から昭和初期にかけて撮影されたとみている。音声はなく、現在のところ、八田技師の姿は確認できていないという。
映像は、八田技師を題材にした長編アニメーション映画を製作中の虫プロダクション(東京)からふるさと偉人館が借り受け、確認した。映画は今夏公開予定で、製作費一億五千万円を投じ、アニメ版「鉄腕アトム」などを手掛けた石黒昇氏が監督を務める。
同館は八田技師の百二十二回目の誕生日にあたる二十一日の生誕祭で映像を公開する。アニメの原作者である財団法人全国建設研修センター(東京)の緒方英樹氏による記念講演やダム工事の写真展を開き、台湾政府から八田技師に贈られた褒賞も披露する。
松田章一館長は「映像が残っていたことに驚いている。製作中のアニメ映画も見ごたえのあるものになるだろう」と話している。