台湾紙は民進党の敗因を、陳水扁政権8年間への失望と経済不振、20代若者のイデオロギー離れが要因と分析。現に、民進党が票田としていた台南・嘉義・高雄でも惨敗した。
日本の主要紙に掲載された社説は下記の通り。
【産経新聞・主張】台湾政権交代 民主体制の継続発展を 東アジア変化への備え必要
注目の台湾の総統選挙は中国との関係強化を掲げる野党、中国国民党の馬英九・元台北市長が、台湾生まれの与党、民主進歩党(民進党)の謝長廷・元行政院長(首相)を破り、8年ぶりに政権を奪回することとなった。
戦後の台湾を50年以上支配し、いまも外省人(中国大陸系)が党幹部に多い国民党が政権を奪回することで、台湾は徐々に中国寄りに変わる可能性もある。
中台が接近すれば、東アジア情勢にも大きな影響を与える。李登輝前総統時代から20年近く続いた台湾の親日路線にも微妙な変化をもたらす可能性がある。
台湾の民主主義体制の継続発展を願うと同時に、日本政府には台湾の政権交代で生まれ得る地政学的変化に、政治、外交、経済、安全保障など幅広い観点から十分な備えを行うよう求めたい。
今回の選挙は、2000年の総統選挙で国民党を破り、初の政権交代を実現して以来、2期8年間続いた陳水扁・民進党政権への審判でもあった。
謝氏は選挙直前に起きたチベット騒乱などを追い風に、激しく追い上げたが、及ばなかった。イデオロギーより経済再生を前面に出した馬氏が支持された形だ。馬氏が打ち出した台湾化路線も奏功したようだ。
≪陳・民進党政権に失策≫
民進党の敗因は多い。8年前、民進党は総統を獲得したものの、議会は野党が多数を占め、権力のねじれ現象が続いた結果、政治、経済の混乱を招き、政権の責任が問われたことが大きい。
その過程では、立法院で過半数を獲得するチャンスがあった04年末の立法委員(国会議員)選挙で、党の準備不足から敗北したことも失策だった。今年1月の立法委選挙での大敗もその延長線上にある。民進党内の派閥間の対立が、結束を弱める原因ともなった。友党だった台湾団結連盟との連携、協調にも失敗した。
中国政策や台湾の将来を決める基本政策で、陳総統の路線が左右に揺れたことも選挙民の信頼を失わせる結果となった。前回選挙で効果があった台湾人意識(アイデンティティー)への訴えも、馬氏の台湾化路線もあって、今回はあまり力にならなかった。
従来、民進党支持が多かった20歳代の若年層がイデオロギーに無関心となり、民進党離れが進んだとも指摘された。
選挙直前に勃発(ぼっぱつ)したチベット騒乱は、中国の脅威を指摘してきた民進党にとり、絶好の追い風とみられたが、中国政府の徹底した情報統制もあり、十分に生かしきれなかった。投票2日前になって表明された李前総統の謝氏支持も及ばなかった。
一方、馬氏の勝因は、台北市長時代からの個人的人気に加え、党長老らの反対を押し切って掲げたといわれる台湾主体の台湾化路線が有権者の安心感を誘ったといえる。「台湾を愛する12項目建設」計画や、中国と台湾の「共同市場」構想などが、経済に不満を持つ層に期待を抱かせた。
「統一しない」「独立しない」「武力行使しない」の「3つのノー」政策も馬氏の柔軟路線を印象づけるのに役立ったようだ。
≪国民党の反日には懸念≫
だが、馬氏の今後は決して安泰ではない。馬氏の掲げた台湾化路線は、今後の中国との交渉のなかで、どこまで維持できるか。後退すればたちまち、台湾への裏切りとして住民の反発を招こう。
中台「共同市場」構想も、「中台統一の“一中市場”であり、中国の安い労働力や農産物を台湾に招いて、台湾経済を破滅させる」という謝氏らによる批判をどう克服するか、難問山積だ。
なによりも、台湾の民主化の行方が気になる。馬氏は、民主化時代に進んだ台湾の歴史見直しや正名運動(中国や中華を台湾に変える運動)にも異論を唱えたことがある。国民党内の本土派との主導権争いも表面化しよう。
日台関係にも不安が残る。馬氏は「自分は反日ではない」と強調するが、個人より国民党の体質として残っている反日には懸念を抱かざるを得ない。馬氏はいまも、尖閣諸島は中華民国の領土だと主張する。台湾が尖閣問題で中国と対日共闘するようなことがあれば、日台関係は最悪となろう。
台湾は日本の生命線でもある。その台湾の変化に、従来以上の関心を持ち続けていきたい。
【読売新聞・社説】台湾総統選 住民は対中融和を選択した(3月23日付・読売社説)
野党・国民党の馬英九・前主席が、与党・民進党の謝長廷・元行政院長に大差をつけ、台湾総統に当選した。
8年ぶりの政権交代である。国民党総統の誕生は、台湾住民が中国との融和路線を通じ、実利を求めたことを意味する。
総統だった李登輝氏の下で、1990年代から始まった民主化=台湾化路線は、今後、一時的な後退を余儀なくされよう。
住民の間に台湾人意識が強まる中、大陸出身の馬氏が当選したのは、経済不振をはじめ民進党政権の失政によるところが大きい。
陳総統夫人や娘婿ら一族・側近たちの間で相次いだ汚職・腐敗に対して、有権者は強い失望感を示していた。
独立志向を強める陳水扁総統は、対中強硬路線に固執し、中国との交渉のテーブルに着くことすらできなかった。
陳政権の2期8年の間、中国は目覚ましい経済成長を遂げた。地理的にも文化的にも近い台湾が、巨大な大陸市場の恩恵を十分に受けていない、といった不満が高まっていた。
馬氏は選挙戦中、対中関係について、〈1〉中国とは統一しない〈2〉台湾は独立しない〈3〉(中台間の)武力行使はしない――と、住民の大多数が望む現状維持に向けた方針を打ち出した。
「一つの中国」の立場ながら、「台湾の前途は、2300万人の台湾住民が決める」と、人口の85%を占める台湾出身者に歩み寄る姿勢も示した。こうした方針が、今後も維持されるのかどうか。
馬氏は一方で、天安門事件やチベット武力弾圧を厳しく批判する人権重視を打ち出している。中国は、こうした態度に警戒心を抱き、これまで一度も馬氏を招待していない。中国との関係はどう進んでいくのか。
馬氏の課題は、今年初めの立法委員選挙で圧勝した国民党が安定多数を占める立法院と連携しながら、不振が続く台湾経済を立て直すことだ。
馬氏が提唱する中国との共同市場の創設には、中国も呼応してくるだろう。だが、あまりに一体化を急いだりすると、台湾住民から強い拒否反応も予想される。
日本との良好な関係をめざすとしている馬氏だが、尖閣問題では日本の領有権に対して、厳しい見方をしている。対日姿勢も、注視したい。
台湾の行方は東アジアの安全保障にもかかわる。慎重な舵取りを求めたい。
【朝日新聞・社説】総統選挙―台湾政治がまた進化した
台湾の総統に国民党の馬英九・前台北市長(57)が当選した。国民党にとっては8年ぶりの政権奪還である。
国民党といえば、台湾の人々には複雑な思いがある。約60年前、中国の内戦に敗れた国民党は台湾に逃れ、独裁統治を長期にわたって続けた。武力弾圧で大勢の住民が犠牲になった2・28事件の悲劇は、外来政権の圧政の象徴として記憶されている。
初の台湾出身の総統となった国民党の李登輝氏のもとで90年代、民主化が進んだ。8年前の選挙で、初めて野党民進党の陳水扁氏に総統の座を奪われた。
その国民党の返り咲きである。かつての独裁政党から様変わりしているのはむろんだが、住民の間に拒否感がないわけではない。それが乗り越えられたところに、台湾政治の成熟を見て取ることができる。進化の歯車がまた一つ回った印象である。
国民党は中国との統一を長期的な視野に入れている。台湾独立への方向性を持つ民進党とはそこが大きな違いだ。だが、大陸出身か台湾出身かというかつての対立構図が薄れ、台湾人意識が社会の主流になるなかで、極端な路線は支持されなくなっている。
馬氏も選挙戦では統一色を薄めることに腐心し、チベット騒乱事件では北京五輪ボイコットの可能性さえ口にしてみせた。片や、民進党の謝長廷候補は中国との交流拡大を語るなど、政策選択の幅は狭まっているのが実情だ。
結局、国民党に勝利をもたらしたのは、民進党の陳政権に対する有権者の強い不満だったのではないか。中国との対立をいたずらにあおり、経済政策に失敗したとの批判を受けた。
米ハーバード大学で法律を学んだ馬氏の、清潔でスマートな印象も好感されたに違いない。
馬氏と国民党は今後、長年の独裁時代に染みついた党の利権体質や腐敗からの脱皮を徹底できるかどうかで真価を問われることになろう。
民進党が推進した「台湾名による国連加盟」を問う住民投票が同時におこなわれたが、不成立に終わった。これも陳政権批判と重なる。神経をとがらせてきた中国は胸をなでおろしているだろう。
中台の関係は安定の方向に進むと予想される。中国との融和をはかる国民党の政権復帰を、中国側は歓迎しているに違いない。だが、チベット騒乱で台湾世論の反発は強まっている。大陸経済にのみ込まれるのではないかという懸念も抱いている。性急な接近はかえって摩擦を呼び起こしかねないことを中国側は常に頭に置いておくべきだろう。
中台間の緊張緩和は、この地域の安定を望む日本や米国にとっては好材料だ。中国には、台湾の対岸に並べたミサイル群を撤去し、海軍力の増強を見直すなど、信頼感を増すための努力をしてもらいたい。
【毎日新聞・社説】台湾総統選 馬氏は台湾意識をつかんだ
台湾の総統選挙で野党国民党の馬英九候補が与党民進党の謝長廷候補を破った。8年ぶりに国民党が政権に返り咲いた。
台湾の民主化は1980年代末の戒厳令解除で始まった。歴史は浅いが、国民党から民進党、民進党から国民党と2度の政権交代が混乱なく実現した。民主主義の成熟度を示している。
馬氏は、若さと清廉なイメージで人気が高い。相次ぐ政治スキャンダルで地に落ちた政治の刷新を願う気持ちが馬氏に託された。
その背景には民進党の陳水扁総統が進めた台湾独立路線の手詰まりがある。
2000年の総統選では台湾出身者を支持基盤とする民進党は「台湾アイデンティティー」を対立軸に据え、大陸出身者の政党である国民党に勝利した。その後、陳総統は台湾化政策を進め、「中華民国」を「台湾」に改名する憲法改正を目指した。
中国はこれを「法理上の独立宣言だ」として反国家分裂法を制定し台湾武力進攻を合法化した。
緊張の高まりを憂慮した米国のブッシュ政権は「独立反対」の立場を明らかにした。中国市場への投資拡大を望む経済界も、独立路線とは距離を置いた。
陳総統は憲法改正の代わりに住民投票という形で独立路線を貫こうとした。だが、民意の判定は1月の立法院選挙で出た。国民党が圧勝し、民進党は議席の4割を占めていたが4分の1に激減した。
民進党内でも謝候補は対中関係では穏健な立場だ。だが謝氏が選挙戦の前面に出て経済問題に争点を転換させたのは立法院選の後だった。遅きに失した。
一方、馬氏は、台湾語を学習し、台湾島内をくまなく回り、官僚的エリートくささを薄めようと努めた。大陸出身であっても台湾で育ったという「新台湾人」のアイデンティティーを身につけた。台湾独立論に対しては、中台共同市場構想を提示した。
中国は、対話の相手として馬政権を歓迎するだろう。国民党は「一つの中国」の原則で合意できる。さらに立法院で多数をとれなかった陳政権と違い、議会の絶対多数を制し強力な執行力を持つからである。
だが、馬氏の勝利は中国との統一が支持されたことにはならない。馬氏は台湾意識を代表することに成功したのである。立法院選挙の結果が示すように、国民党の支持基盤が、大陸出身者から、台湾出身者へ広がったのであり、台湾有権者の意識が中国との統一に寄ったわけではない。
台湾の政治にとって重要なことは、むしろ弱体化した民進党が次に政権交代可能な勢力を回復できるかどうかだろう。新台湾人の党に衣替えした国民党に対して、台湾独立以外の対立軸を示せるか、野党となる民進党の責任は重い。
【日本経済新聞・社説】台湾の馬新総統は中国と対話再開を
台湾の最大野党、国民党の馬英九・前主席(57)が22日投開票の総統選挙で初当選し、8年ぶりに政権が交代する。今回の選挙結果は中国との関係が大きく変わっていく契機になるかもしれない。中台関係の行方は米中関係や日本の安全保障に決定的な影響を与える。陳水扁総統の後継として5月に就任する馬新総統は中国との対話を再開し、中台関係の安定に努めてほしい。
与党、民進党の謝長廷・元行政院長(61)との一騎打ちになった総統選は、対中融和路線を掲げる馬氏が大差で勝利した。1月の立法院(国会)選の国民党圧勝も追い風となった。チベット騒乱で中国の人権問題が争点に浮上、台湾独立志向の謝氏が追い上げたが、届かなかった。
1996年に始まった総統(任期4年)の直接選挙は今回が4回目。中国と台湾の経済力は陳政権の2期8年の間にかなり変わった。
2000年に世界7位だった中国の国内総生産(GDP)は、05年に米国、日本、ドイツに次ぐ4位に躍り出た。一方、国・地域別で世界16位だった台湾のGDPは21位に後退した。直近の台湾の株価指数は陳政権発足時を下回っている。
馬氏は陳政権の“経済失政”を指摘し「両岸(中台)共同市場」構想を提唱した。台湾の「主体性」を訴える謝氏は同構想を批判したが、両氏とも中台直行便の拡大や対中投資規制の緩和、中国からの観光客受け入れなどを公約した。大陸との関係も含め、より実利的な政策を期待する票が馬氏に集まった格好だ。
中国の温家宝首相は18日の記者会見で台湾との関係について「1つの中国」を前提としながらも「早期の対話回復を希望する」と述べた。馬氏は2期目に入った胡錦濤政権と対話を復活させ、中台問題の平和的解決に向けて話し合うよう望む。
90年代に制空権などに勝る台湾が優位といわれた中台の軍事バランスも変わりつつある。軍事予算規模で中国は00年以降、台湾を上回った。総統選を前に米空母2隻が台湾近海に派遣されたとの情報もあり、台湾海峡は不安定になりかねない。
総統選と同時に、民進党が提案した「台湾名義での国連加盟」と国民党提案の「中華民国、台湾などの名義での国連復帰」に関する住民投票も実施された。いずれも投票率50%を下回り、不成立に終わった。
中国政府は住民投票が成立すれば「台湾の法的独立への一歩」と強く反対していた。中台双方は相手を刺激するような言動を控え、東アジアの平和と安定に寄与すべきだ。
【東京新聞・社説】台湾政権交代 東アジア安保にも影響
台湾総統選で野党国民党が圧勝し八年ぶりに政権を奪還した。中国のチベット弾圧も国民党優勢の流れを変えなかった。対中関係は緩和に向かうが、急激な変化は東アジア安全保障にも影響する。
民進党は国民党独裁時代の非合法運動から出発し、結党二十年余で政権を獲得した。台湾民主化の申し子として内外の期待は高かった。
しかし、民進党の支持者の中にも「国民党の方がましだったと思うことがある」という失望の声がある。
政府では民進党につながる人々が政治任命ポストだけでなく優遇された。陳水扁総統の一族をはじめ党幹部の汚職事件が次々と暴露された。
経済運営では目立った成果がなく、経済成長率は一九九〇年代に比べ著しく減少した。「M字型社会」と呼ばれる格差の拡大が進行した。
強まる批判に対し民進党政権は台湾人のアイデンティティーを強調し「独立を目指さなければ中国にのみ込まれる」と危機感を訴えた。しかし、選挙民には失政を覆い隠す宣伝に映ったようだ。一月の立法委員選で国民党に三分の二以上の議席を与えたのに続き、再び惨敗を喫した。
国立政治大学の世論調査では、自らを台湾人と思う人は四割を超え、中国人と思う人は一割を切った。しかし「台湾人であると同時に中国人」と思う人も四割を超え、台湾人としての意識は、ただちに独立を目指すことにつながらないようだ。
民進党は立法委員選の大敗後、「総統まで国民党が取れば独裁が再現する」と訴えた。チベットでの中国の弾圧で中国への警戒感が高まったのに期待し、巻き返しを図ったが得票につながらなかった。
民進党の失敗は立法院に続き総統府も手中にした国民党にとって「反面教師」にほかならない。圧倒的な権力におごり政府を私物化し、民生の改善がおろそかになれば四年後には民進党の二の舞いになる。
民進党は二つの敗北を教訓に解党的出直しを図り国民党の専横をチェックし、政策論争を挑み本格的な二大政党時代を実現してほしい。
「中国国民党」の政権奪取によって対中関係は緩和する。中国は「中国人であると認めれば対話する」としており、中台間の直航や貿易も進展するだろう。
しかし、急激な変化は軍備増強を加速する中国と米国、日本のパワーバランスを揺るがす恐れがある。馬英九次期総統は「台湾海峡の現状を維持する」との言葉通り対中関係とともに陳水扁政権で傷ついた対米関係の修復、対日関係の強化に気を配り東アジアの安定を図ってほしい。
【社説・信濃毎日新聞】台湾総統選 海峡の安定が選ばれた
台湾の総統選挙で、中国との関係を重視する政策を掲げた野党国民党の馬英九候補が当選した。台湾海峡の緊張を望まない人々の気持ちが、馬候候補を総裁の座に押し上げた。中国政府は結果を前向きに受け止めて、中台関係の安定化に努めるべきだ。
国民党は中国本土にルーツを持つ正当だ。共産党によって大陸から追われ、台湾に渡った。もともと台湾に住んでいた人々にとっては、外来の政治勢力である。
2000年3月の総統選で、当時は野党だった民主進歩党(民進党)に敗れ、野党に転落した。8年ぶりの政権返り咲きになる。
今度の選挙で見落とせないことが2つある。1つは、台湾政治の民主化が一段と進んだことだ。
野党結成の容認(1986年)、戒厳令解除(87年)、初めての総統直接選挙(96年)-とステップを踏み、2000年の総統選では初めて平和的な政権交代が実現した。
国民党は今回、人々の1票に支えられて政権を奪い返した。政治の成熟を内外に印象づける結果である。共産党の一党支配が続く中国との対比で、国際的地位の向上にも役立つことだろう。
もう1つ見落とせないのは、国民党の土着化、台湾化とでも言うべき現象だ。
中国との関係について各種世論調査では、中国から独立せず、かといって統一もしない現状維持を望む声が圧倒的に多い。馬候補はそこに狙いを定め、台湾語を交えた演説をするなど、台湾に立脚した政治家であることをアピールした。
選挙戦の終盤で持ち上がったチベット暴動では、当局による鎮圧を「横暴」と非難、北京五輪ボイコットの可能性にも踏み込んだ。
これに対し民進党の謝長廷候補は、独立志向の民進党政権下で中国との関係が悪化し、経済成長も損なわれた、との批判に十分反論できなかった。“台湾の党”を演出した国民党にお株を奪われ、足下をすくわれた形である。
中国は今も台湾を武力で統一する意思を捨てていない。台湾政治の民主化が進んだ今、力ずくの統一は国際的にますます容認されなくなったことを指導部は知るべきだ。
「一つの中国」という中国の主張には耳を傾けるけれど、台湾と中国の問題は平和的な対話によって解決されるべきだ-。それが国際的なコンセンサスである。
今度の選挙結果をばねに、台湾と中国は共存共栄の努力をさらに傾けてほしい。中国の指導部は武力統一の選択肢を、はっきりと放棄すべきである。