台湾新政権 来月発足 李登輝前総統に聞く 対日顧問役に意欲
年内の新潟・福井の「奥の細道」訪問意向を表明

台湾の李登輝前総統(85)は3日、台北市内で読売新聞とのインタビューに応じ、5月20日に次期総統に就任する馬英九・前国民党主席(57)の新政権下で、事実上の「対日関係顧問役」として、日台関係促進に努める意欲を示した。

李氏は「日台関係は中台関係以上に重要で、台湾経済発展のために日本との提携が重要だ。馬氏は日本をよく知らない。日本を知っている人間が仕事をしてあげるべきだ」と述べ、親日家として馬氏に協力する姿勢を強調した。ただ、李氏本人が要職に就くかどうかは「若い人にやらせるべきだ」と語った。

日台の一部には、外省人(中国出身者)の馬氏が、尖閣諸島の領土問題で厳しい姿勢を示した経緯があることなどから、日台関係の先行きを懸念する声がある。李氏と先月会談した馬氏は「対日関係発展で尽力するとの話があった。今後、李氏の教えをいただきたい」と述べており、李氏は、馬氏と日本との橋渡し役として重要な役割を担っていくものとみられる。

また、李氏は年内に日本を観光で訪問したいとの意向を表明、昨年に続き、松尾芭蕉の「奥の細道」をたどる旅をしたいとの考えを示した。訪問先としては新潟、福井両県などを挙げた。

一方、戦後2度目の政権交代が決まった3月の総統選について、李氏は「民主化の深まりを示したもので、私が12年間かけて作り上げた民主化がさらに進むのではないか」と評価した。国民党が大勝した原因について、李氏は「民進党が政権を取った2000年は民主化が一歩進んだが、その後の8年間はどうか。住民は、汚職にまみれた民進党に失望し、不満を強めた」と分析した。

今後の中台関係について、独立志向の民進党内には、対中融和派の国民党政権が「対中統一に傾く」との懸念がある。李氏は「台湾は事実上の一つの国。中台関係はかなりの時間をかけても解決できない。中国は、複雑な内部の問題処理に追われ、台湾問題まで手が回らない」と述べ、「統一」の動きが進むことはないとの見方を示した。

さらに李氏は、馬氏が掲げる中台直行便や中国人観光客受け入れ策への支持を表明、「表面的に中台関係は改善する」と語った。ただ、馬氏が目指す中国との平和協定は「できないだろう」とも述べた。(4月4日 読売新聞)

また、この報道を受け、当日の中央通訊社や、翌日付の台湾紙・自由時報も李登輝前総統の「日台関係は中台関係以上に重要」という発言や「再度訪日を示唆」について報じた。

【2008年5月10日追記】李登輝前総統の表敬訪問に同行した北國新聞のインタビューに対し、李前総統が「馬次期総統の親日姿勢評価」と報じています。