中華民国憲法を廃して新憲法を制定し、チャイナとは全く無関係の台湾人の国家=台湾国を建国する(国家正常化を行う)というのが李登輝前総統の理念であり、多くの台湾人の目標であり、さらには台湾を支持する日本人が抱く期待でもあった。そしてそのために期待されたのが陳水扁総統の民進党政権だった。だが3月の総統選挙で、中華民国体制を頑なに護持し、しかも中国への接近を図る国民党の馬英九氏が勝利した。
選挙前、民進党支持の台湾人が失望し、罵詈雑言の標的としたのが、陳水扁氏を強く批判し、さらには民進党の謝長廷候補の支持表明を控えた李登輝前総統だった。敢えてとるその戦略は、殆ど理解されなかった。
独立派とされた陳水扁氏は実際には独立派には独立派の顔を、統一派には統一派の顔を見せるだけの人物。総統就任直後に蒋介石の銅像を参拝したり、「正名・制憲は原理主義で賛成しない」と言明したり、中国との文化・経済面での「統合」を唱え(そして無防備な対中経済開放を進めて中国への依存度を徒に高め、国内産業を空洞化し)、かくて独立派を激怒させ、その一方で統一派からは侮られ、不毛な政争を引き起こした。その結果、1月の国会選挙では国民党が全議席の4分の3近くを獲得、最早民進党は総統選で勝っても、国民党路線に従う以外ない状況だった。これでは国家正常化は夢のまた夢である。
李登輝氏はそのような民進党と心中する訳に行かなかたはずだ。そして台湾へのアイデンティティに基づいた政界を構築するため、自身が持つ国民党への影響力を温存しなければならかったはずである。
目下、李登輝氏は馬英九政権下で対日関係の責任者に就任する意向を示しているが、独立派はなおもそれを批判できるか。もしそれが実現すれば日台関係は従来よりも遥かに強く深いものとなろう。そして台湾を親日国家(反中国陣営)に置き留めるに大きな力を発揮しよう。
我々もまた、やるべきことはたくさんある。台湾のため、そして日台共栄のための戦いはこれからなのだ。
機関誌『日台共栄』5月号目次(一部の記事はこちらからご覧になれます)
【巻頭言】李登輝理念を知れ―戦いはこれからだ●本誌編集部
台湾と私(20) 李登輝総統と西郷南洲●水島 総
台湾は日本の生命線!●平松茂雄
台湾総統選挙の分析と馬英九新政権の展望●澁谷 司
鄭南榕氏が切り開いた台湾の民主化●許 世楷
第6回総会報告・日台の国家関係の実現を目指す●本誌編集部
岩波書店は誠意見せるか?●冨澤賢公
新たな船出を迎えた「台湾丸」●片木裕一
鄭南榕を振り返り自らを省みる●梶山憲一
支部だより 各地から─福井・岐阜・青森・埼玉・兵庫・新潟
大臣や県知事も参列して桜植樹式●柚原正敬
日台交流日録(19)
事務局だより・編集後記
日台共栄写真館 2月28日~3月2日 第3回桜植樹式とお花見ツアー 表3
日本李登輝友の会 役員一覧 表紙4