3月に総統選が行われ、台湾は新しく国民党・馬英九時代に入りました。かつて国会は中国大陸で選挙された議員が延々と改選されない「万年国会」と呼ばれていましたが、いまや民主体制は揺るぎないものになっています。
著者は民主化以前の時代から研究を続け、戦後台湾の歩んできた道のりを「中華民国台湾化」という概念で結実させています。本書は主として政治の分野を中心に記述されていますが、著者の視点は蒋介石、李登輝といった為政者ばかりでなく、台湾に生まれて台湾に育った「台湾人」たる人々に多くが注がれています。そこには戦後台湾の歩みは、歴史に翻弄された台湾人の悲哀の歴史であるという主張が込められているように思います。
台湾はどこから来て、どこへ行くのか? アジアの要衝として日・米・中のあいだで揺れ続けた歴史を振り返り、さらに2008年総統選を踏まえて未来の方向性をも指し示しました。「中華民国台湾化」の視角から、自らのアイデンティティと政治主体の変化に着目して構造変動を描いた通史の決定版です。