3月22日、今年で4回目となる「2009台湾・桜植樹式とお花見」(3月18日~21日)から無事帰国しました。 HPでもご紹介したように、今年の植樹式は嘉義県竹崎郷の奮起湖にある中和国民小学と台中市の台中公園の2ヵ所で行われました。また、すでに1000本の河津桜の苗木は2月10日に台湾に届けられ、彰化県芬園郷渓尾村にある仮植樹地「員農種苗繁殖場」に運ばれてすくすくと育っています。
■嘉義県奮起湖・中和国民小学(3月19日)
18日に台湾に着いた一行は嘉義市内の中信大第飯店に宿泊したのですが、ホテルから植樹式が行われる奮起湖の中和国民小学までは約2時間を要することが分かり、この日は出発を1時間半早めて7時にバスでホテルを出発。気温はすでに20度近くあり、日本の初夏を思わせるような陽光でした。
奮起湖は標高1400メートルにある阿里山森林鉄道の駅「奮起湖駅」があり、始発の嘉義駅と終点の沼平駅(旧阿里山駅)のちょうど中間地点です。
奮起湖では昨年も植樹しており、この時は森林鉄道の旅を満喫してもらいたいという台湾側の計らいで終点手前の阿里山駅まで行き、杉とヒノキが群生する様を見ながらたっぷりと旅情を味わい、その帰りに奮起湖駅で下車し、国道18号線沿いに設けられた会場へバスで移動しました。
今年は昨年とは逆に国道18号線を奮起湖へ向かっていますので、昨年の植樹式会場が近づいてくると、何と国道の両側に河津桜の苗木が植えてあるのが車窓から見えてきました。
記念碑も見えました。すでに花は散って葉桜となっていましたが、支柱が立てられ、まだ幼い河津桜がしっかりと台湾の大地に根を張っている様を見て一行は大感激。バスを止めてよく見てみたい衝動に駆られましたが、会場の中和国民小学まではまだ20分ほど走らなければならず、やむなく車窓からの見学となりました。
中和小学に着くと、まず校門のところにバルーンで作った歓迎アーチが私たちを出迎え、アーチには「嘉義縣98年奮起湖櫻花植樹活動曁中和國小75週年校慶聯合學區體能競賽」と染め抜かれています。75周年、つまり日本統治時代の1934年(昭和9年)にこの小学校は創立されていて、今年が75年目だそうです。
台北市内の小学校などからするとかなり遅い開校ですが、日本時代からの歴史を大切にしてくれていることに感激しつつこのアーチをくぐると、下り坂になっている校門から校庭まで生徒や先生方が総出で出迎えてくれていました。すると、口々に日本語で「お早うございます」の大合唱。これにはビックリさせられると同時に大感激です。また、同時に「バーン」と大きな音が鳴り響いたので何事かと思ったら、何と竹筒で作った砲による礼砲を撃って出迎えてくれたのでした。
坂を下ったところに2基の大型テントが設置され、手前は父兄などの参観者が座り、奥のテントは1メートル強ほど高い壇となっている来賓用でした。
ここ中和小学は生徒総数が5、60人ほどの小さな小学校です。式典が始まる前に生徒数7人という2年生の担任で、日本語が話せる女性教師の沈思頴先生に学校を案内していただきました。
式典には、行政院農業委員会林務局(農林水産省林野庁に相当)の楊宏志・嘉義林区管理処処長や嘉義県政府の洪嘉文・教育処処長、台湾李登輝之友会全国総会の城仲模総会長などが来賓として参加し、また出身地の嘉義県に桜の苗木を寄贈し、今回の「2009台湾・桜植樹式とお花見」に参加した林錦漫・華商総会理事長なども来賓として迎えられました。
式典はまず生徒たちによる歓迎の「国民健康体操」や縦笛などの演奏、ダンスなどが繰り広げられ、中和國小の王國原校長による開会の挨拶に続き、来賓の楊宏志・嘉義林区管理処処長、城仲模会長の挨拶、柚原正敬・本会常務理事への感謝状贈呈と進み、次がいよいよ記念碑の除幕式と植樹式です。
「致嘉義縣政府 河津桜植樹紀念」と朱色で刻まれた記念碑には、城仲模会長作の「河風春暖好心情 津澤植樹奮起湖 櫻開乍放如仙境 花落郷土護寶島」の七言絶句とともに、昨年の桜募金篤志者の名前も刻銘されていました。
ちなみに、中和国民小学には300本の苗木が贈られています。
フォルモサテレビ(民視)なども取材に訪れており、植樹式後、城会長や柚原常務理事、薛格芳・本会理事などがインタビューに応じました。
式典の後は奮起湖駅周辺を見学するはずだったのですが、次の訪問先である彰化県の員農種苗繁殖場まではかなり時間がかかるとのことで、見学をカットして昼食としていただきました。昼食は奮起湖駅そばの奮起湖大飯店で名物の「奮起湖弁当」をふるまっていただきました。昨年は阿里山森林鉄道に乗っているときにいただきましたが、豚肉と山菜を中心にしたこの奮起湖弁当は味付けもしっかりしていて大変美味なのです。
早目の昼食を終え、少しだけ奮起湖駅車庫を見学した後、先生方のお見送りを受けながら一路、彰化に向かいました。
■彰化県芬園郷渓尾村・員農種苗繁殖場(3月19日)
午後2時半近く彰化県芬園郷渓尾村にある「員農種苗繁殖場」に到着。すると園内にはたくさんの人が並んでいました。ずいぶん派手な歓迎だなと思って進むと、人々は葉っぱのついた植木鉢を手に手に出てきます。何と接木した河津桜の苗木を無料で配布していたのでした。聞けば500鉢を用意したとのこと。ご近所のお母さん方がニコニコして出てくる様子が印象的でした。
城仲模会長たちも到着し、園内で式典が始まりました。まず自ら「桜花張」と名乗る桜育成のプロで、員農種苗繁殖場の張洲府氏が開会の挨拶。続いて城会長、柚原常務理事が挨拶したのに続き、「2009台湾・桜植樹式とお花見」に参加した斎藤毅・台湾協会理事長と野口毅・高座日台交流の会名誉会長、片木裕一・本会理事などが挨拶。また台湾側は彰化県に隣接する台中県烏日郷の陳芳隆郷長などが挨拶。
この挨拶の中で、城会長が「台湾で河津桜の咲く1月から2月にかけては旧正月の時期と重なるので、このときを『桜祭り』とし、花見を開きたい」と提案し、また陳郷長から「台湾新幹線の台中駅周辺に河津桜を植えたい」という提案がなされ、出席者から盛んな拍手が起こりました。ぜひ実現していただきたいものです。
その後、河津桜も植えてある園内の一角で植樹式が行われましたが、これが終ると城会長自ら河津桜の植木鉢を手渡しはじめ、500鉢もの河津桜の苗木がまたたく間になくなりました。
午後4時、員農種苗繁殖場を後にし、本日の宿泊先である長栄桂冠酒店へ。夕刻からは台中李友会の呉婉如さんや廖瑩[女亭]さんのご招待による夕食会が「台南担仔麺」台中店で開かれました。ここ台南担仔麺は台北、高雄、上海にも店を出し、政府関係者なども利用する高級料亭。本会会員でもある黄木壽氏なども見え、大いに盛り上がりました。その後、足裏マッサージへの招待もあり、至れり尽くせりのおもてなしでした。
■台中市・台中公園(3月20日)
台中市は人口101万人を擁する台湾第3の都市で、日本人墓がある宝覚寺もここ台中市にあります。河津桜を植樹する台中公園は台中神社があった、台中市の中心にある市民の憩いの場所です。
台中神社の鳥居が横倒しになっている様が今でも見られるというので、少し早目にホテルを出発して公園内を散策しました。公園に着くと、入口正面に大きく「日本河津桜 贈樹植樹活動」の看板が掲げられているのが目に入り、音楽が鳴り響いて式典の準備はすでに整っている様子でした。
公園内には台湾原産の寒緋桜が植えられていて、鳥居が横倒しになっている場所には説明のプレートも敷設してありました。また、台湾縦貫鉄道が開通してその記念式典を台中駅で行った明治41年(1908年)10月24日、閑院宮載仁(かんいんのみやことひと)親王がその記念として植樹した樟樹(クスノキ)があり、ここにもその来歴を記したプレートが設置されていました。
ほぼ一回りして会場に入ると、台中市内の3つの小学校の生徒たちが太鼓演奏やネズミの嫁入りをテーマとした踊り、管弦楽の演奏などを次々と披露して歓迎してくれました。いずれも台湾の小学校屈指の演奏やダンスだそうで、参加者から盛大な拍手が送られました。
式典には李登輝元総統や胡志強市長も臨席の予定だったのですが、急遽、都合がつかずに欠席となったのは残念でした。胡志強市長の代理として台中市政府の王誕生・建設処処長が登壇。また城仲模・台湾李友会会長と柚原正敬・本会常務理事が挨拶。
引き続いて除幕式と植樹式が行われ、記念碑は公園の正面入口のすぐ左手、通りからもよく見えるところに設置されていました。王建設処処長や城会長、隆國隆・台中市議、柚原常務理事などが碑を覆っていた赤い布を取ると、奮起湖と同様の碑文を刻んだ記念碑が表れ、盛大な拍手。続いて植樹式が行われ、台中市には300本の苗木が贈られています。
なお、式典会場のすぐ近くで、員農種苗繁殖場の張洲府氏たちが苗木の無料配布を行っていて、この日も接木した500本を用意、多くの市民が持ち帰っていました。
その後、台中市工業区にある「善勝」に移動。ここは前夜、夕食をご馳走になった台中市李友会の呉婉如と廖瑩[女亭]さんが経営する会社で、本日の昼食にもご招待いただいた次第。会社内の庭園には李登輝元総統の「誠実自然」や「我是不是我的我(私は私でない私)」の碑があり、昼食の後でこの碑の前で記念撮影。また台湾茶の実演も見せていただいた。
午後2時半、一行は新竹に向けて出発。
■新竹・新竹市動物園(3月20日)
平成15年(2003年)、育桜会が新竹市の台湾李登輝之友会に200本の河津桜の苗木を贈り、これがうまく開花したことで、本会も加わって台湾に河津桜を寄贈することになった因縁の場所。今年の桜はすでに散ってしまいましたが、その河津桜がどうなっているのか毎年訪問しています。また、新竹では接木でどんどん増やしていて、その様子も見るためです。
予定どおり午後4時近く、新竹市動物園に着くと、張震天会長や楊根藤さん、洪日盛さんといったおなじみの「桜守」の皆さんが出迎えてくれ、動物園内に植えてある河津桜を案内していただきました。最初に移植した河津桜の高さはすでに5、6メートルになっていて、幹周りも25、6センチと立派に育っていました。花が咲いていない分、花に目を奪われないため樹勢がよく分かります。楊根藤さんが今年咲いた写真(2月10日撮影)をパンフレットにして私たちに配っていただきましたが、本当にきれいに咲いている様には大感激でした。
動物園の外側にある姉妹都市館が建つ公園などでは新たに植えた「富士桜」や「吉野桜」などもあり、張震天さんは「桜の咲く季節になると毎日、朝と晩には見回っているよ」と言い、楊さんなどは「接木でどんどん増やしているから、もう贈ってくれなくていいよ」と笑いながら豪語。桜繁殖に自信を持っている様子がありありと分かり、本当に頼もしい限りでした。
新竹側には夕食会も用意していただき、ここには城仲模会長も見え、「来年こそは花の季節に来て、花見をしましょう」と約束、桜をネタに大いに盛り上がりました。
■新竹・十八尖山(3月21日)
新竹市内に市民の散歩コースになっている「十八尖山」があります。ここに25本の河津桜を植えてあるということで、張震天さん、楊根藤さん、郭炳燦さんの3人がホテルまで迎えに来てくれて、バスで15分ほどの近くにある十八尖山へ。
9時少し前に着いたのですが、土曜日とあってすでに多くの市民が来ていて、街中よりも人が多い様子に市民憩いの場を実感。多くの草花が植えられていて、花が咲いている様を見ながら散歩したり、子供たちが写生をしたりしています。河津桜は頂上付近に植えられていて、やはり花は散っていましたが、花が咲けば花が、美しい緑の葉が出てくれば葉が人々を癒しているようでした。
1時間ほど歩き、ホテルに戻りましたが、張さんたちの「来年も必ず来て下さいね」との声に見送られて帰国の途につき、今年も充実した「台湾・桜植樹式とお花見」の旅を終えた次第です。