10月30日から、第12回目となる「台湾李登輝学校研修団」(4泊5日、参加者39名、高松好夫団長、藤原一雅副団長)が始まり、実りある研修を行って11月3日夜、帰国した。
今回の参加者は北海道から沖縄まで、年齢も85歳から大学4年生の22歳までと幅広かったが(平均年齢は52歳)、初の金門島訪問や李登輝元総統の力強い講義を拝聴し、一様に充実感を味わって帰国したようだ。
台湾に到着した第1日目は、李登輝元総統も出席の台湾団結聯盟(黄昆輝主席)主催の募金パーティに招待された。この宴席には黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席や阮美姝さんなど、研修参加者と親しい方々も参加されていた。1000人近くが出席したパーティには李登輝元総統も姿を見せ、30分にわたる演説で痛烈に馬英九政権を批判し、八八水害の不手際や米国牛肉輸入自由化問題など、国民を無視した政権運営は12月5日の統一地方選で必ず審判を受けるだろう、などと述べた。
2日目の10月31日と3日11月1日は淡水にある群策会において講義が行われ、6名の講師から台湾を巡るさまざまなお話を伺った。講師とテーマは下記の通り。
鄭清文(作家)「台湾の文学」、羅福全(元亜東関係協会会長)「世界情勢の中の台湾」、黄昭堂(台湾独立建国聯盟主席)「馬総統下の台湾の状況」、呉明義(玉山神学院元院長)「台湾原住民の歴史」、林明徳(台湾師範大学教授)「台湾主体性の追及」、黄天麟(元第一銀行頭取)「台湾の経済とECFA」。
4日目の11月2日の午後からは金門島への野外視察。日本国内ではすでに体験できるところはかなり少なくなっていると思うが、台北市内の松山空港(台北国際空港)から金門島の尚義空港に到着すると、前と後から降りたのだが、なんとタラップを使って降りる。そして飛行場の路面を歩いてゲートに向かう。もちろん、帰りの便もタラップを昇るというめったにない体験をした。
中国との戦闘最前線だった金門島でさらに驚かされたのは、中国領土に最も近い「馬山観測所」という地下壕に入った時だ。李登輝学校研修団を担当する林育任氏(群策会教育処副処長)が突然「携帯のエリアが中国になっている!」と驚いた声を挙げた。自分の携帯を確認すると、確かに台湾エリアから「中国エリア」になっている。台湾でしか使えない携帯は使用不可になっていた。「台湾の最前線」、台湾にある中国を肌身で感じた瞬間だった。
最終日の11月3日は予定どおり李登輝元総統(李登輝学校校長)によるお待ち兼ねの特別講義が行われた。今回のテーマは「台湾が直面する困難」。台湾の中国依存の問題点を歴史的経過や米国からの牛肉輸入やECFAなどの具体的問題から解きほぐし、また来日したときの印象などもまぶしながら、台湾の対中国政策の「上策」を提示、「台湾は中国の悪口を言う必要はない。中国の正確な姿を世界に知らしめる必要がある」と喝破された。
また、鳩山首相の唱える「東アジア共同体」構想にも話は及び、東アジア共同体を構築するにはまだまだ早いと釘を刺した。
参加者の目はらんらんと耀き、一言一句を聞き逃すまいとする雰囲気で、1時間の講義はまたたく間に終った。質疑応答の時間はほとんどなかったが、李元総統は「87歳で(ゴルフは)まだ18ホール回れる。あと5年はできる」とも述べ、台湾の指導者としての意気込みを示された。
一連の研修修了後、李登輝校長自ら一人ひとりに「修了証」を授与され、参加者は感激の面持ちで受け取り、充実の第12回台湾李登輝学校研修団は無事に終了した。
参加者の皆様、お疲れ様でした。研修団の詳細は機関誌『日台共栄』の次号で報告の予定です。