20100523-01新緑が美しい2007年5月、台湾の李登輝元総統が来日された。総統退任後、3度目となるこの来日では念願だった芭蕉の「奥の細道」を探訪し、芭蕉が旅立ったとされる後に建てられたという東京・江東区の芭蕉記念館を振り出しに、宮城、山形、岩手、秋田と周り、日光へも立ち寄られた。

6月4日の夕刻、岩手から秋田に入った李元総統一行は田沢湖近く、抱返り渓谷の上流にある「夏瀬温泉都わすれ」に投宿。ここは周囲には民家も旅館もなく、携帯電話の電波もテレビの地上波も届かない、まさに巷の喧騒から隔絶された秘境の温泉宿だった。

翌日は角館市内や田沢湖を訪れ、宿に戻ってきた夕刻、「都わすれ」の女将の佐藤京子さんが李元総統に記念の植樹をお願いした。李元総統はお疲れの様子も見せず、下駄履きのまま中庭に下り、自ら鋤を取って樹高3メートルほどの枝垂桜の苗木の周りに満遍なく土をかけられた。苗木を慈しむ様子がありありと分かる、丁寧な仕草だった。

翌年春からこの枝垂桜は見事な花をつけ、宿に泊まる人々の目を楽しませてきた。そして昨年には「植樹記念碑」が建立され、女将に贈られた色紙に揮毫した「我是 不是 我的我」(私は私でない私)の文字が彫られ、2007年6月5日の日付とともに李元総統のサインも彫られている。

今年5月、第13回台湾李登輝学校研修団が行われ、都わすれの佐藤京子さんと長田幸子さんも参加。この際に、記念碑ときれいに咲いた枝垂桜の写真を持ってこられたので参加者にも紹介したが、その後、その写真をお送りいただいた。5月5日に撮影した記念碑の写真ではまだ咲いていないが、12日撮影の写真では満開に咲いている様子が写っていた。

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この「奥の細道」探訪の旅で、李元総統は記念植樹を3度されている。6月2日に仙台の鹽竈(しおがま)神社で「メグスリノキ」、6月5日に田沢湖の都わすれで「枝垂桜」、そして6月8日に日光の明治の館で「河津桜」をお手植えされている。

ちなみに、仙台では、この旅のときに詠んだ李元総統ご夫妻の句碑が国宝の瑞巌寺境内に建立されている。鹽竈神社で「メグスリノキ」を、瑞巌寺で句碑を見たいといって訪れる台湾からの観光客も少なくないという。北陸・能登の加賀屋にも李元総統は宿泊されているので、加賀屋にも台湾からの宿泊客が少なくないというが、秋田の都わすれにもそのような台湾からの客が見えるという。

李元総統とご一緒に宿泊したときの「都わすれ」の静寂は忘れ難い。枝垂桜を見やりながらの温泉は最高で、まさに憂いを忘れる(「都わすれ」の花言葉)ひと時だった。日本人なら一度は訪れてみたい秘境の湯だ。

日本李登輝友の会事務局長 柚原正敬
平成22年5月23日

■夏瀬温泉 都わすれ
〒014-1113 秋田県仙北市田沢湖卒田字夏瀬84
TEL:0187-44-2220
※日本李登輝友の会会員は女将割引(15%)有。本会事務局までお問い合わせを!

■鹽竈神社
〒985-8510 宮城県塩竃市一森山1-1
TEL:022-367-1611

■瑞巌寺
〒981-0213 宮城県宮城郡松島町松島字町内91番地
TEL:022-354-2023

■明治の館
〒321-1406 栃木県日光市山内2339-1
TEL:0288-53-3751