20110702本会は7月2日日、東京都文京区の文京区民センターにおいて池栄青果の藤田克己社長を講師に第5回台湾セミナーを開催した。

会場の一角には、本物の台湾産マンゴーやパパイヤ、ライチなどがきれいに展示され、参加者には台湾特産の「黒落花生」1袋や台湾フルーツをかたどったストラップなどがもれなくプレゼントされ、参加者はホクホク顔。さらに講演の最後には展示されていたマンゴーなどもどうぞとプレゼント、参加者の顔はさらにほころんだ。

台湾の講演会といえば、政治や経済、安全保障、あるいは歴史や文学をテーマとしたものがほとんどだが、「果物」をテーマにした講演会を開くのは恐らく本会くらいだろう。

開会にあたって、柚原正敬・事務局長はセミナー開催の意義について説明するとともに、李登輝元総統の起訴について短く解説、総統選をにらんで、民進党を含めた独立建国派の中心的存在である李元総統の求心力をそぎたいという、支持率が落ち気味の中国国民党によるものではないかと指摘する台湾からの声などを紹介した。

藤田社長による「フルーツで深まる日本と台湾の交流 ─ 台湾物産館を創立して」と題した講演は、用意されたレジュメにそって、1)会社説明、2)台湾物産館、3)台湾より日本へ輸入できる果物、4)肥料、農薬、除草剤、枯葉剤、5)燻蒸(くんじょう)施設、6)マンゴー(原産地、使用途、品種、輸入量、生産量)、7)野菜・果物と進んだ。

流れるような聞きやすい弁舌もさることながら、果物についての該博な知識にビックリした参加者も多かったようだ。

この中で、日本へは害虫などを入れないために燻蒸したり農薬の規制が厳しかったりするが、中国へはなんと燻蒸などせずにそのまま輸出しているそうで、香港:1800トン、中国:1500トン、日本:1000トン、韓国:450トンとの割合だそうだ。なぜ香港なのかといえば、中国へ直接輸出するとお金が支払われないケースがあるので、香港で決済するシステムを取っているのだそうだ。

それにしても、香港も中国だから、台湾マンゴーの中国向け輸出はなんと70%にものぼっていることになる。果物においても、台湾の中国傾斜が進んでいることに愕然とした。

果物を通じた日台関係の現状も見えてきて、藤田社長の話のはしばしに日本を思い、台湾を思う心があふれていて、予定の1時間はあっという間に過ぎた。

取材に来た台湾新聞が早速「マンゴーは『野菜』だった!?!」との見出しをつけて「台湾新聞ブログ」にアップしているので、下記にご紹介したい。


  マンゴーは「野菜」だった!?!「台湾物産館」藤田克己社長の講演会

日本李登輝友の会の講演会が2011年7月2日に、文京区民センターで行われた。メインスピーカーは、「台湾物産館」の社長、藤田克己氏。藤田氏の講演に先立ち、日本李登輝友の会の事務局長、柚原正敬氏が、一昨日台湾で元総統の李登輝氏が在宅起訴されたことを受け、その件について語った。

柚原氏は元総統・李登輝氏の在宅起訴について、「台湾からの連絡によれば、今回の李登輝氏の起訴は、来年の総統選挙をにらんだ政治的な動きだとのこと。李登輝友の会は、政治の話よりもフルーツや自然の話をしたいと思っているのだが、なかなかこういう話から離れられない。いずれにしても、李登輝さんと民進党は連携を組むことになりそうで、この関連の動きかと思っている」とのこと。

柚原氏のお話が終わると、短い台南の観光ビデオが流れた。これはつい先日、東京MX-TVでも放映された、台湾に在住する日本人の台湾専門家で有名な片倉佳史氏が出演したもの。最後のフルーツの場面はやはり圧巻だった。

ビデオが終わると、台湾物産館・池栄青果の藤田社長の講演となった。講演は「なぜ台湾とかかわり、台湾物産館を引き受けることになったのか?」についての説明から始まった。話は台湾から日本に輸入できる果物とその非常に良い安全性について。化学肥料の使用や除草剤、農薬、枯葉剤など、台湾の果物には非常に少ないこと、などが語られた。藤田社長は最初沖縄のマンゴーをやっていて、そこでより安くて品質も日本製と変わらない「台湾マンゴー」と出会ったとのこと。

また、マンゴーなどは日本に輸入するさい、必ず虫を殺す「燻蒸」の過程を経るが、その燻蒸についてのお話もあった。その後、話は特に台湾を中心にしたマンゴーの話に移った。台湾のマンゴーの価格は、1/4が原価で、あとは関税、燻蒸費用、運送費で1/4ずつかかっているとのこと。原価はかなり安いが、日本に入ってくる台湾マンゴーは特に「安全」に配慮しているとのこと。それでも、台湾のマンゴーは、日本製のマンゴーの価格のおおよそ1/10だ。

また、藤田社長のお話によれば、本来、マンゴー、パパイヤは料理に使うもので、生で食べるのは世界的に稀とのこと。これは意外だった。また、諸外国ではそのためにマンゴー、パパイヤは「野菜」扱いとなっているとのこと。藤田社長の「マンゴーの話」は非常に面白かった。

また、マンゴーの生産業はインドが一番多く、台湾の15倍くらい生産されているという。また、日本でもマンゴーは生産されているものの、日本での消費量の中では非常に少ないシェアしかないとのこと。また、日本のマンゴーと台湾のマンゴーは「香り」が違う、とのこと。やはり香りでは台湾のマンゴーが勝るという。しかし、最も違うのは価格だ。台湾のマンゴーと日本のマンゴーは最小でも2倍、多ければ10倍の価格差があるという。また、こういった農産物は、「まずいときが一番値段が高く、美味しい時期が一番値段が安い」ものだとのこと。まさに「旬」とはこのことだ。

最後に、藤田社長に質問の時間。なぜかマンゴーよりもドリアン、マンゴスチン、パイナップルなどの質問が相次いだ。

藤田社長のマンゴーの話は尽きないが、講演が終わると、自分も少し「マンゴー博士」になったような気がした、楽しい講演だった。

なお、質疑応答の後、台湾マンゴー、ライチ、パパイヤなどが会場の参加者に配られた。