台湾の総統選挙で敗れた民進党の蔡英文候補は、1月14日夜、大雨の降りしきる中、大勢の支持者を前に感謝の意を表するとともに、「台湾の人々が下した選択を受け入れたい」と粛々と敗北を認めるとともに、当選した中国国民党の馬英九候補に祝福のエールを送る演説を行った。
また、支持者を鼓舞して、切々と「皆さん、決して志を失ってはいけません。台湾に対抗派の声をなくしてはいけません」と訴えた。そして責任を取って党主席の座を降りることを宣言し、最後に、「どの立場の人であれ、この国を愛し大切にしてください」「親愛なる台湾国民の皆さん、いつの日か私たちは戻ってきます。私たちは諦めません。皆さん、ありがとう。私の心は永遠に台湾国民とともにあり続けます」と結んだ。
蔡英文さんの敗戦の弁は見事というしかない。何とも潔い。中国国民党が負けたなら、これまでの例からしてこうはいかなかったことは十分に想像できる。
伊原吉之助・帝塚山大学名誉教授も、昨日の産経新聞「正論」において「国共内戦に敗れて渡ってきた中国大陸系の台湾住民は負けるとうるさいのに対し、本土系の台湾住民は負けは潔く認める傾向がある。08年も今回も国民党が勝ったからもめなかっただけ」と指摘していた。
蔡英文氏のこの見事な総統選敗退の演説を、加藤洋一郎氏が日本語訳を付してYouTubeにアップ、本会にお送りいただいた。下記に、加藤氏からいただいた一文とともにご紹介したい。
「蔡英文氏はここ数年間での政治活動の中で数多くの台湾国民の信頼を得、また台湾人による台湾を建てることを政治の理念として活動をされておりました。2012年の総統選においては、前日の集会で李登輝元総統からの支持を得、勢いは十分だったかに見えましたが、辛くも馬英九に敗れてしまいました。
この演説は選挙敗退後のものですが、蔡英文氏の政治家としての風格や度量を改めて知ることができ、また台湾人の今回の選挙における情熱が如実に表れております。
蔡英文という政治家、そして台湾人たちの思いをより多くの日本人の方に見てもらいたい。そういう思いから、日本語訳を付けYoutube上にアップロードさせていただきました。」