12月23日、東京・千代田区内のアルカディア市ヶ谷において本会恒例の「日台共栄の夕べ」を開催、福井、石川、大阪、岐阜、宮城など遠方からも駆けつけた約150名が講演会と大忘年会を楽しんだ。
第1部は、神奈川県支部役員で日本李登輝学校台湾研修団卒業生の江成雅子さんが司会をつとめた。
冒頭、小田村四郎会長が開会の挨拶で、今上陛下の宝算79歳のお誕生日を祝福するとともに、李登輝元総統が大変お元気で活躍されていることや、この会に祝辞を寄せていただいたことを紹介した。また、安倍内閣の発足にも触れ、李登輝元総統が来日されたのは第1次安倍内閣時代の2007年で、招聘されたのが本日講師の中嶋嶺雄・国際教養大学学長だったことなどを紹介した。この開会挨拶を受け、柚原正敬・事務局長が李登輝元総統からの祝辞を読み上げると大きな拍手が巻き起こった(祝辞全文は下記に紹介)。
続いて、評論家でJET日本語学校理事長の金美齢氏が来賓として挨拶。まず「皆さん、今年の漢字はなんでしょうか、金美齢の金です」と切り出して会場の耳目を一瞬にして引き付け、「今日は中嶋先生に金メダルを差し上げたくてやってまいりました」と中嶋氏が12年間、アジアオープンフォーラムを開催して台湾との交流を図ってきたことや国際教養大学の優れた教育内容などを紹介しつつ中嶋氏にエールを送った。
その後、中嶋氏による「日台関係と日中関係」と題した講演に移った。中嶋氏は「日中国交40周年と台湾」「中国共産党18回大会の真実」「『中華世界』と東アジア」「『米中新冷戦』と中国の軍拡」「尖閣問題と『日中友好』」の5つの角度から日本・台湾・中国の関係を解き明かし、予定の1時間を超えて熱弁をふるった。
日中国交40年は、日本が中国を刺激しないように「低姿勢外交」を取り続けてきたツケが今の尖閣問題に現れた「中国にしてやられた40年」であり、今後は米中が「新冷戦」という関係を続けることを踏まえ、中国に立ち向かう日本の外交戦略の必要性を強調、講演が終わると万雷の拍手の中を降壇した。
続いて、現在、沖縄に台湾出身戦歿者の「慰霊の塔」を建立しようという動きについて、大阪府支部の近藤和雄事務局長と名古屋の「日台若手交流会」会長の加藤秀彦氏が登壇、近藤事務局長から慰霊の塔建立について説明した。
第2部の大忘年会でも、中嶋氏や金美齢さんなど講演会参加者のほとんどが忘年会に参加、1部の熱気が会場に満ちる中、来賓スピーチや大抽選会などが行われ、盛会のうちに閉幕した。
李登輝元総統 「祝辞」
「日台共栄の夕べ」にお集まりの小田村四郎会長はじめ会員の皆さま、今晩は。台湾の李登輝です。今年の「日台共栄の夕べ」は10回目となる節目の会だそうで、心から祝意を表します。また、この一年間の皆さまの台湾に対するご支援、台日関係促進におけるご努力に敬意を表します。
さて、本年も残りわずかとなりました。今年もいろいろありましたが、尖閣列島をめぐってのことが記憶に新しく、中国は今でも手に入れようと虎視眈々と狙っています。
しかし、尖閣列島は日本の領土であり、台湾のものでも中国のものでもありません。馬英九総統は台湾のものだと宣伝していますが、これは台湾と日本を離間させようと常に考えている中国を利するだけで、私は台日のために危惧しています。
尖閣問題で重要なことは、台湾は中国と一緒に処理してはならないということです。また日本は、領海侵犯を繰り返す中国に対して毅然とした姿勢を示すことなのです。
台日間に領土問題は存在せず、存在するのは漁業問題だけです。台湾は日本統治時代から尖閣列島海域を漁場としていました。ですから、台湾はアルゼンチンと烏賊釣り漁の協定を結んでいるように、台湾の漁民はそういう協定を日本との間で結びたいと望んでいます。このことを日本の皆さまにはぜひ理解していただきたいと思います。
ところで、先の衆議院総選挙では台湾に理解の深い安倍晋三先生率いる自民党が圧勝し、まもなく安倍内閣が発足します。
私の人格の基礎を作ったのは日本時代の教育で、特に私は後藤新平に学びました。「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして酬いを求めぬよう」という「自治三訣」に現れた後藤新平の精神をもって、総統として台湾を導いて参りました。
その点で、安倍先生はこの後藤新平の精神を理解する政治家だと思います。これまで以上に台日関係は緊密になるものと期待しています。
台湾と日本は兄弟のように、心の通う、仲のよい国です。今後も台日共栄の理念の下、貴会とはさらに提携を強め、両国のため、そしてアジア全体のために努力、邁進していきたいと考えております。
本日のご盛会と、来年における皆様のますますのご健闘をお祈りいたします。
2012年12月23日
李 登 輝