李登輝元総統が1月10日発売の月刊「Voice」2月号において、映画監督で映画「KANO」プロデューサーの魏徳聖氏とこの映画をテーマに対談されている。タイトルは「KANO精神は台湾の誇り」。
本会でもたびたびお伝えしてきているように、台湾で大ヒットし、アンコール上映もされた映画「KANO」は1月24日に日本での公開を予定している。それに先駆けての対談だ。
李元総統は台湾で映画が公開された直後の昨年3月、奥様とともにこの映画をご覧になっている。対談の冒頭でも「感動のあまり泣いてしまった」と感想を述べ、また「KANO」こと嘉義農林学校野球部が甲子園で準優勝した当時、「大人たちに交じって嬉しかった記憶があります」と、当時、9歳だったときの思い出も披露されている。
対談では、魏氏が映画「KANO」の原形となる史実を見つけたときのことや、監督をつとめた映画「セデック・バレ」や「海角七号」にも及び、3本ともご覧になっている李元総統との対話はうまくかみ合い、八田與一をめぐってはおおいに盛り上がる。その中で魏氏が「ほんとうは彼のことを映画にしたかったのですが、スケールが大きすぎて私の手に負えないと断念しました」と告白するなど、李元総統も魏氏も、これまであまり語られてこなかったエピソードを随所で話されている。
対談は「太陽花学運(ひまわり学生運動)」や台湾人アイデンティティ、東日本大震災時の日本の台湾への対応など、縦横無尽に広がっていく。そして最後に、魏氏が「『KANO』を通じて日本人に知って欲しいこと」を述べ、また李元総統も「日本人にいいたいこと」を述べて終わっている。日本人にとって、お二人からの最後のメッセージは肺腑をえぐられるように鋭く、そしてズシリと重い。
それにしても、お二人の気持ちが通じ合っていることがよく伝わってくるからなのだろうか、なんとも言えない清々しさを覚える対談だ。14ページという長さを感じさせず、最後まで一気に読ませる対談でもある。