今月15日から台湾で実施される予定の日本産食品輸入規制強化は、科学的根拠を欠いた、日本に対する政治的嫌がらせである。
台湾衛生福利部(衛生省)は7日の記者会見で、この輸入規制強化は台湾の消費者を守るためだと嘯いた。
しかし、原発事故発生後、特定の5県(福島、群馬、栃木、茨城、千葉)を生産地・加工地とする食品はすでに台湾への輸入が規制されてきており、今後も引き続き規制される見込みで変更はない。
また、日本国内で流通が認められている食品の残留放射線量の数値は、台湾が規定する数値よりも厳しい数値になっている。つまり、日本国内での流通が認められているということは、台湾が規定する残留値を下回っていることの証明だ。
7日の記者会見に同席した行政院のスポークスマンは、今回の規制強化の背景には、3月下旬に発覚した輸入食品の産地偽装問題があると指摘したが、この偽装問題は現在にいたっても「誰が、どこで」偽装したのかさえ判明しておらず、そもそも放射線残留の数値とは関係がない。
そして、何よりの問題は今回の規制強化の根拠となるための「科学的な」根拠が一切示されていないことだ。前述のとおり、特定の5県(福島、群馬、栃木、茨城、千葉)からの輸入はすでに規制されていることからも、今さら輸入規制を強化する根拠が見当たらないのである。
本会台北事務所が独自に入手した日本の農林水産省や衛生福利部の資料には、今回の規制強化を打ち出したのが総統の馬英九だということを匂わせる記述があり、ゴールデンウィーク中に来台し、与野党や政府関係者と面談した国会議員団の証言とも符合する。
15日からの規制強化が実施されると、すべての日本産食品には都道府県ごとの産地証明を添付しなければならず、一部食品(野菜、果物、水産品、乳製品など)については放射性物質の検査が義務付けられる。
この検査には数日を要するため、水産品をはじめ、新鮮さが商品価値の一部を構成する商品については実質的に輸入することが不可能となり、比較的保存に耐えうる商品についても、保管倉庫などのコスト増は自ずと台湾への輸出減少や価格にはね返るなど深刻な負の影響を及ぼすことは明瞭だ。
2013年の日本から台湾へ向けたの農林水産物・食品の輸出額は約193億台湾元で、日本にとって台湾は第3位の輸出先となっている。しかし、輸入規制強化によって、結果的には、台湾の消費者、台湾企業、果ては台湾経済や日台間の貿易などより大きな局面に悪影響を及ぼす恐れがある。
繰り返しになるが、日本国内で流通が認められている食品の放射能残留数値規制は、台湾よりも厳格であり、決して台湾の食の安全を脅かすものではない。
馬英九は一刻も早く、科学的根拠を欠いた政治的嫌がらせとも言える規制強化措置を撤回し、節度ある規制による食の安全確保の立場へ立ち返ってもらいたい。
李登輝総統曰く「あれは日本が嫌いな馬英九が、他にやることがないからやっているだけだ」。
【文責 本会台北事務所】