20150826『Voice』9月号に掲載された李登輝総統のインタビュー記事「日台新連携の幕開け」の内容を巡り、台湾では国民党陣営を中心に大きな批判が起きているが、ネット上で記事全文の中国語訳が掲載されたことで、記事の一部だけを取り上げた偏向報道ではないかと指摘する声が出始めている。

「【島弧・黑潮】―Japan Broadcast 」のフェイスブック上に公開された中国語訳はすでに4,000件以上シェアされ、5,000件以上の「いいね!」が押されている。

『Voice』9月号の記事をめぐっては、李登輝総統の「70年前まで日本と台湾は『同じ国』だったのである。『同じ国』だったのだから、台湾が日本と戦った(抗日)という事実もない」、「当時われわれ兄弟は、紛れもなく『日本人』として、祖国のために戦った」などの発言が取り上げられ、馬英九や洪秀柱をはじめとするブルー陣営が中心となり李総統を激しく非難している。

しかし、このほど中国語訳の全文が公開されたことで「台湾に抗日という事実はない」、「日本人として祖国のために戦った」といった表現は、記事全体のわずかな部分にしか過ぎず、こうした表現も李登輝総統が日本統治下の台湾に生まれ、成長した背景を勘案すれば決して不合理ではないという指摘や、文章の一部だけをあげつらった偏向報道だという批判も出始めている。

今回の『Voice』騒動の発端は、8月20日に国民党寄りの聯合晩報・蔡佩芳記者が報じたものだが、この記者が故意に李登輝総統のインタビュー記事の一部だけを切り取ってセンセーショナルな記事に仕立て上げたのか、日本語の読解力不足による飛ばし記事なのかは判然としないが、いずれにせよネット上で全文が公開されたことで、この記者の職業倫理に批判が集まりそうだ。