ジャーナリストの櫻井よしこ氏は9月19日、台北市内にて開催された台湾安保協会(羅福全理事長)が主催する「両岸関係とアジア太平洋地域国際平和セミナー」で「日本の平和安全法制と日台の未来」と題して基調講演した。
9月24日発売の「週刊新潮」に連載している「日本ルネッサンス」(673回)でそのことをつづっている。櫻井氏が会場に着くや「台湾の関係者らが『安保法制成立、おめでとうございます』と次々と声を掛けてきた」ことに驚かされたという。
櫻井氏は「中国の脅威を生々しい現実として、また重圧と感じている人々にとって、日本の安保法制の議論は到底、他人事とは思えなかったのであろう」と、台湾の人々の気持ちを忖度する。
そして、このセミナーの冒頭で蔡英文・民進党主席が講演した内容を紹介しつつ、中国の南シナ海の7つの島の埋め立て問題に言及、台湾の命運が危うくなるとともに「台湾の重要性は単に戦略上のことではないという事実を、日本は今こそ認識しなければならない」と警鐘を鳴らす。
セミナーの翌日には、許世楷・盧千恵ご夫妻に台中の寶覚禅寺をご案内いただいたことなどをレポートしているが、最後に、本会が2013年に「政策提言」として提唱した日台関係基本法(日本版台湾関係法)の最近の動きに触れ、「日本の明確な意思表示は日台双方の国益のみならず、アジア全体に希望を与えるとの思いを強くした」と締めくくっている。
櫻井氏をはじめ日台交流に尽力する人々の多くは、中国による併呑の危機にさらされている台湾の現状を知り、日本が「非政府間の実務関係」と位置づける台湾とは法定関係が何もないというこの現状を切り拓くのが日本版台湾関係法であることを知っている。
だから、李登輝元総統をはじめ羅福全・台湾安保協会理事長や許世楷・元台北駐日経済文化代表処代表など、安保法制の成立に賛意を表する台湾の人々が日本版台湾関係法の制定に賛意を表しているのだ。
ちなみに、この台湾安保協会主催の2011年9月のセミナーには、下野していた安倍晋三総理が現在の菅義偉・官房長官を伴って出席し、基調講演を行っている。その講演の中で「日本と台湾はともに共通の価値観を持つ重要なパートナー」と表明し、「我々は手を携えて、いまだに民主主義を手にしていない世界の人々に、その価値を伝えていかなければなりません。それは日本人と台湾人に課された責務であると、私は固く信じております」と述べている。
また、櫻井よしこ氏が「日本の平和安全法制と日台の未来」と題した基調講演はすでにYouTubeにアップされている。じっくりと耳を傾けたい。