1月21日午後3時、平成21年(2009年)6月25日の提訴から約6年半を経て、NHK「JAPANデビュー」裁判における最高裁判所の判決が下された。
この裁判は、日本の台湾統治を扱ったNHKの番組「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの“一等国”」が名誉毀損に当たるとして、番組に出演した台湾原住民(パイワン族)の高許月妹さんがNHKに損害賠償を求めた訴訟の上告審。
最高裁第一小法廷の大谷直人裁判長は「放送によって原告の社会的評価が低下したとはいえない」として、NHKに約100万円の支払いを命じた二審の東京高裁判決を破棄し、高許月妹さんの請求を棄却、NHKの勝訴となった。
午後2時前から最高裁の南門には傍聴券を求めて67名が並び、抽選に当たった46名が第一小法廷に入った。
午後3時少し前、報道陣による冒頭撮影のため第一小法廷に大谷直人裁判長をはじめ、櫻井瀧子、山浦善樹、池上政幸、小池裕の5人の裁判官が入廷。2分間の撮影が終わると、大谷裁判長が主文を読み上げた。主文は3行のみので、最高裁に上告したのはNHK(日本放送協会)なので上告人はNHK、被上告人は高許月妹さん。
<原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。>
東京高裁のように、判決を導いた「理由」も述べるのかと思って待っていると、大谷裁判長は主文を読み上げるや「閉廷」を宣言しそくさくと退廷、傍聴席からは即座に「不当判決!」「恥知らず!」などの怒号が飛び交い騒然となった。
先に最高裁が異例の口頭弁論を開いたことで、高許月妹さんを弁護した高池勝彦弁護士を団長とする荒木田修、尾崎幸廣、田中禎人、山口達視の各弁護士はある程度の予想はしていたというが、やはり落胆を隠せない様子だった。
判決後、近くの全国町村会館で開かれた報告会には約100名が参加し、高池弁護団長などが判決やその理由について解説されたが、会場は憤懣やるかたないという雰囲気に満ち、台湾の人々に合わせる顔がないといった声も聞かれた。
それにしても、判決文の「理由」をよく読んでみると、「テレビジョン放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否か」をめぐって「一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断すべきである」とした最高裁が平成14年10月に下した判決に基づいて判決を下したものの、採用したのは番組を制作したNHK側の主張だった。
しかし、東京地裁に提訴した小田村四郎・本会会長をはじめとする1万355人の原告こそまさに「一般の視聴者」の声であることに疑問の余地はない。それにもかかわらず、「一般の視聴者」の声を取り入れず、番組制作者の声を採用して「第1審判決は正当」と判断したことは整合性に欠け、大きな違和感を覚えざるを得ない。
この裁判の原告でもあった日本文化チャンネル桜の水島総社長は、判決後、やはり当初からの原告の一人である本会の柚原正敬・事務局長をゲストに、緊急番組として「許すまじ最高裁不当判決」と題する約30分の番組を収録、判決の問題点や高士神社再建による日台の交流について取り上げ、併せて台湾の総統選挙と立法委員選挙などにも言及した。
◆NHK集団訴訟敗訴:許すまじ最高裁不当判決、草莽崛起の道とパイワン族への配慮[桜H28/1/21]
この番組で、高許月妹さんに100万円の損害賠償は勝ち取れなかったものの、せめて日本人の誠意を示したいと水島氏が言及している。皆さまの真心を台湾にお届けすべく、ここに改めて「支援募金」要綱をご紹介したい。
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