日本時代、台北にあった4つの高等女学校のうち、建物が現存しているのは「第一高女」から「第三高女」までの3ヶ所だ。

台湾総督府の斜向かいに位置した「台北州立第一高等女学校」は、当時も戦後もエリート女子校としてその名を馳せる。現在の名称は台北市立第一女子高級中学(高級中学は高校の意)で、ときに台湾大学への合格者数では、やはり台湾ナンバーワンの進学校とされる男子校の台北市立建国高級中学をも凌駕する名門だ。北一女の生徒は、濃い緑色の制服から「小緑緑」とも呼ばれ、受験生の憧れの対象となっているという。

「台北州立第二高等女学校」は戦後、第四高女とともに北一女に吸収合併されるかたちで消滅した。しかし、建物は現在も立法院として使われている。

20160216-03

日本時代の第二高女を写した一葉(台湾大学図書館の資料より)

20160216-02

こちらは絵葉書版(台湾大学図書館の資料より)

「台北州立第三高等女学校」は戦後、台北市立中山女子高級中学と名前を変えたが、こちらも北一女に準ずる進学校として知られている。卒業生には、李登輝総統夫人の曽文恵さん(第三高女時代の卒業)、陳水扁総統夫人の呉淑珍さんと二代続けてファーストレディを輩出したほか、新総統となる蔡英文さんも卒業生だ。

西門町にあった「台北州立第四高等女学校」は上述の第二高女と同様、戦後に北一女に吸収合併されるかたちで消滅。建物も現存していないという。

2月15日付の自由時報によれば、「第一高女」と「第三高女」の日本時代の建物については、すでに台北市の古蹟に指定されているものの、立法院として使われている「第二高女」の建物だけが未だに古蹟指定を受けていない。報道では、このことについて各界の意見を紹介するとともに、5月の新政権発足に伴い、立法院の移転についての議論が俎上に載っていることなどを伝えている。翻訳は本会台北事務所。

また、日本時代の台北にあった高等女学校については、本会台北事務所のブログにも掲載しているので、こちらも参照されたい。


立法院の前身、日本時代の高等女学校校舎は未だ古蹟指定されず

20160216-01

上空から立法院の建物を俯瞰する。日本時代の写真にも残る特徴的な三角屋根の建築が右端にみえる(自由時報の報道より)

台湾の最高立法機関たる立法院は、台湾の民主主義と自由の精神の象徴でもある。1960年に現在の場所に移転して以来、日本時代の「台北州立第二高等女学校」校舍を使用してきた。日本時代の校長室は現在、立法院長の応接室となり、運動場は駐車場となっている。

築100年近い老建築ではあるものの、立法院はこれまで古蹟や歴史建築の登録を申請したことがなく、文化資産としての身分を有していないのが現状だ。

先月の総統・立法委員選挙後、にわかに立法院の台中への移転が話題となったが、こうした歴史建築などに詳しい専門家によれば、立法院が移転するしないにかかわらず、立法院は自発的に「第二高女」の旧校舎を古蹟申請し、文化資産の保護・顕彰に務めるべきだと指摘する。

立法院を構成する主な建物は中山南路沿いの正門に面した部分だ。建築は1927年(昭和2年)、当時の台北第二高女の校舎として建てられ、大東亜戦争中は米軍の空襲によって損傷した。戦後に修復され、台湾省政府農林庁の庁舎として使われたが、60年代に農林庁が南投県の中興新村へ移転したことに伴い、立法院として使われるようになった。現在、この土地は台北市政府が学校用地として登記しており、立法院は賃貸料として毎年5,200万元あまりを台北市政府に支払っているという。

文化部の資料によれば、日本時代の台北州には4ヶ所の高等女学校があった。「台北州立第一高等女学校」は現在の台北一女であり、日本時代に建てられた「光復楼」は台北市指定の古蹟となっている。また、「台北州立第三高等女学校」は現在の中山女高で、こちらも「逸仙楼」が1997年に市指定の古蹟となった。「台北州立第四高等女学校」の建物はすでになくなっており、「台北州立第二高等女学校」を前身に持つ立法院の建物だけが未だに古蹟の指定を受けていない状況だ。

国立台湾博物館のスタッフによれば、台北州内務部土木課の技師だった篠原武男の設計による第二高女の建築の特色は、大正期と昭和期双方の風格を兼ね備えていることにあるという。鉄筋コンクリート構造でモダニズム建築様式の三階建と、三線道路(現在の中山南路)に面したレンガ造りで歴史主義様式の二階建を組み合わせた校舎は、第一高女や第三高女には見られない様式だという。

これまでも立法院内では手狭な問題が指摘されており、立法委員が連署して別の場所に新しい立法院の建物を作る移転計画が提出されたことがあったが、今に至っても院内での合意は得られていない。ただ、今般の政権交代を受けて、民進党内からもすでに立法院の移転の声が出ており、将来的には立法院が現在地から移転する可能性も少なくない。

前述の国立台湾博物館のスタッフによれば、過去に話題となった立法院の移転案には、現在の建物を取り壊して新たに建築する計画も含まれていたため、これまで立法委員の間から積極的に文化局に対して古蹟の指定を求める声が出て来なかったという。ただ、今後、国会が移転するか否かにかかわらず、新たに就任した立法委員は、第二高女の旧校舎の古蹟指定に向けて声を上げることで、文化資産の保護を進めてほしいと話している。

【台湾紙・自由時報の報道を本会台北事務所で翻訳したものです】