20160225-03

立法院における質疑では「私の立場は台湾独立」だと明言した林昶佐

先の立法委員選挙で当選した時代力量のフレディ・リムこと林昶佐委員が立法院で初質問に立ち、台湾の国際スポーツ関係などでの参加名称「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」について、「馬総統の『大陸と台湾は対等』との説明について、『ならば、国際競技会で、(中国代表ではなく)チャイニーズ北京の呼称にさせねばならない』などと論じた」という。「サーチナニュース」が報じているので下記に紹介したい。

林昶佐議員は、ロックバンド「閃霊(ソニック)」の結成メンバーでボーカルを担当し、李登輝元総統自ら指導する李登輝学校の第一期生で、ひまわり学生運動のメンバーとしても活動、2015年1月25日に成立した時代力量の創設メンバーとなり、現在、副主席をつとめている。

立法委員選挙では中国国民党の「鉄票区」といわれる台北市5区から出馬し、6期目を目指していた国民党の林郁方議員に立ち向かって8万2,650 票を獲得、選挙前の予想を覆し、林郁方議員の7万6,079票に約6,500票の僅差で勝っている。

立法院での初質問のテーマが「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」だったことはフレディらしい。質疑応答の詳細をメルマガ「台湾の声」で紹介しているので、別途ご紹介したい。

「台湾が国際競技会で中華台北(チャイニーズ・タイペイ)と呼ばれるならば、そして大陸側と対等と言うなら、大陸のチームは中華北京(チャイニーズ北京)」と呼ばねばならない」と舌鋒鋭く質問し、答弁した張善政・行政院長も夏立言・大陸委員会主任委員(大臣に相当)もたじたじだった様子が手に取るように分かる。

また、質疑の最後で張行政院長に対し「78年前の1938年、中華民国空軍が台北の松山を空爆したのはまさに今日です。中華民国空軍はソ連軍と合同で台北に280発もの爆弾を投下しました。このことは台湾の歴史教科書では触れられていません。かつて台湾を空爆した中華民国が戦後になって台湾に逃げ込んできた。歴史というものはこのように絡み合っているものです。行政院長は正義の観点から歴史を直視、反省し、新しい政府に引き継ぐことを望む」と呼びかけた。

今後、時代力量主席の黄國昌議員をはじめ洪慈庸議員なども質問に立つであろうから、どのようなテーマで馬英九政権に迫るのか興味津々だ。彼らの質疑が台湾のあるべき姿を映し出していくと期待される。また、5月20日以降、蔡英文政権になってからの動きにも注目したい。


「中台平等と言うなら、国際競技会で『チャイニーズ北京』のチーム名にさせろ」
台湾の新人議員が馬英九政権を鋭く批判

【サーチナニュース:2016年2月24日】

1月16日の選挙で当選し、台湾立法院委員(国会議員)に2月1日に就任した林昶佐議員が、23日、初の質問に立ち、馬英九政権の対中政策を厳しく批判した。馬総統の「大陸と台湾は対等」との説明について、「ならば、国際競技会で、(中国代表ではなく)チャイニーズ北京の呼称にさせねばならない」などと論じた。

■若者が政党結成し、初の国会選挙で当選、議場で私は台湾独立派と明言

林議員は、若者らを中心とする既成政党への反発を背景に結成された政党「時代力量(時代の力)」に所属。同党結成は2015年1月25日で、初めて臨んだ16年1月16日の国会議員選挙で、5人の当選者を出した。

台湾メディアの聯合新聞網によると、林議員は質問の際にまず、「私は台湾独立派だ」と明言した。

さらに、馬英九総統が大陸側の「92コンセンサス」により、「(台湾海峡の)両岸は対等な関係」と決着したと説明していることについて「台湾が国際競技会で中華台北(チャイニーズ・タイペイ)と呼ばれるならば、そして大陸側と対等と言うなら、大陸のチームは中華北京(チャイニーズ北京)」と呼ばねばならない」と指摘した。

■答弁から矛盾引き出しさらに追及、国民党の主張は「二国論」そのものだ。

馬英九政権における大陸との交渉の責任者である夏立言・大陸委員会主任委員が、「政府は国際社会で正式な国名、正式な参加方式を求めている。これは政府の努力目標だ」などと答弁すると、林議員は「国際社会で中華民国と中華人民国の共存を目指すなら、それは二国論ではないか」と追及した。

張主任委員は「92コンセンサス」について、政府は一貫して「一中各表(双方とも『一つの中国』は堅持しつつ、その意味の解釈は各自で異なることを認める」を非常に強調していると説明。馬英九総統が15年11月に中国の習近平国家主席と会談した際にも、会談の後半で「一中各表」に言及したと述べた。

■中台双方が「玉虫色」の解釈、当時の政権責任者は「コンセンサス」の存在そのものを否定

なお、馬総統は「92コンセンサス」には「一中各表」が含まれると主張しているが、中国側は「1つの中国の原則」の確定だけを主張している。

「92コンセンサス」は、香港で締結されたとされる1992年には発表されず、2000年の総統選で台湾独立を綱領に盛り込んだ民進党の陳水扁候補が当選した直後、就任前という「間隙」期間に、国民党所属で陳水扁政権誕生による退陣が確実視されていた蘇起・大陸委員会主任委員が「存在する」と表明した。

92年当時に現職だった李登輝元総統、黄昆輝行政大陸委員会元主任、辜振甫海峡交流基金会理事長が次々に「92コンセンサスなどは存在しない」と表明した。


フレディー・リムの国政初質問:政府は「チャイニーズ・タイペイ」に甘んじるのか?

【メルマガ「台湾の声」:2016年2月24日】

台湾では、1月16日に選出された立法委員が2月1日に就任し、新国会が開かれ、新人立法委員たちの鋭い質問に注目が集まっている。

2月23日、「時代力量」のフレディー・リムが質問に立ち、その中で「チャイニーズ・タイペイ」という名称についての政府の対応について質した。ここではその部分を紹介する。

【張善政・行政院長】私たちの憲法によれば、私たちがひとつの国家で、対岸(中華人民共和国)がひとつの国家であるということは認めません。

【フレディー・リム立法委員】つまり、私たちが国家名義ではなく「チャイニーズ・タイペイ」を用いているように、「対岸」もひとつの国家ではないというわけですね。

あなたがたの考えでは、私たちが特別で敏感な状態にあって、私たちが矮小化されて、「チャイニーズ・タイペイ」と呼ばれていて、「対岸」は、矮小化されず、「中国」と呼ばれている、ということになります。

したがって、あなたがたの論理と、馬総統・馬政権の理念からすれば、それは、私の論理ではありませんが、あなたがたの政策を徹底的に進め、あなたがたが言っている「対等・尊厳」というのを実践するのであれば、まさに「対岸」のことを、「チャイニーズ・ペキン(中華北京)」であれほかの呼び方であれ、矮小化しなければならないのです。

つまり、彼らが「チャイニーズ・ペキン」と呼ばれ、私たちが「チャイニーズ・タイペイ」と呼ばれる。こうすれば、馬総統の言うところの、「両岸は国と国ではない特殊な関係である」という状況を実現できるのです。

【張善政院長】多くの国際組織において、私たちがどうしたいという希望が通るわけではありません。

【フレディー・リム委員】もちろん、私も理解しています。馬総統が「対等で尊厳のある」としている点について、少なくとも、あなたがたの心の中で、そのような要求を持たなければならないのではないかということです。

私が知りたいのは、「対等・尊厳」ということはあなたがたが言ったことなのですから、あなたがたは心の中に、いつか「対岸」を圧倒し、彼らを「チャイニーズ・ペキン」にしてやる、あるいは、彼らに五星紅旗を降ろして、オリンピック委員会の旗を掲げさせる、彼らに国家を歌わせず、ほかの代替歌を歌わせてやる、という想いを持っているのかということです。

「対等・尊厳」ということを8年間、言ってきたわけですから、いつかは、これを実現するというふうに考えたことがあるのでしょうか。

【張善政院長】国際組織が、どのように「両岸」の名称を処理するかについて、最終的な決定権は彼らにあります。

ただ、私たちの国家について言えば、「チャイニーズ・タイペイ」が、現在のところ、私たちが国際的なスポーツの試合に加わることのできる、ひとつの名称であり、私たちはこういった国際組織の現実から出発する必要があるのです。

【フレディー・リム委員】私の理解では、私が先ほど申し上げた、国際映画祭、スポーツの国際試合意といった国際交流において、台湾人民は、いずれも実力によって事実上の参加をしています。ですから、私は、事実上の参加についてあなたと議論しているのではなくて、私が論じているのは尊厳についてです。

私たちは国際的な試合に参加できますが、私たちの名称が矮小化されているという点です。あなたがたにとって、「両岸は国と国との関係ではない」から、「チャイニーズ・タイペイ」という名称でもかまわない、もともと国家ではないのだから矮小化されていない、というのであれば、同じ理屈で、「対岸」も「チャイニーズ・ペキン」と呼ばれるべきではないでしょうか。

ところが、あなたがたは、このように主張する勇気がないし、そう考える勇気もないのです。このような状態で、なにが「対等・尊厳」なんでしょうか。

【夏立言・行政院大陸委員会主任委員】私どもは、一貫して国際社会において正式な国名を名乗り、正式な方式で参加することを勝ち取ることに努め、これが私どもの努力の目標です。

【フレディー・リム委員】つまり、「中華民国」ということですか。

【夏立言主任委員】そうです。

【フレディー・リム委員】やっとこの言葉が出ました。もしあなたの胸の中の希望が、将来、国際社会において、「中華民国」と「中華人民共和国」が同時に存在することであるならば、それは、「2つの中国」という主張です。なおかつ、これは、今、ネットで言われている「華独」です。

 これはあなたがた2人の胸のうちにある考えであり、私の考えではありません。私は「台独」です。でも、私は、あなたがたが「華独」であることに敬意を表します。あなたがたは少なくとも、馬英九総統とは違うのですから。

【夏立言主任委員】私どもは、「中華民国」の憲法にもとづいて求めているものであり、実務においては、国際社会においては、異なる優先順位があります。たとえば、「中華民国」かもしくは「台湾」であれば、私どもは、いずれも受け入れることができます。