正岡子規国際俳句賞を受賞した台湾を代表する俳人で、2006年には叙勲も受けている黄霊芝氏が3月12日に亡くなられた。
かつて黄霊芝氏が『黄霊芝小説選―戦後台湾の日本語文学』(2012年6月、溪水社)を上梓されたおり、黄氏と親交深いエッセイストの酒井杏子さんが下記のように紹介していました。この一文をご紹介することをもって謹んで哀悼の意を表します。
また、朝日新聞はこれまで台湾の俳句界のことなどをよく報じていますが、その訃報記事も下記にご紹介します。
<黄霊芝氏は台湾を代表する俳人として台北俳句会を主宰し、台湾における日本語の俳句の存在を内外に知らしめるとともに、戦後の台湾の日本語文学および文芸を牽引してきた第一人者だ。
日本ではそうした氏の功績から、台湾ならではの季語を選定・解説した『台湾俳句歳時記』刊行によって2004年・第3回正岡子規国際俳句賞を、また2006年には「日本文化紹介に寄与した」として旭日小緩賞を授与し、高く評価してきた。
そのため我が国内においては、文芸家・黄霊芝というよりむしろ日本語を自在に駆使する台湾の俳聖としてのイメージが定着し、実際には氏が俳句の他に川柳・短歌・随筆・評論・翻訳・小説の幅広い分野で日本語作品を創出し、また中国語、フランス語での創作も手がけているのを知る人は思いのほか少ない。>
黄霊芝(こう・れいし、本名:黄天驥)
3月12日、台北市内で死去、87歳。
昭和3年、台南生まれ。台湾大学外文系中退。
1970年に「台北俳句会」を設立して会長に就任、毎年『台北俳句集』を刊行した。また、彫刻の「台陽美術協会」や「台湾歌壇」にも所属してその非凡な芸術的才能を発揮していた。
2003年には、台湾独自の季語を集めた「台湾俳句歳時記」が日本で出版。ほかに渓水社から『黄霊芝小説選―戦後台湾の日本語文学』などが出版されている。
2006年、日本政府より旭日小綬章を受章。