台湾紙・蘋果日報は20日夜、スクープとして5月に発足する蔡英文政権の駐日代表に、民進党重鎮で京都大学出身の謝長廷・元行政院長が決まったと報じた。
報道は午後11時すぎ(台湾時間)、蘋果日報のウェブサイトに掲載されたもの。複数の台湾メディアや日経新聞なども蘋果日報を引用するかたちで報じた。
ただ、自由時報や中央社は、謝長廷事務所主任による「噂の段階ではコメントできない」という発言も報じている。
謝氏は1946年生まれの69歳。台北市出身で台湾大学法律系在学中に司法試験合格。京都大学に留学し修士号を取得。美麗島事件の弁護を担当したことで政界入りし、1986年、民進党結党の際の中心メンバーとなる。陳水扁政権で行政院長を務め、2008年の総統選挙に出馬したものの、国民党の馬英九に敗れた。
下記に蘋果日報の報道要旨を翻訳したものを紹介する。
【独占】新政府の駐日代表に謝長廷氏
新しく発足する蔡英文政権の人事にまた進展があった。
ここ最近、蔡英文・新総統が駐日代表に謝長廷・行政院長を任命する意向がささやかれていたが、弊紙(蘋果日報)が入手した最新の情報によれば、謝氏は今月中旬、すでに自ら蔡氏に対して受諾する旨を伝えたといい、蔡氏もまた先週中に謝氏の駐日代表内定にゴーサインを出したという。謝氏は行政院長を経験した初めての駐日代表となる。
消息筋によれば、謝氏は先週、駐日代表の候補として名前が取り沙汰された際には淡々としており、複数の側近に対して「考えられない」と漏らすのみだったという。
ただ、数日後には自派閥のメンバーに駐日代表を受ける意向を漏らすとともに、口外しないよう求めたという。
奇しくも謝氏は16日に更新したフェイスブックに「最近、(英語版の他に)日本語版も開設したほうがいいとアドバイスしてくれた人がいたのですが、労力が限られており、軽々しく始めるわけにはいきません」などと書き込み、18日には日本から進出したラーメン店での写真を掲載したことから、ネット上では「謝氏が新しい駐日代表なのでは」と話題になっていた。
民進党関係者によれば、蔡英文氏が着目したのは、謝氏自身の意向や日本の政界との人脈のほか、謝氏がかつて提案した「憲法コンセンサス」による両岸政策が日本側にも受け入れられやすいのではないかという点だった。
さらに、昨年の蔡氏の訪日の際には、国家安全会議の邱義仁・元秘書長が水面下でバックアップしており、謝氏の駐日代表決定には邱氏の同意も必要だろうと話している。
また、日本事情に詳しい別の関係者によれば、日本の政界では謝氏が駐日代表になることを非常に期待しているという。
日本留学経験者で流暢な日本語を話すほか、日本の政界との関係も良好であるうえに行政院長経験者であること、蔡英文氏と直接話せる立場にあることなど、謝氏を駐日代表に据えることは新政権が日本を重視していることの表れだとしている。
【台湾国内での報道を本会台北事務所で翻訳、まとめたものです】