31日付の台湾紙・自由時報の紙面から

蔡英文新政権の人事が続々と漏れ伝わってきている。台湾紙・自由時報は31日付の朝刊トップで「外交新布陣 呂秀蓮元副総統が駐パナマ大使、蘇貞昌が駐シンガポール代表に内定」の見出しで大々的に報じた。

報道は、呂秀蓮元副総統が駐パナマ大使、蘇貞昌が駐シンガポール代表、さらに現在駐イタリア代表の高碩泰を駐米代表に、元外交部長(外相)の黄志芳を駐インドネシア代表に据えるという内容だ。

この内容は自由時報の独占スクープとして報じられた。聯合報などは、民進党の阮昭雄スポークスマンが「事実ではない」と否定していると報じているが、自由時報でこの記事を書いたのは政界に太いパイプを持つ看板記者の鄒景雯氏で、内容の信憑性は高いものとみられる。

これらの人事が確定すれば、民進党の「四天王」と呼ばれた重鎮のうち3人までが中央の政治を離れることになる。下記に自由時報の記事と聯合報に掲載された蔡英文政権の人事一覧を紹介したい。


「外交新布陣 呂秀蓮元副総統が駐パナマ大使、蘇貞昌が駐シンガポール代表に内定」

【鄒景雯/台北】高碩泰が駐米代表に内定 黄志芳は駐インドネシア代表

新政権はすでに斬新な外交布陣を敷く人事を固めた模様だ。消息筋によると元副総統の呂秀蓮が駐パナマ大使、現在駐イタリア代表を務める高碩泰がすでに駐米代表として内定したとのことだ。元行政院長の謝長廷は駐日代表、元行政院長の蘇貞昌が駐シンガポール代表、元外交部長の黄志芳が駐インドネシア代表とされている。

四天王のうち3人が在外公館へ 権力分配の妙案
これらの外交人事について、記者が確認したところによれば、当事者たちはそれぞれ蔡英文氏から意思の確認を受け、肯定的な回答をしているもようで、順調に人事が進められるものとみられる。民進党内の重鎮が重要国に駐箚して台湾外交を支えることは、同時に権力の分配や新政権の政策路線に符合するものとされている。

パナマ外交 呂秀蓮大使に大きな使命
先日ガンビアが中国と国交を樹立したが、目下台湾と国交を有するパナマはその動向が不透明で、新政権も関心を寄せているという。呂秀蓮氏は外交に携わることに意欲を見せており、パナマの戦略的意義を理解して大きな使命感を持っていると漏れ伝わってきている。

米国は台湾にとって最も重要な友好国であり、蔡英文の考えでは一歩一歩着実に対米外交を進めるのが得策とのことから、職業外交官の高碩泰を抜擢した。海外での経験も豊富で、特に経済や貿易に関する職務が長かったことから、台湾が今後米国とTIFA(貿易および投資の枠組み協定)やTPP加入の際の交渉に手腕を発揮することが期待される。

謝長廷と蘇貞昌はそれぞれ日本とシンガポールへ 適材適所の人事
謝長廷と蘇貞昌もそれぞれも日本とシンガポールへ派遣される。謝長廷は京都大学への留学経験もあり、最近ではすでに個人的なあいさつ回りも始めているといわれ、駐日代表就任への準備が進められているとされる。蘇貞昌は過去にリー・クアンユーと家族ぐるみの付き合いがあり、お互いにシンガポールと台湾を何度も訪問しあっている。行政院長在任中にもシンガポールを重視する発言をしており、シンガポール側も歓迎のようだ。

「新南進政策」は蔡英文外交の重要な任務のひとつであり、シンガポールとは両国の有効の基礎をさらに強化する必要があるほか、東南アジアにおけるもう一つの大国インドネシアは近年台湾との関係で労働力の輸入や漁民の権益など問題も起きており、よりいっそうのコミュニケーションが求められている。インドネシア外交を託された黄志芳のは外相経験もあるが、道は険しいものと見られる。

【3月31日付の台湾紙・自由時報の報道を本会台北事務所で翻訳したものです】


31日付の台湾紙・聯合報は、消息筋から漏れ伝わってきた情報などをまとめた蔡英文・新政権の閣僚名簿を掲載した。あくまでも漏れ伝わってきた内定情報のため、確定したものではないが、参考までにご紹介する。注記がないものは消息筋からの情報。

行政院長:林全(確定)

行政院副院長:林錫耀

法務部長(法相):邱太三(本人が蔡英文に意思を確認されたと発言)

行政院政務委員:張景森、林萬億、許璋瑤

農業委員会主任委員(閣僚級):曹啓鴻(本人が意思を確認されたと発言)

総統府秘書長:葉菊蘭(本人は否認)

総統府副秘書長:劉建忻

総統府弁公室主任:詹志宏

国家安全会議秘書長:呉釗燮

国家安全会議副秘書長:陳俊麟

国家安全会議諮問委員:姚人多、傅棟成

民進党秘書長:洪耀福

外交部長(外相):李大維

財政部長(財相):許虞哲(本人は意思確認がないと発言)、朱澤民

交通部長(国交相):賀陳旦(本人は噂にすぎないと発言)

金融管理委員会主任委員(閣僚級):黄天牧

教育部長(文科相):陳良基(本人は確率が低いと発言)

銓敘部長(人事院長):施能傑(本人は聞いていないと発言)

科技部長(科学技術相):呉政忠

駐米代表:高碩泰

駐インドネシア代表:黄志芳

駐日代表:謝長廷(民進党は否認)

駐パナマ代表:呂秀蓮(民進党は否認、本人も考えたことがないと発言)

駐シンガポール代表:蘇貞昌(民進党は否認、娘が父に打診がないと発言)