昨年7月14日、長野県の松本市と高雄市は「健康・福祉・教育分野の交流に関する覚書」を結びました。
これは、長野県の阿部守一(あべ・しゅいち)知事が2012年(平成24年)11月1日に高雄市の陳菊市長と「教育・観光交流覚書」を結んだ際、阿部知事と陳市長の間で松本市と高雄市の交流を推進することでまとまったと言います。
両市が結んだ都市間提携の主な内容は「高齢社会への対応を重要課題とし、健康・福祉に関する施策の情報交換や研究を図り、具体的な協力を積極的に推進する」「教育交流を積極的に推進する」というもの。
日台の都市間提携で「健康・福祉に関する施策の情報交換や研究」という内容が謳われるのは珍しい。松本市のホームページをみると、菅谷昭(すげのや・あきら)市長は信州大学医学部出身の外科医。チェルノブイリ原発事故の医療支援活動に参加し、ベルラーシ共和国の首都ミンスクの国立甲状腺がんセンターで小児甲状腺がんの外科治療に従事していたことから、長野県衛生部に採用され、衛生部長を経て、平成16年(2004年)に松本市の市長に当選している。
このような菅谷市長のキャリアを背景に「健康・福祉・教育分野の交流に関する覚書」が結ばれたようだ。
3月31日、陳菊・高雄市長は行政や医療関係者ら28人で長野県を訪れ、4月1日は阿部知事を表敬訪問。2日は松本市を訪問して菅谷市長が催した松本城本丸庭園における歓迎茶会に臨み、3日は諏訪地方の「御柱祭」を視察し、5日に帰国するという。下記に中日新聞の記事をご紹介したい。
ちなみに、3月14日に宮城県の栗原市と台湾の南投市が「国際友好交流協定」を締結したことで、日台の姉妹都市や友好交流都市の提携は1979年(昭和54年)以来、45件(本会調査)となっています。
特に顕著なことは、37年間に結ばれた45件のうち2012年以降の5年間で結ばれた提携数が27件もあることです。実に6割に及んでいます。いかに近年の日台関係が良好にあるかを示しています。
その理由は大きく2つあるようです。1つは、東日本大震災の折の台湾からの多大な支援が挙げられます。これによって、日本人は台湾についての認識を深め、信頼感を増したようです。それは、台湾に御礼を言いたいと修学旅行で台湾を希望する高校生が急増したことにも現れています。
もう1つは、台湾を重視する安倍総理の姿勢にあるようです。本会メールマガジン「日台共栄」誌上などでも何度かお伝えしているように、安倍総理は東日本大震災2周年追悼式のときには「台湾は世界のどの国よりも多額の200億円を超える義援金を贈ってくれた大切な日本の友人」と表明し、戦後70年談話でも「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々」と述べるなど、台湾を「基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人」(参院・平和安全法制に関する特別委員会)と位置づける発言を繰り返しています。
これまで日本の自治体は中国の自治体と姉妹提携など都市間提携を結ぶことが少なくなく、中国とは約360件と言われていますが、近年はほとんど結ばれていないようです。逆に、上に述べたような背景を基に、台湾との提携数が急増している現状です。
蔡英文政権は日本重視政策を取ると表明し、蘇嘉全院長を会長に立法院の国民党系と民進党の日本交流議連が超党派議連をつくるなど、対日政策の基盤づくりは着々と進んでいるようですので、今後恐らく、自治体間の交流はますます増えるものと見込まれます。
◆日台姉妹交流(本会調べ)についてはこちらをご参照ください
松本城と野だて堪能 台湾・高雄市の訪問団を迎える
【中日新聞:2016年4月3日】
台湾・高雄市の訪問団28人が2日、交流都市関係にある松本市を訪れた。
両市は昨年7月、「健康、福祉、教育分野の交流に関する覚書」を締結。これまでに、両市の中学生がメールを使って交流をしたり、市の職員が高雄市を訪れて健康福祉政策に関する意見交換をするなどしてきた。
この日は、松本城本丸庭園で歓迎の茶席が催され、陳菊(ちんきく)・高雄市長や菅谷昭・松本市長ら関係者約40人が出席した。
菅谷市長は「締結から1年が経過しない中で、多岐にわたる交流が進んでいることをうれしく思う」とあいさつ。陳市長は「高雄市では高齢化が進んでいる。介護、健康分野で参考にさせてもらいたい」などと話した。
出席者は、松本城を眺めながら野だてを堪能し、交流を深めた。
高雄市の訪問団は行政や医療関係者らで構成。3月31日に来県し、1日は県庁に阿部守一知事を表敬訪問した。3日に諏訪地方の「御柱祭」を視察し、5日に帰国する。