2012年、第2回国家文化資産保存賞終身成就賞授賞式での宋文薰院士(右)

日本政府は4月29日、平成28年春の叙勲受章者名簿を発表した。ただ、残念なことに29日の新聞紙面には台湾出身の方のお名前はなかった。

ここ数年、特に東日本大震災翌年の平成24年春以降、毎年春秋2回の叙勲では複数の台湾の方が受賞されていることを考えると残念でならない。

ところが、5月10日に日本政府が公益財団法人交流協会のHPなどを通じて発表したところによると、実はもともと台湾からは宋文薰・中央研究院院士が叙勲されることが決まっていたものの、まさに発表日前日に急逝され、名簿から削除されたのだという。そのため、結果的には台湾からの受章者がいなくなってしまったという状況のようだ。

そこで改めて内閣府賞勲局より、死亡叙勲のかたちで受章が発表された。受章された宋文薰院士の功績に敬意を表す意味で、下記に宋氏の経歴をご紹介しつつ、ご冥福をお祈り申し上げたい。

なお、これまでの台湾の叙勲者一覧(本会まとめ)はこちらからご覧いただきたい。

宋文薰(そう・ぶんくん)
1924年(大正13年)、日本時代の新竹州竹東郡生まれ。考古学者、中央研究院院士、台湾大学人類学系名誉教授。

1943年(昭和18年)、明治大学予科入学。1945年(昭和20年)、台湾に戻り台湾大学歴史学系を卒業。恩師は台湾考古学の父とも呼ばれた国分直一だった。

台湾大学人類学系で教鞭をとるかたわら、台湾最古の旧石器文化である長濱文化や卑南の住居遺跡などを発見した。さらに、台湾における考古学教育、遺跡の保存方法に関する研究を進め、1994年には台湾大学人類学系名誉教授に就任。

その後も中央研究院で研究を続け、2012年には、考古学研究や遺跡保存など長年の考古学界への貢献が認められ、第2回国家文化資産保存賞終身成就賞が贈られている。

2016年4月28日逝去。奇しくも、翌日が春の叙勲発表の日だった。

ここに改めてご冥福をお祈りするとともに、交流協会台北事務所HPに掲載された死亡叙勲についての発表を下記にご紹介したい。


平成28年外国人叙勲については、台湾より、宋文薫氏(台湾大学名誉教授)の旭日中綬章受章が決定していましたが、同氏は、4月29日の発令直前に急逝されました。

このたび、宋文薫氏に対し、死亡叙勲が決定いたしましたのでご報告いたします。

勲  章    旭日中綬章
氏  名    宋 文薫(ソウ・ブンクン)
主要経歴  台湾大学名誉教授
        中央研究院院士
        台湾大学 人類学科教授
功労概要 日本と台湾の考古学分野における学術交流に寄与。
宋文薫氏は、考古学研究において数々の発見をし優れた業績を残すとともに、同分野における日台の学術交流に尽力。日本統治時代の考古学研究を継承・発展させ、今日の台湾考古学の発展に多大な貢献をした。

交流協会といたしましても、生前の宋文薫氏のご功績に心より敬意と感謝を表し、同氏のご冥福をお祈り申し上げます。